やり返す
初作品です★
意外な結末は無く、淡々としていますが、よかったら読んでやって下さい(´∀`)
…今のところ、食に困った事は無いし、まあ、私はそれなりに幸せに暮らしているのだと思う。
でも、その幸せも永くは続かないことを私は知っている。
近いうちに、私はきっと殺されるであろう。
私には前世の記憶がある。
前世、私は"人間"という動物であった。
私はメスの方で、それはそれは勝ち気な性格であったような気がする。
やられたら、私はいつもその倍にしてやり返していた。
一回ぶたれたら二回ぶち返した。
一個取られたら二個取り返した。
だからあの時も、私はやり返したのだ。
一匹殺られたから二匹殺り返した。
八月下旬。
私は友人と地元のお祭りに行き、金魚すくいをした。
私は一匹、友人は二匹の金魚をすくうことができた。
私のすくった金魚は黒くて大きめだった。
一方、友人の金魚は二匹とも赤くて小さめだった。
私と友人は、三匹の金魚を共に育てることにした。
先生から許可をもらい、学校の理科室で。
朝と昼と放課後に、二人で餌をやりに行く。
その時、友人はよくこう言った。
「黒い金魚って不気味だよね。やっぱり金魚は赤い方が可愛いなぁ。」と。
それは、ある日の放課後に起こった。
その日の放課後、いつものように二人で餌をやりに理科室へ行くはずだった。
でも、私は掃除当番だったので後から理科室に行くことになった。
掃除が終わり、理科室へ向かう。
ドアを開けると、そこには泣きじゃくった友人の姿があった。
そして「クロが死んでるの」と言った。
クロとは黒い金魚のことで、私がすくった金魚の方だ。
水槽に近付いてみると、クロがぷかぷかと浮いていた。
餌を散らしてみても口を動かさない。
クロが食べないまま下に落ちて行く餌は、赤い金魚二匹がぱくぱくと食べていく。
その日、二人で学校の校庭の隅にある桜の木の下にクロを埋めた。
その時、なんとなく思った。
クロは友人が殺したんじゃないか、って。
どうしてそう思ったのかはよくわからない。
でも、前から友人はクロのことを不気味だとか言って、良くは思っていなかっただろうから、そんな気がした。
友人が掃除当番となった次の週。
私は殺り返した。
やられたらやり返す。
殺られたら殺り返す。
それも倍返しだ。
どんな殺り方をしたのか覚えていない。
その後、その友人とどうなったのかも覚えていない。
でも、殺ったのは確かだ。
だって私は、こんなにも前世の記憶があるまま、現世では金魚として生きているのだから。
きっと殺り返されるのだ。
やられたらやり返す、とは、やったらやり返される、という事だ。
私は、少なくてもあと一回は金魚として生まれ変わるのであろう。
二匹殺したのだから。
それとも二倍返しで、計四回、金魚として生まれ変わるのだろうか。
そんな事を考えながら、段々意識が薄れてく。
桜の木の下の土の中で。