第2章 成り行き任せのその日暮らし(1)
新撰組…もとい壬生浪士組の朝は早い。翌日は、朝日が出る前に叩き起こされて、朝稽古。
明かりが貴重品だから、基本的に太陽とともに活動するんだよね。
着替えなんか持ってないから、相変わらずの服装のままで動こうと思ったら、僕たちの前に沖田が着物を抱えて立っていた。
「これ、どうぞ」
見ると二着の着物と袴。
「こっちが俊…さんの分で、こっちが彩乃さんの分です」
なんで僕の名前の前で止まるんだか。
「あ~。俊でいいよ?」
と言った瞬間に、沖田がへにゃりと笑った。照れくさそうに、かがんだので、背中が丸くなる。
「では、私も総司で」
人懐っこい性格なんだな。昨日の刀を手にしていたときの凄みはどこにもない。
「大体、同じぐらいの年ですよね」
総司…ぷ(笑)
僕と同じ年だったら、かなり君おじいさんだよ?
でも僕は軽く微笑んで、そうだね。と答えておいた。
「俊のは、私ので、彩乃さんのは平助のを借りてます」
「サンキュ」
「はい?」
あ、しまった。あれは日本語じゃなかった。
「いや、ありがとう」
「どういたしまして」
総司を廊下に追い出すと、彩乃と二人で着替えをする。一応、洗ってるものだったので、ほっとする。うーん。下着も替えたいけど、とりあえずは仕方ない。
シャツとジーンズは後で洗濯するかな。
「着替え終わったよ」
彩乃の声がして振り返ると、髪を一つに結った彩乃がいた。
「あれ? 髪?」
「ゴムを手に巻いてたから。ラッキー」
そう言って、軽やかに笑う。ああ、可愛い~。思わず彩乃の頭をなでたら、「やめてよ」って怒られた。がっくり。
廊下に総司はいなくて、昨日行った道場に行ってみると、昨日見た顔が「エイっ!」
「きぇ~っ!」と声を上げながら稽古していた。
防具をつけて竹刀で打ち合っているのもいるのもいれば、木刀で打ち合っているのもいる。
えらい熱気だ。
「きたな」
土方…まあ、ずっと呼び捨てだと悪いか。土方さんの言葉に、皆の動きが止まって、こちらに視線が集まる。その瞬間に僕は思い出した。
そういや昨日、試してくれとか言ったんだっけ。あはは。
自慢じゃないが、僕は剣はダメだ。日本刀は使ったことがない。一応、合気道でも剣術はやるんだけどね~。でもその程度。彩乃とやってたときも遊んでいた感じだから、実践ではどうかな。




