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7節 報告と執刀と説明

また少し第三視点に上がったり降りてきたりします。

「アクセル大佐 宇宙(そら) 只今戻りました」それは今までには無い腹に力の入った軍人の声だった。


「入れ」

端末からだけでは無く扉の中から唸り声が上がり扉が開く。


宇宙(そら)は右手の拳を胸に当て敬礼する。

「アクセル大佐。 宇宙(そら) ただいま帰還いたしました」


机をはさみ、壮年の筋肉質の男性が椅子に腰掛けている。机の端には"艦長テディー・アクセルソン”とホログラムで名札が浮いている。艦長は数々の修羅場をくぐった戦士のような面持ちで、本人から見て左目を中心に手のひら大に頭部が抉れ、代わりに左目の合った部分には機械が埋め込まれている。男性と言ったが、体毛や毛髪は一切なく肌は靭やかな鱗で覆われている。先ほどホログラムに写ったコモド・ドラゴン似の男性である。


部屋は艦長室というからにある程度広い。しかし、軍艦と言うよりは商用艦のような作りで、商談が出来そうなソファーや事務棚が目を引く。艦長の趣味なのだろうか西洋の騎馬の置物や双剣や刀・銃など宇宙船とは似つかわしくない古風な武器が飾られている。


宇宙(そら) お前がやらかしたことの重篤性はわかっているな?

 もはや俺が出張って、どうこう出来るレベルの話ではない。」


艦長は重々しく語りだすが、それを直ぐに宇宙(そら)がかぶせる。

「大佐 私の処分は覚悟しております。

 それより、現在IFD被験体を保護しています」


「早急に……」

言い終わるの前に艦長が更にかぶせるように唸る

「そんな事だと思ったよ

 ラウラにオペの準備をさせている

 終わったら直ぐに戻ってこい」

頭を掻きながら悩む艦長を後に宇宙(そら)は足早に艦長室をでた。


足早に艦長室から出てきた宇宙(そら)(りょう)に軽く視線を投げて脚を進めるどうやら付いて来いってことらしい。そして歩きながら要件だけをサラっと伝える

「電脳をハックさせてもらうだけだから」

「大丈夫!痛くははないから」


僕は”痛くない”という言葉を信じた。変に暴れてもどうにもならないと言う、半ば諦めの念で従う事を決めた。少し歩いたあと薬品臭い部屋に入った。


その部屋はコンピュータのような物が壁添に設置され、中央に物々しいベッドが置いてある。部屋の中には宇宙(そら)に似た風貌の人が白衣を着てモニターに向かて座っている。しかし宇宙(そら)とは違い線が細く胸部に膨らみがある。猫+人の女性なのだろうと思った。


白衣の女性にベットに横になるように促されそのまま従う。頭の方には何かよくわからない機械が置いてある。

挿絵(By みてみん)

僕は横になり天井を見つめる。左側の椅子に座る音が聞こえる。

宇宙(そら)、艦長から聞いているわ

 また厄介なの連れてきたのね~」


「ラウラ!

 ”また”って何さ~

 ウチは反省はしているが、後悔はしていないよ!」右側の椅子に座る宇宙(そら)がどこかで聞いたこと有るセリフと共にキーボードを慌ただしく叩く。白衣の女性はラウラというのかな?


刹那、僕の意識は闇に落ちた。


「睡眠状態に移行」

「バイタル安定……問題無し」

「ナノマシン注入開始」

「ニューロチップBMI(ブレインマシンインターフェース)生体接続端子に割り込み完了」

「回線データー全て宇宙(そら)に回すわ」

白衣の女性ラウラは手際よくマシンを操作する。

「生体との直接接続は無くなったから自由に弄っていいよ」


「よいしょウチの番か~」

宇宙(そら)は端末を叩く

「デコイ脳に接続するよ」

「ラウラ!(りょう)の脳波モック頂戴」

「はいはい……もう送ってあるわ」

ラウラと宇宙(そら)は合うんの息で作業を進める。


「高圧パルス行くよ ラウラ」

宇宙(そら)大丈夫だわ 生体側への漏れは規定値以下」

ラウラの言葉を確認するとマシンの操作を続ける


「よし! リブート来た。ブートプロセスにコードインタセプタセットと……」

「ウチの特製 OSぶっ込むぞ」


暫くの沈黙が流れラウラがちょっと疲れた様に口を開く


「私の生体力場と一致したわ

 ひとまずジェルブレイク成功ね」


「一応身体データースキャンするわ」

テキパキ作業をこなすラウラに宇宙(そら)が割り込む

「ラウラゴメン あとお願い!

大佐からサッサと戻って来いって言われてるからチョット言ってくるね」

そう言い残すと宇宙(そら)は直ぐに、部屋を出て行った。


「抑制物質基準値以下 今日覚醒したのかな?SMC(セルフメンテナンスカプセル)はまだ大丈夫……」「覚醒プロセス移行」キーボードを叩きラウラは席を立つ。


(りょう)の瞳に光が刺す。

「眩し……」僕は目が覚めたのか……

「気分はどう?ペンライトの光りを見て」ラウラはペンライトを上下左右に動かす。

そして僕はそれを目で追う。


寝てたという割にはあっという間に目が覚めた。部屋に宇宙(そら)の姿は無く左側に座っている白衣の女性だけが居た。ベットの縁に腰を掛け彼女の方を向く。

「紹介が遅れたわね

 私は脳神経外科医のラウラ・クラウン」

「ラウラでいいわ……ココでは船医をやってるわ、よろしくね」

ラウラの簡単な紹介をしてくれた。彼女は宇宙(そら)みたいに忙しく切羽詰まった感じでは無く話を聞いても良いというオーラが漂ってる。


「ところで……

 宇宙(そら)はどこ?どんな状況なんですか?」

僕はちょっと申し訳無さそうにたずねて見る。


宇宙(そら)は大佐に呼ばれて行ったから、今頃コッテリと絞られているわ」

視線を少し反らしラウラは続けた

「亮くんはどこまで宇宙(そら)から聞いているの?

