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その時、日本は変わった―Japan changed then. ―

※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、この作品におけるフィクション扱いでお願いします。


※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。


※ピクシブ版と同様に、グループ・ハンドレットとアイドルのグループ名を変更している個所があります。変更前のグループ名に関してはホームページで掲載中のアイドルランナー本編の方をご覧ください。


※小説家になろうへ投稿するにあたって、各話にエキサイト翻訳の英文を追加しております。 それに加えて、一部のセリフ(コメント)を変更している個所があります。


>更新履歴

・5月23日午後2時42分付

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〈メモリーランナー〉

 西暦2009年、音楽業界は冬の時代を迎えてしまった。この世界は一握りの政治家のお気に入りとなったアイドルだけが歌番組で歌を歌う事、CDショップでCDを売る事を許され、それを認められなかった大勢のアイドルや歌手は歌を歌う事を辞めた。それでも一部の歌手が歌を捨てずにメッセージを伝えようとしたが、彼らの楽曲は不当とも言えるような重い税金をかけられ、一部のアイドルグループの引き立て役となってしまう。


 動画サイトでは、有名作家の曲が超有名アイドルの楽曲と酷似している事が原因で業界を追放される危機となっていた。この原因となっているのが、一部の政治家と手を組んでいると思われる超有名アイドルグループ。彼女達は、莫大な資金力を利用して違法とも言えるような裏工作を展開しているのだと言う話が聞かれている。


 これらの話が表に流れないのは政治家達が裏で政治献金を受けている事が理由の一つとなっている。しかし、これとは別の理由も存在する。それは、超有名アイドルの支払っている莫大な税金で1000兆円規模とも言われる赤字国債、それをわずか数年で半分近くを1グループの稼ぎだした税金で償却しているという事である。


 普通であれば、1アイドルに1000兆円規模とも言える赤字国債が償却できるとは考えにくい…と野党も反発、超有名アイドルによる日本経済回復は不可能と言われていた。しかし、実際はスタートして1年で100兆円規模の赤字国債償却に成功する等の成果を残し、日本中に衝撃を与えた。


 しかし、この衝撃は他の業界にも影響を及ぼしていた。超有名アイドルとタイアップする作品が急激に増えだし、それ以外のタイアップ作品は売れないと言う流れになってしまったからである。超有名アイドル以外は音楽業界に不要、そう判断されてもおかしくはない政策は山場を迎えようとしている。


 その状況を重く見たゲーム会社は、メッセンジャーと呼ばれる生身の宅配業者に楽曲を保存したメモリースティックを託し、それを動画サイトのビルへ直接届けると言う案を動画サイト側へ提案、その提案は動画サイト側の意見を取り入れる事で、メモリーランナーという新業種としてスタートした。


『サイハ、あなたの目的は動画サイトのビルにメモリースティックを届ける事。途中では楽曲を奪う為に雇われた用心棒が待ち受けているかもしれない。それでも、音楽業界の為にも―』


 ビルの屋上でタンクトップにスパッツ、耳には特殊な無線型ヘッドフォンをした一人の女性が、オペレーターの指示を聞いていた。


「ネットで流すと、楽曲のデータを盗み見て管理局に登録される―楽曲を1曲発表するのにもアナログな手段を使うとは…世の中も変わったのね」


 サイハと呼ばれた女性は思った。ネットに上げただけで他人が楽曲を盗み見て、それを自分の曲として登録、本来の作曲者が盗み見た人間から楽曲の盗作扱いを受ける―そんな音楽業界になった事を彼女は許せなかった。


「これも、正しい音楽業界を取り戻す為の戦いなのかもしれない―」


 そして、サイハはビルからビルへと飛び移りながら目的地である動画サイトのビルへと向かう…。


###


『ハイパーグローブとブーツを作ってみた』


 突如として、ゲーム画面とは別の画面が現れ、そこには手作りしたと思われるグローブとブーツの写真が映し出されていた。


「皆さん、こんにちは。技術部でもとんでもない物ばかり作っている人です。今回は、最近プレイして面白そうなゲームだなぁ…と思ったメモリーランナーに登場する―」


 写真が写っている画面のまま、先ほどのサイハとは別の三つ編みにメガネ、作業着という女性が現れて進行役をする。彼女が技術部の中でもとんでもない発明ばかりをする蒼騎飛翔(あおき・ひしょう)である。


『またお前か』


『技術部タグ特定余裕でした』


『メモリーランナーのグローブなんて本当に作れるのか?』


 そんなコメントが画面を埋め尽くす。流石に弾幕と呼ばれる状態ではないが、大体は飛翔のトンデモ発明では…と予測していた視聴者が大半だった。


「実際に、このグローブで壁に張り付く事が出来るのか、実験しようと思います。これは地元の消防にも許可を得てやっている事ですので、皆さんは絶対に真似をしないでくださいね」


