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第11章  冬といえば(11)

 翌朝、総司を蒲団から追い出して、三人分の蒲団を縁側に並べる。七輪にあたりながら、首を伸ばして総司が覗き込んできた。


 余談だけど本来は暖を取るものは火鉢、料理に使うものは七輪と呼んでいるらしい。僕たちは部屋でお茶が飲めるといいねっていう理由で七輪を手に入れたんだけど、普通は火鉢を置くらしいよ。火鉢は温かいけど、大きいから場所とるんだよね~。


さて、総司がのんきな声で言ってきた。


「こうやって毎日干してるから、温かいんですね~」


 僕はせめてもの抵抗で、ため息をついてみせてから、振り返る。


「蒲団はあげるから、自分の部屋に帰ろうよ」


「いや、まだなんか熱っぽいんですよ」


 味を占めたってやつだな。彩乃が総司のことを構うのが嬉しいらしい。


「もう大丈夫だから。絶対に大丈夫だから」


「まだ咳が出ますしね」


 こんこん、と咳をしてみせる。まあ、咳が残っているのは本当なんだけどね。


 でもそろそろお引取り頂かないと、夜中の散歩ができなくて辛い。仕方ない。最後の手だ。


「あまりに風邪が残っているようだったら、これが効くってもらった薬があるんだけど」


 総司の顔が引きつる。


「とーっても苦いらしいから、出さなかったけど、まだ風邪が残ってるなら、飲んだほうがいいよね」


 そういって、僕は懐から紙袋を取り出した。


「え、いや、そんなに苦いんですか?」


「うん。かなり苦いみたい」


 僕は七輪の上においてあった土瓶を持ち上げると、薬を入れる振りをした。


 そのとたんに、すくっと総司が立ち上がる。


「あ、なんか身体が軽いみたいです」


 そしてそのまま歩き出そうとした。


「ありがとうございました。治りました」


 見え透いた嘘に笑っちゃいそうになる。


「あ、総司」


 歩き始めた総司を僕は呼び止めた。


「なんです?」


「僕も一緒でよければ、たまに泊まりにおいでよ。七日に一回ぐらいなら許すから」


 総司の顔が耳まで赤くなる。


「いやいや。そういうわけにはいかないです」


「じゃあ、蒲団、どうする? 持って帰る?」


 総司はしばらく考えている。結構葛藤しているようだ。


「えっと、とりあえず頂くのは悪いので、そのままで」


 僕は思わず吹き出した。


「うん。じゃあ、総司の分として取っておくから。だからたまには泊まりにおいで」


「はい」


 総司は困ったような顔をして、へにゃりと笑った。  


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