IFD(インフェルニティードライバー)のことについては聞いた?

私達と生きてきた次元が違うから宇宙(そら)の時も苦労したわ」

ラウラは僕のことを心配してくれている。そして、それと同時に宇宙(そら)が説明責任を果たしたのかも心配しているようだった。


僕は起きたことを聞いたことをそのまま話す。

「講義中に居眠りして、目覚めたら焼け野原にいて……」

宇宙(そら)が"地球が30億念前に……"なんたらと言っていた」

「それ以外僕は何も知らない。何が何だか分からない。悪い夢なら良いんだけど……」

半ば頼りなく思ってる事を吐き出した。何か縋れるものが欲しかった。


「亮くんはいきなり

 異世界に放り出されたも同然で正気を保つのに精一杯だったんだね」

そんな亮に対してラウラは宇宙(そら)みたいにまくし立てることは無く、

優しく声を掛けた。医療関係者独特の若干他人ごとみたいな慰めを含みつつ。


「ちょっとまっててIFDの資料を探すわ」と呟きながら端末に向かいキーを叩く

そうするとラウラの手元にホログラムの資料が現れた。


「IFDと言うことは亮くんも宇宙(そら)と同じく超古代地球を生きてきたのね」

「信じられないとは思うけど、もう地球は太陽の終焉と共に終わりを迎えたわ」

「亮くんは30億年の時間旅行をしたような者なのよ」


時間旅行と言う言葉に反応する。ココは遠い未来。宇宙船も電脳も有る。平成の世の常識では考えられないぐらい科学は進歩している事を肌で感じた。SFで有ることは何でもありそうに思えるぐらいに。僕は安直にタイムマシンが有ると思った。

「時間旅行と言うことは帰る事も出来るんですよね?」


ラウラは"その問を予想していた"のか、それとも"そう云う解釈も出来る"のかと言うような含みを持って少し黙った後に続けた。


「言い方が悪かったわ」

「過去への完全な時間旅行なんて存在しないし、出来たとしても家族に合うこともできないわ」「君たちIFDは"虚空の揺り籠"という教育装置で偽物の"地球"を生きてきたんだ」


家族に会えない。ましてや家族や友達の存在もそもそも"嘘"と宣言されたような言い方だった。今まで信じていた物全てが"嘘"と言われても実感を感じられない。


反応に困る僕を横目にラウラは説明を続ける

「亮くん 両親は居ない。

亮くんも宇宙(そら)も合成されたDNAマップから生まれたんだ」

「ムンディ軍が超古代人の能力者を殺戮兵器として蘇らすために……」


とんでもない壮大な話が出てきて唖然としていると、部屋のドアがプシャーという油圧音と共に開いて犬っぽいひ弱な男が現れた。

「間違いました~」彼はそう行って直ぐに出て行った。


「またお前たちか!噂ばっかり嗅ぎまわってないで、とっとと持ち場にも戻ったら?

 大佐に垂れ込むわよ!」とラウラが一喝すると彼とはすっ込みガタイの良いクマのような男がチラっと見えドアが閉まり始めた。クマのような男はガッカリしたように「なんだ~男か~期待して損した」とボヤくのが聞こえドアがしまった。


なんかトンデモな話を聞かされて現実感がなくなってた僕は、彼らのくだらない詮索で一気に現実に引き戻された。視線がドアに釘付けになる。僕や宇宙(そら)やラウラだけじゃなくて、いろんな人がこの船に乗って生活している。その生活感を感じて異世界に来てしまった事を思い知らされる。


唖然としている僕にラウラは優しく声を掛ける。

「ゴメンね亮くん

 話の腰を折っちゃって……

 彼等(ヤツラ)は何時も噂ばっかり嗅ぎまわって……男子が聞いて呆れるわ」

「そろそろ、大佐に説教(物理)でもしてもらわないとね」

さっきまで優しそうな先生だったラウラとは別の表情を見た。

複雑な心境でドアを見つめていた僕に向かって、ラウラは仕切りなおした。

「えーっとどこまで話したかしら?」

「世界情勢の話はまだだったね」

ラウラはホログラム端末を何度かタップして図を表示した。


「聖国ムンディは、現在の政権(王)になってから急に植民星圏の拡大を初めた」

「銀河団の隅にある私達の母星ラティアも彼等の植民地になったわ」


簡略化した天球儀を指しながらラウラが説明をしてくれた。ムンディー星系の近くを取り巻くように表示された旧王政時代のエリアが説明とともに画面全体を覆う様に広がり、新政権と表示された。広がったエリアが画面の隅に表示されたラティアを飲み込んだ。


ホログラムを見ている僕を横目にラウラは更に続ける……

「植民星になってからニューロチップの取得制限が掛ったり医師としてもつらい状況になったわ」

ひと通り話し終えたラウラは黙り込んだ。僕に考え飲み込む時間をくれたのだろう。

僕は今まで聞いた話を整理する。理解をしようと考えこむ。


つまり僕はムンディと言う独裁政権の元で兵器として生まれて、侵略に抵抗する組織に保護されているということ。何となく状況が見えた気がした。

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