 相変わらずの飛翔の台詞に、視聴者のコメントも―。


『真似は不可能だと思う』


『相変わらずのフリーダムだ』


『どういう事なの?』


 そんなコメントで画面が埋め尽くされる。


「このグローブとブーツがあれば、ビルの壁等も…ご覧の通り!」


 グローブで壁に張り付き、その後に飛翔はブーツで垂直に壁を登っていく。


『特許取れるレベルじゃねぇか』


『これだけの物を公開して大丈夫か?』


『彼女に常識は通用しないのか』


 この動画を見ていた一人の男性は何かを確信していたようだった。


「彼女ならば、あの現状を打破出来る存在になれるのかもしれない…」


 彼は動画サイトでプロデューサーと呼ばれている人物でもある。


 今から4年前の西暦2005年、日本政府は音楽ライセンス関係の管理体制を簡略化させる目的で音楽管理システムを開発し、それを実用化させた。今までは楽曲の審査等で数日という日程がかかっていた部分を機械に任せる事で審査等にかかる時間を大幅に短縮化させる事に成功した。その一方でこのシステムには重大な課題を残していた。その問題点が表舞台に出てくるのはシステムが稼働してから直後ではなく、稼働してシステムが浸透し始めてからの事になる。


 システムが稼働して2年目となる西暦2007年、アイドルグループであるグループ・ハンドレットの楽曲が、ネット上で有名な動画の曲に似ているとネット上や週刊誌等で話題になっていた。当初はグループ・ハンドレット側が後から出したのではないか…という意見が多数あったのだが、先に音楽管理システムに登録したのはグループ・ハンドレット側だった為に、グループ・ハンドレット側が最初の裁判でも勝利したという結果だった。


 しかし、実際に彼が楽曲を作って動画サイトに投稿したのはグループ・ハンドレットがCDを発売する前だった為、何らかの手段で楽曲を盗作したのでは…という噂話も浮上していたのである。

 最終的には日本政府がグループ・ハンドレットに楽曲の権利があるという結果を出し、このアーティストは音楽活動から一線を退くと言う事態にまで至ったのである。しかし、その彼に対しては批判を浴びる事はなく、逆に批判を浴びていたのは裁判に勝利したグループ・ハンドレット側だったのである。


『どう考えても、向こうの方が後出しジャンケンに見えるのに―』


『音楽管理ネットワークに加入している芸能事務所が圧倒的に有利と言うのは、こういう事だったのか』


『これでは超有名アイドル商法をやっている芸能事務所が優位に立つのも時間の問題―』


 ネット上では、そんな書き込みが相次いでいた。どう考えてもグループ・ハンドレットの方が何らかの方法を使って楽曲を手に入れたのではないか…と。


「この音楽管理システムが誕生してから生み出されたのは、一部の大規模アイドルグループのみを税制面などで支援する体制と、音楽業界全体が政府の管理下に置かれるようになったという―」


 西暦2008年、マンションの自室で制作中の原稿を整理していたのは青髪のセミショート、長身で背広と言う女性だった。


「結局、グループ50解散後には彼女達の商法が残り、それが他のグループにも流用されていき…利益至上主義型アイドルが量産される現状になった。これを何としても止めないといけないのに、どうしてラクシュミも同じ商法に続いてしまったのか―。利益だけを求めようとするアイドルバブルは、いつか破綻する事は目に見えていると言うのに」


 彼女の名前は瀬川(せがわ)アスナ、元はラクシュミというアイドルグループに所属して第1期のリーダーをも務めていた人物である。しかし、ある事件がきっかけでラクシュミを脱退、現在は芸能記者の仕事をして音楽業界の行く末を見守っている。


「良くも悪くも、全てはグループ50が生み出した商法が元凶―」


 グループ50、2002年頃から多くの曲をヒットさせてきた50人という人数の大規模アイドルグループである。デビュー当時はヒット作品に恵まれていなかったが、2003年中盤辺りからメガヒットを飛ばすようになり、遂には紅白にも出場するまでに至る。


 しかし、週刊誌からはグループ50の展開してきた商法があまりにも逸脱しているのでは…という話が浮上し、遂には政府が彼女達の事務所を調査するまでに至った。


「調査の結果は一部を問題なしと判断した一方で―」


 週刊誌で取り上げられていた事実に関しては確認できなかった事を理由に、グループ50の商法に関する一部は問題なしと判断されたのである。しかし、CDのおまけとして封入されていたイベント招待券等が大量にインターネットオークションに流れている事実を踏まえ、イベント招待券等に関する部分はクロという判定を下した。

 その後、グループ50のメンバーは芸能界から追放されるような形で歴史の闇へと姿を消した。現在では彼女達のグループ名も黒歴史扱いとなり、何処の芸能事務所でもグループ50の話題は触れてはいけない…という流れとなった。


