第15章 酔っ払い(4)
宿について、平隊士は大部屋に数人ずつ分けられて押し込められた。僕たちも一緒に押し込められるかと思ったら、蒲団部屋に入れられた。
床が板だよ。うーん。
まあ、個室は確保できたし、蒲団もあるし。火鉢は持ってきてくれて温かいので、良しとしよう。
「埃っぽいね」
彩乃が顔をしかめる。
「まあ、蒲団部屋だしね」
お客に蒲団を全部出したので、空になったところに僕らがいる形だ。
「数日いるみたいだし、拭き掃除でもする?」
「うん。そうしたい。この床はちょっと…」
「だよね~」
僕らは掃除をするべく、宿の台所を探してウロウロした。
「お兄ちゃん!」
彩乃が呼ぶほうへ行くってみると、
「お風呂だよ!」
彩乃が指差したのは、五右衛門風呂だった。一人が入れるぐらいの木桶の丸いお風呂。蓋の部分がぷかぷか浮いていて、それを踏みつけて入る。
お風呂あるんだ。この宿。
「凄いね! 入れるかな」
嬉しそうに言う。うん。僕も入れたら嬉しい。
冬はさすがに天然のシャワーは辛くて、頭を洗いに行くことができず、お湯を貰ってきては頭を拭うということしかできなかったからね。
「石鹸、持ってくれば良かったな~」
と僕が呟けば、
「持ってきたよ!」
と彩乃が得意そうに言う。
「だって、旅行のときの基本でしょ?」
あ、確かに彩乃の髪は長いから気を使っていて、いつも旅行に行くときはシャンプーとリンスを持参だったっけ。
「じゃあ、後で聞いてみようか?」
「うん!」
そう話をして、僕たちは宿の人を探した。
とりあえず雑巾と桶を借りて蒲団部屋を掃除する。貸してって言ったら怪訝な顔をされた。あんまりみんなは気にしないのかな。
そしてお風呂を使用させてもらう約束もしてきた。自分で水を入れるっていうことと、薪の代金を払うことが前提だけど。まあ、それもOKだ。僕たちだったら、水汲みもそんなに苦じゃないしね。
みんなが旅の疲れを癒して、部屋でゴロゴロしていうちにせっせと水くみをしてお風呂に入る。
彩乃が拭き掃除をしているうちに、僕がお風呂を焚いていたんだけど、正解。結構時間がかかるんだよね。風呂焚き。現代だったら、ボタン一つなのに。水汲んで、薪くべて。水からお湯にするのが大変。




