表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/639

第15章  酔っ払い(5)

 まずは彩乃に入ってもらった。次が僕の番。途中で水足して、交代して彩乃が薪をくべる。


 お風呂って、外に焚口があるわけ。そこで薪をくべて、竹筒で空気を送って、火の勢いを見ながらお湯の温度を調整する。


「お兄ちゃん、どう?」


「熱い…」


「え~」


 彩乃って肺活量もあるからさ、火が強くなるんだよ。熱いのなんのって。


「そんなに一生懸命、吹き込まなくていいから」


「面白いんだもん」


「僕を釜茹でにしないでください」


 そういうと、彩乃がきゃっきゃっと笑う。


 もう~。子供なんだから。


 僕が頭を洗っている最中に、総司が来た。


「彩乃さん、何やってるんです?」


 どうやら彩乃を探していたらしい。


「お風呂焚きです。お兄ちゃんが入ってるの」


 僕が風呂から顔を出すと、総司が呆れたように僕を見る。


「昼間からお風呂ですか?」


「夜はお客さんが入るから。総司も入れば? 気持ちいいよ」


「え? いや…私は…」


「入ったほうがいいかなって…。綺麗になりますよ?」


 彩乃がそう言ったとたんに、総司の顔に朱が走る。


「入ります」


 あ、気にしたな。うん。まあ、いいことだよ。清潔にするのは。


「ついでにいいもの、貸してあげるから」


 と僕は言って総司を手招きした。


 ぐるりと総司が外を回って(焚き口は外にあるからね)、風呂まで来る間に、僕は頭を流して、もう一回風呂につかる。


 ああ。いい気分。


 がらりと引き戸が開いて、総司が顔を出した。


「脱いでくれば? 僕、もう出るから」


 そういうと、頷いてから首を引っ込めて、ごそごそと音がする。


 その隙に僕は五右衛門風呂から上がると、身体を手ぬぐいで拭いた。入れ違いに入ってきた総司に石鹸の欠片を渡す。本日の分の残りだ。


「これ、濡れた手ぬぐいにこすりつけてから、身体をこすってごらんよ。垢が良く落ちるから。ついでにそれで髪も洗うといいよ」


 洗った後は、これをお湯に入れてから頭を流して…と、僕が途中まで絞った柑子の実も渡す。庭で僕と彩乃の部分、二個ほど失敬した奴だ。


「なんですか? これ」


 総司が手渡した石鹸の欠片を見る。


「うーん。秘伝の薬?」


「なんで疑問形なんです」


 疑わしそうな総司に僕は微笑んでから、耳元に口を寄せる。


「それ、彩乃の使い残し」


 その瞬間に、ボンっと総司の顔が赤くなる。


「使ってもへんなことにはならないから、大丈夫」


 あ、もう僕の声は届いてないな。


「じゃ、ごゆっくり~。あ、良く流すのを忘れずにね」


 そう言って僕は彩乃と風呂焚きを交代するべく、外へ出た。


 うう。折角暖まったのに、寒い~って、彩乃に悪いことしたなぁ。


「ごめん。彩乃、交代するよ」


 そういって焚口にいくと、逆にここは温かい。火の傍だからだな。


「わたし、やるからいいよ?」


「え? 総司がかわいそうじゃない?」


「なんで?」


「彩乃の火って強いもん」


「大丈夫だよ。ちゃんと総司さんに合わせるから」


「僕のときは合わせてくれなかったくせに」


「そんなことないもん」


 彩乃がうっすらと赤くなりながら否定する。


 いや、絶対、僕のときは面白がって焚いてた。ま、いっか。


「じゃあ、任せるね」


「はーい」


 彩乃は、にこにこしながら竹筒を手に取った。うーん。若干不安だけど、まあ、任せるか。


 夕食直前になって彩乃は戻ってきた。聞けば、結構長く総司は入っていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