 その後にグループ50と入れ替わる形でデビューしたのが瀬川も在籍していたアイドルグループのラクシュミである。彼女達の人気が急上昇した流れがグループ50の芸能界追放とほぼ同時期と言う事もあって、世代交代ともネット上では騒がれていた。その際に騒がれていたグループ50の問題点、それはイベント招待券だけではなかった。


「CDチャートの水増し行為、CDを複数枚以上購入する事を前提としたイベント招待や特典、さらにはファンクラブ特別会員を利用してのグッズ販売促進活動等…どう考えても別のアイドルグループで転用できそうな物に関しては問題なしと判断していたとしか思えない」


 瀬川は疑問を抱いていた。イベント招待券に関する部分はクロと判定されたが、それ以外にも週刊誌で指摘されていた項目は多数あったはずである。確認出来なかった…という理由だけで他の部分をスルーしてしまってよいのだろうか。これらの商法に目を付けていたのは芸能事務所だけではなく、この商法に関して税金を優遇する制度を導入という政府の陰謀の影も見え隠れしている。


 更にはアイドルバブルが崩壊した場合、超有名アイドルをはじめとした商法が根底から崩れる結果となったら、音楽業界やその他の業種にも影響が及ぶのは避けられない。


「まだ、確実な情報がない中で行動を起こすのは、今のタイミングでは危険すぎる…か」


 グループ・ハンドレットの一件もあるが、一連の商法に関しては情報が現状では非常に乏しい為、更なる情報を集めなければ行動を起こしても失敗をするのは明白と判断、原稿のデータをセーブし、別の作業に入る事にした。


「さて、今回の衣装はどれにしようか…」


 瀬川がクローゼットから用意したのは、現在着ている背広とは全く別の服だった。ファンタジーを思わせるような物から、格闘ゲームに出てきそうな物まで色々である。


 同じ頃、竹ノ塚某所にある2階建ての一軒家、女性の部屋とは思えないようなフィギュア等が飾られた棚、ゲーム専用となっている液晶テレビ、数種類の新型ゲーム機、そんな部屋の中でデスクトップパソコンを操作して動画作成をしていたのは、飛翔だった。


「次は、この多機能型太陽発電機の動画を作らなくては…」


 メモリーランナーのゲーム中でもグローブとブーツの電力を充電する為、ビルの屋上等のあちこちに配置されているのが多機能型太陽発電機である。既に飛翔はプロトタイプを完成させたのだが、改良点が多く見つかっており、その途中経過だけでも動画にまとめようと考えていた。


「最近の技術部はゲーム作品の武器やアイテムを再現している人が多いから、再現可能な簡単な物は取られがちになるのが欠点ね―」


 そんな飛翔が考えていたのは、以前作成したメモリーランナーのグローブとブーツに関係した物を続けて作ろうと言う物だった。


「最終的には、あのインカムと衝撃緩和スーツにコンパクトGPSが実用化できれば…というのは素材が見つからない的な事情もあって無理な話ね」


 目標としては、サウンドランナーが使用する小道具一式を作成する事だった。ゲーム中でも使われていた万能型インカムとポーチサイズにまで縮小したコンパクト高性能型GPS、高い所から落ちてもダメージを最小限にまで抑える衝撃緩和スーツである。

 中でも衝撃緩和スーツに関しては、既に挑戦しようと考えていた人間が数人いたのだが、技術的な部分で挫折した者が多い難関アイテムでもある。途中経過の動画では、半数近くが既存の素材を組み合わせて製作しようと考えていたのだが、ゲーム中と同じ位の耐久度を求めると…挫折をしてしまうのが殆どである。


「衝撃の吸収をエアバッグで代用というのはゲーム中でも何度も使用する部分が再現不可能という部分で不採用、救命胴衣を改造して使うのもデザイン的な部分等で問題点があって不採用、魔法等の非科学的な部分に頼るのも…流石に無理ね」


 衝撃緩和スーツとは、ゲーム中で高所から落ちた場合にライフの減少を抑えると言う強力なアイテムで、ゲーム後半になると全身鎧やSFに出てくる宇宙服のようなデザインの物まで出てくるメモリーランナーでも重要なアイテムである。


「メモリーランナーは、このスーツがないと高所から落ちた場合には命取りになる。それこそ本当に命を落としかねないような大事故にもつながる恐れが―」


 これを実用化する事が出来れば人命救助や危険な場所での作業も安全に行う事が出来るようになる。メモリーランナーと言うゲームに出会って以来、そんな事を何度も考えていたのである。


 2年前の6月、彼女はワックワック技術部の製作した試作型レーダーの試験をする為に登山へ出かけていた。同じ技術部メンバー数人も同行しての大掛かりな物だった。今回使用するレーダーは超高性能GPSを搭載した物で、運用試験が成功すれば特許取得も夢ではないような物だった。

 しかし、お昼過ぎから天候が悪化し、やがて雨が降り出した。非常事態を感じた技術部のメンバーは数人で話し合い、その結果として試験の中止を周囲に指示する。話し合いに参加したメンバーは中止を素直に受け止める者もいたが、唯一反対していたのは飛翔だったのである。


