第9章 新撰組(4)
島原に行く道すがら…なんだよね? うーん。今日のメンバーはあまり僕が知らない人たちだった。
厳密に言えば、顔だけ知ってる人ばかり。隊士は八十人だっけ? 結構多くなったんだよね。その分、知らない人も増えたわけだ。
中村さん。がむ新くんのところの隊の人だった気がする。あとは、御倉さん、荒木田さん、越後さん、松井さん。最近入った人たちだけど、顔だけ知ってて、名前はさっき自己紹介されて知った。なんだか変なメンバーだ。
っていうか、これ、本当に島原行き?
「がむ新くん?」
小声でがむ新くんに呼びかければ、小声で「今日は島原じゃねぇんだよ」と返ってきた。
ええ?
先を歩く荒木田くんたちとちょこっと離れて、がむ新くんがこそこそと話をする。
「今日はあいつらが、大原三位殿のお屋敷に行くっていうからよ、何しに行くのかついてきたのよ」
いやいや。それって、なんで僕が巻き込まれてるの?
そうこうしているうちに、ナントカ殿の屋敷ではなくて、なぜか池亀という料亭に入ってしまった。
うーん。そして、一休みしようと酒を頼み始める。
まいったなぁ。僕、どうしたらいいんだよ。
「あ~、がむ新くん、僕、帰ってもいい?」
「ダメ」
おい。おい。
そうこうしているうちに、厠と言って、荒木田くんが席をたち。遅いですねぇと言って、松井さんが席を立ち。私も探してきますと越後さんが席を立ち。さらに、どうしたのかなと御倉さんが席を立った。
いやいや。怪しいでしょっ! その動き。
僕は思わず脱力しそうになって、がむ新くんを見た。
「あ~、本気で帰っていい?」
「ダメ」
「なんでよ」
訳知り顔で、中村さんがずいっと僕らの間に入ってくる。
「あの者たちは先日、長州を脱藩したと言って、入隊してきた人たちなんですよ」
「はい?」
長州藩の脱藩者を受け入れたの? 思わず僕は目を丸くした。
がむ新くんが、がりがりと頭をかく。
「近藤さんが受け入れるっていうからさぁ。でも、あいつらのことなんて信じられっかよ。で、俺が見張り役ってぇわけよ」
ああ、なるほど。
「で、なんで僕が巻き添えなの?」
「総司が連れてけって」
「えっ?」
「一緒に行くのに、幹部だと目立つだろうが。だから平隊士で腕が立つ奴ってぇんで、こいつをつれてきたんだよ」
ども、と中村さんが挨拶する。
「で、もう一人ぐらいって言ってたら、総司がてめぇを推薦したの」
またか。
「俺だって、総司の推薦だけだったら、てめぇを選らばねぇよ」
僕は思わず、がくっと肩を落としてみせた。
いや、そんなホントのこと言わなくても。
「でもよぉ、斉藤までてめぇを押すし、近藤さんも賛成したからよ。土方さんは苦虫を噛みつぶしたような顔してたけどな」
斉藤は、最近、一緒に稽古してるし。一応、僕も鞘を削らずに刀を抜けるようになったしね。ちょっとは認めてくれたのかな。
しかし、よく近藤さんがOKだしたなぁ。
「まぁ、俺もアレだ。てめぇが、そこそこ使えるなら、いい隠れ蓑になるしな」
「どういうこと?」
「てめぇの朝稽古の様子を思い出してみやがれ」
あ…。あれか…。やられまくりだからなぁ。
「あはは」
むなしく笑う。




