第9章 新撰組(1)
数日して、隊士が大広間に集められた。
近藤さんがにこにこしながら、みんなを見回していて、そしていつもは仏頂面の土方さんも心なしか表情が明るい。
「あ~。ごほん」
近藤さんが咳払いをして、皆を見回した
「我々は先日の御所の警備が評価され、新しい名前を拝命した」
ばっと山南さんが手に持っていた紙を広げる。
『新撰組』
おお。達筆な文字だ。
この先、近藤さんの長い話が始まるんだけど、まあ要約しちゃえば「これからもがんばれ」と。そんな感じ。
八月十八日の政変において、僕たちが活躍し(まあ、突っ立てただけだけど)、それに対して評価され、隊名をもらった上に、今までの活躍もあって切り捨て御免の許可まで出たとのこと。そしてさらに平隊士ですら十両の給金が出る。
大体僕らがよく持ち歩くお金に文っていう丸い穴が開いたやつと、一朱銀っていうのと、一分銀っていうの長方形のがある。一朱銀は、一分銀よりも軽いんだけど、形が一緒だから間違えやすいのが厄介だ。
四朱で一分。四分で一両だ。一両って言ったら小判だよ。
ちなみに文っていうのは、文銭と呼ばれる小銭。厄介なのは、これと一朱銀、正確に言うと一両の間は相場によって変わる。これがよく分からない。
感覚的には一朱銀で300文から700文か。そのぐらいかなぁ。なんでこんなに差があるんだって言われると、相場によって日々変わってしまうのと、両替するときに手数料を取られるんだよね。だからなおさら良く分からないんだけど。
しかもこのところ、乱高下が激しい。文銭の鋳造の問題とか、朱銀の質の問題とか。色々あるらしいけど、さっぱり分かりません。
まあ両替は善右衛門さんのところでやってもらってるから、あまり変なことはないと思うんだけど…。なので、なんとなく言い値で両替したり、適当におまけしてもらったりしてる(笑)
外で食事しようと思ったら、店によるけど素うどん一杯が十五文~二十文ぐらいかな。銭湯が僕らのよく行くところは十文。大抵の生活は、文銭で済んでしまう。
勘定方と呼ばれる人が、順番に隊士を呼んで小判を渡していく。いやいや。凄い光景だね。
名前を確認されて、渡されて。銀行振り込みなんてないからね。現金をそのまま手渡しだ。
おお。『黄金色の菓子でございます』…が、目の前にあるよ! 十枚も。『そちも悪よのぉ』とか言ってみたいが、ネタが分かる人がいない。さびしい。まあ、仕方ない。
僕は叩いてぶつけてみた。こんこんって音がするよ。って思ってたら、周りもみんなやっていた。あはは。
政変のときには留守番だったけど、給金なんで彩乃も小判を貰って帰ってきた。