「この雨は大雨になりそうな予感を感じさせる気配がする。試験の方は中断して下山をするのが―」


 男性メンバーの一人が飛翔に試験の中止を提案するのだが、飛翔はその忠告を無視して実験を続行しようと考えていた。


「この天気では、太陽光発電も―」


 唯一の反対をしていた飛翔も、最終的には太陽光発電システムが起動しない事を理由に下山に賛成をした。しかし、下山から10分が経過し、駐車場まであと少しという所で事故は起こった。


「しまった―」


 飛翔が足を滑らせて、駐車場へ向かう山道から滑り落ちてしまったのである。高さにして3メートル下の別ルート用山道に他のメンバーが飛翔の姿を確認するが、技術部の持ち合わせた道具では飛翔を持ち上げる事は困難である。


「これが山道でも使えれば…」


 飛翔の両手には特殊なグローブがはめられていた。これは、磁力を応用して鉄の壁に張り付く事が出来ると言う物だが、周囲の崖を含めて鉄で出来ているような物は近くにはない。整備された道ならば、ガードレールがあるはずなのでは…と思ったが、それに近い物は周囲に存在しなかった。


 その後、救援隊によって飛翔は無事に救出された。しかし、自力で何とか脱出を試みようとしたのか、腕や足には傷が多く残っていた。


「結局、自分の発明でどうにかなる…そう思っていた時期があった―」


 この事故をきっかけに、飛翔は動画制作及び発明から一時遠ざかる事になった。


 あの事故から1カ月が経過した7月、飛翔は探し物ついでに中古ソフト店に立ち寄っていた。彼女が足を運んだのは新作ソフトコーナーだが、話題の新作RPG等は見向きもせず、ある棚の前で足を止めていた。


「これは…」


 飛翔が手に取ったのは、メモリーランナーと言うタイトルのアクションゲーム。パッケージを見る限りでは武器を使って戦うようなアクションではなく、メモリーを妨害してくる敵に取られる事なくゴール地点まで到着する事が目的のゲームのようだ。


「鬼ごっことか、缶蹴り等と同じような物かな…これは」


 ベスト版と言う事もあって、自分の財布と相談した結果、このソフトと他の新作麻雀ゲーム、音楽ゲームの合計3本を持ってカウンターへ向かった。


「これまた珍しいソフトを…」


 店員からもメモリーランナーを購入した事に対して驚かれる。このソフトは発売当初は10万本のヒットだったのだが、操作性等の難しさもあって、その後は売上本数が伸びなかったと言う話を店員から聞いた。


 家に戻り、飛翔は1階の和室でソフトを開けて説明書を読んでいた。ゲーム機本体も自分の部屋から和室に移動して、32型の大画面液晶テレビに接続済みである。


「確かに、操作性は難しそう…」


 使用するのはコントローラーの十字キーとアナログスティック2本、ボタン8つが基本のようだ。飛翔は格闘ゲーム用及び音楽ゲーム用の専用コントローラーも持っているのだが、今回は普通のコントローラーを使ってプレイするようだ。


「移動は十字キー、左のアナログスティックはプレイヤーの視点変化、ボタンはジャンプとアイテム回収、攻撃、マップ表示…と言った所か。オプションで操作設定は変更可能だけど、基本はこんな感じ…」


 飛翔が説明書を左手に、コントローラーのボタンを右手で確認する。一通りの確認が終わると、飛翔はゲーム機の電源を入れ、メモリーランナーのディスクをゲーム機にセットし、デモムービーが始まるのを待つ。



『西暦2009年、音楽業界は冬の時代を迎えてしまった。この世界は一握りの政治家のお気に入りとなったアイドルだけが歌番組で歌を歌う事、CDショップでCDを売る事を許され、それを認められなかった大勢のアイドルや歌手は歌を歌う事を辞めた―』


 ソフトのパッケージを一度確認してから購入したのだが、このナレーションを聞くと他人事では済まされないのでは…と飛翔は思った。ひょっとすると、メモリーランナーは今の音楽業界を予言していたのでは…と。


「この作品は架空の街みたいだけど、いつか日本も同じような事になるのでは―」


 飛翔はメモリーランナーと同じような音楽業界にはなってほしくない…そう思った。


『その状況を重く見たゲーム会社は、メッセンジャーと呼ばれる生身の宅配業者に楽曲を保存したメモリースティックを託し、それを動画サイトのビルへ直接届けると言う案を動画サイト側へ提案、その提案は動画サイト側の意見を取り入れる事で、メモリーランナーという新業種としてスタートした―』


『彼女達がメモリーを届ける光景は、動画サイトに流れ、その活躍を見た大勢のユーザーはメモリーランナーが音楽業界のかけ橋になってくれる…そう信じていた。ある組織が出現し、妨害活動を開始するまでは―』


