表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/639

第9章  新撰組(8)

 僕らの前に荒木田さんと越後さん。後ろに御倉さんと松井さん。なんか護送されてる感じ?


 僕は正直迷っていた。がむ新くんこと、永倉新八といえば、こんなところで命を落とす人じゃないはずで。でもここで助けちゃっていいのかなぁとか。でも見殺しにするのも怪我させるのも嫌だよねぇとか。

 

 ふっと荒木田さんの殺気が膨れ上がるのを感じる。先を見ると、木や塀の陰に人の気配を感じた。しかも殺気を伴っている。


「あ! がむ新くん。今日はこっちの道にしようよ!」


 僕は明るく、がむ新くんに言った。


「ああ?」


 がむ新くんが怪訝な顔をするのを放って、僕は荒木田さんに話しかけた。


「荒木田さん、たしか今日は荒木田さんにとって、こっちの方向って鬼門ですよ。昨日、八卦で占ったら、そう出てたんです」


 荒木田さんが怪訝な顔をする。


「ちょっと僕、陰陽道もかじるんで。実は毎朝、自分と周りの人の分は占ってから来るんです」


 いや、完全な嘘なんだけど、僕は懐に入れた紙をひらひらと見せた。


 実はこれ、彩乃用の問題集を考えていた奴。途中だったのを懐に入れていただけだけど、筆記体で書いてあるから、なんか呪術ちっくでしょ?


 荒木田さんがぎょっとする。


「こっちに方変え(かたがえ)しましょう」


 そう言って、僕は荒木田さんの腕をとると道を一本変えた。京の街は碁盤の目だから、多少遠回りになってもいくらでも道はある。


 こっちが道を変えたせいで、向こうは慌てたらしい。ざっと音がして先回りしようと走る音がする。まあ人間の耳には聞こえないかもね。彩乃ほどじゃないけど、僕も人間よりは耳がいいから聞こえるわけだ。


 次の角でも待ち伏せている感じ。向こうはイライラしているようで、気配を感じるのが楽だ。しかもラッキーなことに向こうが風上。汗のにおいが漂ってくる。


「あ、こっちもまずいですよ。ここは御倉さんが病にかかる道です」


 次は御倉さんがぎょっとする。


 日本人って占いとか、好きだよね~。大体、陰陽五行の考え方をベースにして風水とかあるし。現代社会まで生きている習慣だからね。トイレはどっちの方角がいいとか、玄関はどっちの方角がいいとか。金色を置いておくとお金が溜まるとか。まあ、いいけど。


 次は御倉さんの腕をとって迂回する。今度は待ち伏せのかなり手前で曲がったために、相手には気づかれなかったみたいだ。


 よし。


 僕は懐に紙を出して、ときどき確認しているようなふりをしながら、屯所に近づいていった。


「君が持っているそれ、それに書いてあるのか?」


 松井さんが聞いてくる。


 僕は紙をちらりと見せた。


「秘伝の方法なんです。占った結果を特殊な文字で記してあるんです」


 大嘘。

 実は横に書いてある筆記体を縦にして見せてるだけ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