第11章 冬といえば(8)
翌朝。目を開けたら、隣に寝ている総司が目を見開いて僕を見ていた。
あれ? なんで総司?
背中でもそもそと動く彩乃の気配。
「俊?」
「はい?」
「なんで彩乃さんと一緒に寝てるんです?」
「え?」
ツッコミどころはそこ?
「総司が僕の蒲団に寝てるから」
そう言うと総司が二三度目を瞬いた。慌てて上半身を起こすと、周りを見回す。
「ここは?」
「僕たちの部屋」
そういうと、起き上がった総司を、寝たまま後ろから引っ張って蒲団に寝かせる。
無理やり倒したので、ラリアートをかけたみたいになって、総司が『ぐぇ』っと変な声を出した。
「お兄ちゃん?」
彩乃が僕の背中にすがり付いてくる。
「ああ、いいから寝てなさい」
「ん…」
彩乃がもう一度寝入った。本当に彩乃はよく寝ると思うよ。僕らの種族にしては珍しい。
「で、最初の質問なんですけど…」
まだ言うか。総司。
「君は熱を出して壬生寺で倒れたの。それでここへ運んだ。僕は一晩、徹夜しようと思ったんだけど、彩乃が一緒に寝ようっていったの」
僕は多少投げやりな気持ちになって、そういうと、総司が目を見開く。
「そういう関係だったんですか」
「なんでそうなるの」
「だってそうでしょう」
「いいから、聞きなさい」
興奮しかけた総司の頭を小突く。うーん。まだ総司の額は熱いな。
「彩乃と僕の両親は、彩乃が赤ん坊のころに亡くなった。それから僕が育てたんだよ。彩乃は。だから娘みたいなもんなの。それこそお風呂入れたり、おしめを替えたりするのだってやったんだからね」
「えっ!」
「わかったら、邪推しない」
実際、僕と彩乃の年齢差は200歳以上ある。人間だったら娘どころか孫? いや、ひ孫? まあいいけど。
「苦労したんですね」
総司の興奮は治まったようだ。
「俊もまだ小さかったでしょ? 彩乃さんが赤ん坊のころだったら」
あ~。うーん。そうか。人間だったらそうなるか。
「まあ、そうだ…ね」
僕は天井を見ながら答えた。人間だったらいくつぐらいだ?
えっと彩乃が十八だから、僕が二十五だとしたら、八歳? それで育てるとか無いな。えっと、三十ぐらいで十三。まあ、そのぐらいだったらありか。
でも総司はそれから先は何も聞いてこなかった。