 飛翔はナレーションを聞いて思う、アイドル等が脚光を浴びる一方で、それを良く思わない人物が妨害を仕掛けると言うケースは最近でも多数存在する。どんな理由があろうと圧力や人心掌握等で全ての考えを押さえつけるような事はあってはならない…。


 ナレーションも一通り終わり、ローディング画面の後にはCGで描かれた高層ビルが立ち並んだ街並みが現れる。リアルに見えるのは、最近のCG技術が進歩している証拠なのかもしれない。その屋上には、このゲームの主人公であるサイハがビル屋上からの風景を眺めている。


『サイハ、あなたの目的は動画サイトのビルにメモリースティックを届ける事。途中では楽曲を奪う為に雇われた用心棒が待ち受けているかもしれない。それでも、音楽業界の為にもメモリースティックを無事に動画サイトのビルへ届けなくてはならない―』


 サイハはオペレーターの指示を聞きながらメモリースティックを確かめている。


『ネットで流すと、楽曲のデータを盗み見て管理局に登録される―楽曲を1曲発表するのにもアナログな手段を使うとは…世の中も変わったのね』


 ネットに上げただけで他人が楽曲を盗み見て自分の曲として登録、本来の作曲者が楽曲を盗み見た人間から楽曲の盗作扱いを受ける―変わり果ててしまった音楽業界が飛翔には許せなかった。サイハの台詞が飛翔の思いと微妙に重なっていた。これは架空の街でも現実の日本でも同じ事が行われている事を意味しているのだろうか?


『これも、正しい音楽業界を取り戻す為の戦いなのかもしれない―』


 そして、サイハはビルからビルへと飛び移りながら目的地である動画サイトのビルへと向かう…。


『特に時間の指定はされていないけど、目的地が分からなくなったらGPSを使えば、すぐに目的地への最短ルートを割り出してくれるわ―』


 GPSと言われて、飛翔はどのボタンがGPS表示ボタンか迷っていた。台詞の後にコントローラーの図が現れ、青く点滅している個所がGPSボタンのようだ。


「このボタンか…」


 飛翔がコントローラーのGPSボタンを押すと、画面の右上に四角いマップのような物が現れた。三角形で表示されているのがサイハの現在位置、矢印が進んでいる方向、残り距離は最短距離で向かった場合の距離数、四角形は高層ビルを表している。この状態では簡易マップなのだが、更に飛翔がボタンを押すと右上の小さいマップが更に拡大し、画面の4分の1を占拠する位の大型詳細マップに変化した。このマップでは、道やビル内部の構造等も表示される。しかし、飛翔は右端にあるゲージが減っている事に気付いた。


「どうやら、右端のバッテリーゲージの減りが激しくなるみたいね…」


 簡易マップではバッテリーゲージの減りは少ないのだが、詳細マップではゲージの減りが若干増えている。


「更にGPSボタンを押すと、最短距離をGPSナビがアドバイスしてくれます―か」


 飛翔は説明書を片手に、GPSボタンを再び押した。すると、マップの表示が簡易マップに戻ったのだが…。


『このまま、200M直進して下さい―』


 飛翔は急に何もない所から声が聞こえたので驚いた。下の方にも字幕が表示されているのだが、音声ナビモードに移行するようだ。


「200M直進ねぇ…?」


 飛翔は疑問に思った。それは、150メートル程直進した時に分かったのだが、目の前には大きな看板が立てられていた。看板を突き破ろうとも考えたが、高さ2メートル程の看板を壊せるような気配ではなかった。


「壊すと言うのは、流石に無理か。説明書を見ても看板を壊せるようなアイテムは初期状態では持っていなさそうだし―」


 看板に接近した所で、再びGPSボタンと同じようなコントローラーの図が現れ、そこでジャンプボタンとグリップボタンの説明が入る。ジャンプボタンでジャンプ、グリップボタンで掴む事が可能なオブジェクトを掴む事で看板を登るらしいのだが…。


「あの階段が使えそうね」


 看板の近くにライトの付け替えに使うと思われる階段があり、そこまで移動し、階段を掴み、十字キーで上へと登る。そこで、何やら無線のような物が入った。


『グリップレベルの高いグローブなら、看板にそのまま張りついた状態で登る事も可能になるわ。ただし、その場合はバッテリーゲージがその分消費するから覚えておいて―』


 どうやら、ある程度のアイテムが揃えば看板にそのまま張りついて登る事も可能になるらしい。その際にもバッテリーゲージが消費する。


「そろそろ、ゴールも見えてくる…?」


 看板を突破し、次のビルも飛び乗った所で黒服の男性数人と魔女のコスプレをした女性が待ち構えていた。どうやら、このステージのボスらしい。


『黒の魔女というメモリースティックを狙っている組織に見つかってしまったわ。今の装備じゃ相手にダメージを与える事は全くできない。とにかく、振り切って!』


 オペレーターも敵が早い段階で出てくる事は予想もしていなかったらしい。逃げろと言う指示らしいが、それでも飛翔は何とか直線距離で突破できないか試みる。


「嘘、どうして…?」


 グリップボタンがパンチも兼用しているようだが、目の前にいる敵には全くダメージを与えられない。敵のHPゲージは画面上に出てきてはいるはずなのだが…?


