ふたつ。ハゲと銃弾
ぱかんぱかん。
「でも…」と暗い妄想が次から次へと頭にながれてくる。奥の奥へとか考えを掘り進めるのは自分を折れさせるだけなのに、もっと可能性を見いだせるのではないかと試行錯誤してしまう。自分の大嫌いな癖の2つめだ。
ぱたん。
死にたいと思うくらいなら自分を最初から「無」として過ごせばいい。こんなことになるまではそう思っていた。だがしかし、実際そうなってみてはどうだろうか。結局は誰かに哀れみの目を向けてほしいと心のどこかでは考えてしまっている。人は他人に目をどんな形だろうと向けてほしいと思ってしまう性質なのかもしれない。他人とまともな関わりをしてない自分が言うのも変な話だと思うが。
ブカブカの靴を鳴らしながら何かが近づいてくる。ぱたんぱかん。と嫌な音を響かせながら。
「おうよ、今日も相変わらず死んでるなあ」
寝転がっている自分の後ろから汚いガラガラ声があびせられた。その声の正体はいつものハゲだった。(巷ではスキンヘッドというらしい)周りの下っ端らしき群衆はケラケライヒヒヒ笑っている。下品という言葉がお似合いだと毎度思うほどに耳障りだ。たったこれだけであれば普通はただの「クソガキ」で括られるのだろうけども、そいつらが手に持っているのは違反対象のものである。
やられると思いギッと歯を食いしばる。爆音と共にキュインとうなり声をあげるアレが腕を掠め、痛くないなあと油断したその矢先に痛いイタイ?熱い熱い!!と真っ赤な血液を眺めながら、言葉に表せない刺激に体をうねらせながら、今自分が人間だということを実感している。きっと目が見開いているだろう、それにとても無様な表情で何かを吐き出そうとするように口をパクパクとさせて…人ってこんなもんだろう。
「……ギゥ…ァアアア……ッ」
のどがやっと開き、呻き声を発して痛みを和らげようと神経をのどに集中させる。叫べ叫べと意志をそちらへ向けようと頭に情報を送ろうとする。が、途中でシャットアウトされてしまう。痛みは強い、今までに何回もこうして感じて導き出した答え。当たり前だけど実感してみないとわからないものだ。
「モルヒネ」
脳裏に名前が浮かぶ。痛みを和らげるという言葉が脳にたまたま届き、瞬時に望みと混ざりあうようにしてこの薬の名前が出たのだろう。それとも、そのままヤクに溺れて快楽を得続けたいという欲だろうか…まあ、そうだとは思いたくはないが。
そんなこと考えてるうちに重い衝撃が背中に加わる。鈍くドスの利いた音は壁に反響し、嫌なほどその空間にこだました。ビチャリと血反吐が目の前に飛び散った。ひゅーひゅーと喉が鳴り、息をすることすら嫌になる。なぜ人は息をしなければならないのだろうか、嗅覚だってない方が…いや、何を考えているのだろうか自分は。そんな痛みに慣れ始めているというのも現実だ。どんなになぶられても思考が働くほどの力が残るのだから。