『何をしているの! 相手は衝撃緩和スーツを着ている以上、今の装備ではダメージを与える事も不可能なのよ! 悔しいけど、今は逃げることだけを考えて』


 どうやら、相手が装備している衣装が衝撃緩和スーツらしい。ここで飛翔は疑問に思った。サイハが装備している物に同じスーツはないのか…と。


「装備画面は…」


 コントローラーのセレクトボタンを押して装備を確認するが、サイハは衝撃緩和スーツを持っていなかったのである。アイテムを何処かで見落としたのではないか…とも考えたが、最短ルートで通った道にはアイテムボックスが置いてあるような気配はなかった。


「本当に、この装備で振り切れと?」


 飛翔は思った。下手をしたら、詰んだのでは…と。それでも、GPSのルートを信じて追ってくる黒服からひたすら逃げた。


『何とか振り切ったみたいね。後は、GPSの最短ルートで目的地へ向かって―』


 途中で無線の音声が途切れた。バッテリーゲージを見てみると、赤く点滅しているのが分かる。どうやら、何処かで充電をする必要があるらしい。


「バッテリーの充電は、ビル屋上の多機能型太陽発電機に接触する事で自動的に行われます。ただし、充電中はGPS等のバッテリーを消耗する行動に制限がかかります」


 飛翔が説明書を確認する。目の前に見えて来たジュースの自動販売機にも見える機械が多機能型太陽発電機らしい。


『いらっしゃいませ。バッテリーの充電はメモリーランナーには無料で行っております』


 愛想のない機械っぽい男性の声で充電が無料である事を案内される。そして、すぐに充電がスタートした。ゲージの回復速度が遅いようだが、これはレベルの低いバッテリーを装備している為だと言う事が説明書に書いてある。


「多機能型太陽発電機には、敵を撃破する事で得られるポイントを消費する事で装備しているアイテムのレベルアップ、予備のバッテリー購入及び充電も可能…と」


 飛翔が説明書を見ながら、充電が終了するのを待つ。充電中もゲーム内の時間は経過している為、制限時間等があるステージでは途中で充電を切り上げてでも制限時間内にゴールするテクニックや、予備のバッテリーを時間無制限のステージで充電して用意する事も必要である事を理解した。


「ビル内やショッピングモール、アミューズメント施設等ではバッテリーを販売する自動販売機はありますが、バッテリーの自動充電は出来ません…?」


 屋内では太陽光パネルを置いても意味はないのだが、どうやって予備バッテリーをストックしているのか…飛翔は疑問に思う。


『充電完了!』


 叫んでいるような台詞だが、やっぱり愛想がない為かシステム的なテンプレ台詞にも聞こえてしまう。この辺りは改善した方がよいのか、それともあえて残すか…飛翔は技術部のネタを考えつつもゲームを進める。


「どうやら、ここがゴールみたいね」


 直線距離を走り、ようやく見えたのは動画サイトを運営する会社の看板だった。


『まずは、任務完了…か』


 サイハはゴール地点で待っていた人物にメモリースティックを渡す。ステージの方は無事にクリア、次に出現したのは評価画面だった。


「Aランクか…初めてにしては、上出来と言った所かな?」


 説明書によると、ランクはSSSが最高で最低ランクはFランクとなる。SSSを取る為には、簡易以外のGPSナビを使用しないでクリア、ダメージを受けない、制限時間があるステージではゴール時に残り時間が多ければ高評価、途中でゲームオーバーにならない、隠しルートの開通等が書いてあった。


「ゲームオーバーは…主人公のライフが0になる、持っているメモリースティックが相手に全て奪われる、制限時間付きステージでステージ途中の制限時間切れの3種類に分類される―」


 メモリースティックは今回のステージでは1本だけだが、他のステージでは仲間のメモリーランナーと行動を共にするステージも存在し、その際に自分が持っている物を含めて全てのメモリースティックが奪われるとゲームオーバーになるようだ。取り返す事は基本的に不可能で、あるアイテムを所持している場合やメモリースティックを取り返すイベントがある場合限定のようだ。


「入手したポイントは、どう使えば…」


 獲得できたポイントは最初のステージと言うだけあって1000と少ない物だった。SSS評価では3000、SSは2000となっている。SSSとAでは3倍の差がある事になる。このポイントに関しては、初回クリアも2回目以降も同じ獲得ポイントになっている。その為、最初のステージで鍛えてから次のステージへ進むと言う事も可能になっている。


『何か、欲しい物があればボタンを押したまえ―』


 ローディング画面の後に登場したのは、先ほどの愛想のない太陽発電機…と思ったら普通の自動販売機だった。売っている物は予備バッテリーとランクアップアイテムの2種類だけであった。ランクアップアイテムはグローブ、ブーツ、スーツ、GPSの4種類に分類されているようだ。1個購入すれば、レベルが1上昇するようだ。


「予備バッテリーも重要だけど、まずはランクアップが優先―って、ポイントが足りないみたい」


 レベル2にする為に必要なポイントは3000で、これは全ての種類で共通だった。ランクSSSを取っていれば、すぐにレベル2に上昇可能だが、アクションが慣れてからでないとSSSを取るのは難しいようである。


「せめて、どこかでSSS獲得条件が載っていれば…というのは攻略本を買った方が早そうね」


 とりあえず、ネットで別の情報も仕入れなければいけない為、今回は1ステージをクリアしたのみでデータをセーブして中断する事にした。


 数日の間、飛翔は家に戻るとメモリーランナーの続きをプレイし、その後は何かの設計図を書くと言う繰り返しになった。


「ゲームも中盤辺りね…」


 ソフトを買ったお店と同じ所で攻略本も購入し、本をチェックしながらゲームが始まるのを飛翔は待っていた。


『私の名はサイレント。お前達の持っているメモリースティックを奪いに来た』


 ローディング画面の後に現れたのは、チャイナドレスに狐の仮面をした女性だった。


『あなたが、魔女やファンクラブの親玉なのね?』


 サイハが今まで遭遇した魔女、偽のファンクラブ会員、軍人、戦闘機、挙句の果てには全長5メートルの巨大ロボット…それらを操っているボスが遂に現れたのか―と。


『残念だけど、あちらとは全く別の目的でメモリースティックを奪いに来ただけ―全ての音楽は一度、何らかの形でリセットされるべきだと思っている。その為にもメモリーランナーを私は潰す!』


 しばらくすると、サイレントが急スピードでサイハに向かってくるが、寸前の所で別の人物が現れ、サイハのメモリースティックが奪われるのを阻止した。


『私の名は半蔵。今は、このメモリースティックをサイレントに奪われる訳には―』


 日本の忍者を思わせるような格好をした人物、彼の名は半蔵。攻略本によると、彼もメモリーランナーの一員らしい。プレイヤーキャラとしても使えるが、一度ゲームをクリアしないと使用出来ないようだ。


「さすがに忍装束が衝撃緩和スーツになっているというネタは…?」


 半蔵の忍装束は一般的な忍者とは違い、胸部分にアーマーが付き、更には頭部も若干だがプレートのような物が付いている。攻略本にも衝撃緩和スーツ所持と書いてある為、ほぼ間違いないだろう。


『今は、私と共にこのエリアまで逃げる事を最優先にビルへ向かって欲しい―』


 半蔵の指示で、GPSに表示された指定エリアまで逃げるように指示、その後に動画サイトのビルへ向かう事になった。


「あのスピードでは、遠回りをしないとすぐに追いつかれるのか…2週目以降だとパワープレイも可能かもしれないけど、今は難しいか…」


 飛翔は、サイレントのデモムービー中に見せた超高速を見て、すぐにメモリースティックを奪われてゲームオーバーになるのがオチなのでは…と思った。既に強化された状態や2週目以降から使える別のキャラ等では戦略も変わる為、サイレントの行動範囲内を強行突破する事も可能だろうと思われる。


「あれだけのスピードだと、バッテリー消費も半端な物ではないのに、どうしてサイレントは高速を維持できるのだろう―」


 飛翔はサウンドランナーが高速ダッシュをする際にはバッテリーを消耗する事を思い出した。普通のダッシュや徒歩の場合はバッテリーゲージが消費しないが、高速ダッシュやスーパージャンプ、壁に張り付く等の行動に関しては全てバッテリーを消費し、ゲージが0の場合には使用不可になっている。


「まさか、衝撃緩和スーツに太陽光発電が付いているというオチは―」


 慌ててスタートボタンを押して中断し、攻略本を開く。該当のページには、サイレントの能力に関しての説明があった。スーツに太陽光発電が付いている訳ではないが、徒歩で歩いている際にバッテリーが自動的に充電される仕組みになっているらしい。その為、サイレントの動きを止める事が強行突破をする為の鍵らしいのだが…。


「歩いている際に発生するエネルギーで充電するタイプか…これなら、過去に技術部タグの付いた動画で見た事あるわね」


 飛翔は過去に、歩いているだけで携帯電話のバッテリーを充電出来ると言う装置を紹介していた動画があった事を思い出した。


「あの動画の元ネタは、これだったのね―」


 感心しつつ、飛翔はプレイを再開して迂回ルートで何とかサイレントに気付かれることなく半蔵が指定したエリアへと到着した。


『何とか逃げ延びたようね。今の音楽業界は破綻する運命にある。どんなジャンルが中心になろうとも、その現状は変わらない。音楽に関する全てをリセットする―それが私に与えられた使命…』


 サイレントが意味ありげな台詞を残して姿を消した。どんなジャンルでも…という部分に飛翔は疑問を持ちつつ、動画サイトのビルを目指してGPSの示した最短ルートを元に向かい、何とかゴールに到着した。


「どんなジャンルでも―それは超有名アイドルだけではなく、J―POPや歌謡曲、演歌等でも起こる…という事?」


 音楽業界が破綻する運命、それは利益至上主義の超有名アイドルに限らずとも全てのジャンルで起こりうる事なのだろうか―音楽業界には全く詳しくない飛翔には何の事だかさっぱりという状態だった。


「とりあえず、今回はこの辺りで中断した方が良さそうかな」


 ゲームのセーブが終了し、飛翔はゲーム機を片づけて自室へと向かう。


「今の音楽業界が超有名アイドルの利益至上主義で成り立っている気配なのは、大体分かるとして…他に何があるのだろうか?」


 ふと疑問に思った今の音楽業界を調べようとネットで検索をかけるのだが、莫大な数の検索結果に驚く。その中からいくつかのキーワードを追加して検索をやり直す事に。


「ラクシュミ、超有名アイドル商法―この辺りならば…」


 予想は見事に的中した。そこから検索されたキーワードの中には『今、音楽業界が危ない』という本の名前も出て来たのである。


「次にでも本屋に行く機会があれば、この辺りも調べてみるか…」


 飛翔は設計図の製作を再開する。その設計図はメモリーランナーに登場したグローブとブーツのイラストが書かれていた。


 3日後、苦戦をしつつもメモリーランナーを全面クリアした。厳密にはサイハステージをクリアしたのであって、追加されたキャラに関しては未プレイなのだが…。


「結局、音楽業界の立て直しは持ち越しされているのか…」


 エンディングでは、音楽業界を混乱させようとしたサイレントが実は超有名アイドルグループのメンバーであり、実はメモリースティックを狙っていた組織と同じ事を考えていたという事実が判明した。その後は、サイハ達の戦いはこれからだ…と言わんばかりの展開で幕を閉じた。


「他のキャラもプレイしていけば、この辺りの裏事情も判明するのか…」


 そう思いつつも、飛翔はハイパーグローブの試作品を完成させる方が先なのでは…と一時的にはあるが、メモリーランナーのプレイに関してはお休みする事にした。


『音楽業界は既に我々の手の内です。動画サイトの方は中立を維持していますが、テレビ局はこちらの支配下にあります。我々の芸能事務所が日本を支配するのも、時間の問題かと―』


 ゲーム中では聞いた事のない人物の声がスタッフスクロール後に流れる。そこでは、音楽業界がとある芸能事務所によって完全支配された事が明言されていた。


「今の音楽業界に違和感を持つ理由は、もしかすると一部芸能事務所が政権も支配していると考えるのが…って、そこまでは芸能事務所でも無理があるか」


 一部の芸能事務所でアイドルのPRをする為だけに2時間番組を組む、全部のテレビ局で新曲PRの為に生放送番組に出演、CDにイベント招待券を入れる、その他にも資金力に物を言わせる超有名アイドルのPRイベント等の前例を踏まえて飛翔は考える。


『我々としても、現状でこの国が抱える赤字国債は分かっているつもりです。それを解消する為のアイドルです』


 最後の台詞を聞いた飛翔は寒気を感じていた。日本でも現状で莫大とも言える赤字国債を抱えており、それを別の分野で得られた税収で償却しようと言う動きが水面下で行われている。強化型装甲アイドルという異色とも言えるホーリーフォース計画、それ以外にもラクシュミや一部のアイドルを政府公認アイドルにしようと言う動きもある。


「このゲームが警告しているのは…」


 飛翔は音楽業界がいつか破綻し、その後に残るのは音も何もない無の空間だけになるのでは…という結末も可能性として存在するのではないかと思った。


 翌日、飛翔は探し物ついでに本屋で1冊の本を手に取っていた。タイトルは『今、音楽業界が危ない』―少し前にネットで気になっていた本だった。


「超有名アイドル商法が、ここまでの物になっていたとは―警戒しないと、本当に取り返しのつかない事になるのかも」


 飛翔は自室で本を読みながら思う。利益至上主義となった今の音楽業界は間違いなく破綻する事を―。


『我々は何度でも訴え続ける。超有名アイドル商法が、いつか崩壊した時に音楽業界が今のままの商法を続ければ、海外の音楽業界に吸収されて消滅する事もありえると―』


 飛翔は本の内容に衝撃を覚えた。自分が疑問に思っていた事が、そこには書かれていたのである。


「超有名アイドルとファンだけが中心になって赤字国債を償却している裏には、こんな事実があったなんて…」


 音楽業界の崩壊、それは目前に迫っているのかもしれない…と飛翔は思った。

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