01
八木沢 隼人。
全盛期において、超人ランキングS級第十三位。
武器は剣。
流派は自ら創案した――隼人流。
異名は『十万斬』。
モンスター十万体を斬ったことからそう呼ばれた。実際には、それ以上だが。
振り返ってみれば、俺の人生はなかなか悪くなかった。
十五歳で超人として覚醒し、十六歳で超人学校に入学。二十歳で卒業。
成績は三百人中、およそ二十七位。
卒業後、規模五位の大手ギルド『黒騎士連合』に在籍し、十五年を過ごした。
その頃にはすでにA級中位ランカーだった。
第二位クラン『不屈』からスカウトが来たのも、その頃だ。
そうしてクランを移った俺は、八十歳で引退するまで、実に四十五年もの間そこに在籍した。
盛大な式典とともに第一線から退き、第二の人生を楽しむ――はずだった。
そうだ。楽しめるはずだった。
――だが。
「このままじゃ全滅だ!」
「くそっ、あの化け物は一体なんなんだ! 攻撃がまるで効かねぇ!」
当代のS級一位から十五位までが、ことごとく敗れた。
状況は、一世代前の老兵である俺が再び戦場に駆り出されるほど最悪だった。
ズシン……ズシン……。
頭が雲の上に届くほど巨大な恐竜型の怪物が動くたび、地震のように大地が揺れる。
――超特級怪物ベヒモス。
六十年ぶりに現れた大災厄を前に、俺は直感した。
魔人との対人戦、中小型モンスター討伐に特化した俺の力では、あれを相手にするのは絶対に無理だと。
「うわあああっ! ブレスが来るぞ!」
誰かが悲鳴を上げた。
一帯の空気が嵐のように吸い込まれ、怪物の体が眩い緑色に発光し始める。
「防げ! いや、逃げろ!」
思わず、乾いた笑いが漏れる。
どこへ? どうやって?
グォォォォ――
怪物がブレスを放った。
遮るものすべてを破壊し、分解する、緑色の巨大な光線が迫る。
九十年の人生、その最期の瞬間。
俺の脳裏に浮かんだのは、
不倫に走った元アナウンサーの妻でも、
手のかかる二人の息子でもなかった。
天に届くほどの自信と傲慢さで名を馳せた大英雄――
柊レオンと、その仲間たちだった。
……レオンさえ生きていれば。
それが、俺――
元S級十三位『十万斬』隼人の、最期の言葉だった。
……そう思っていた。
「……あれ?」
白を基調とした広々とした部屋だ。
周囲には、今では使われていない旧式の装置や測定機器が、びっしりと並んでいる。
走馬灯か?
いや、これは確か――遠い昔に見た光景のはずだ。
そのとき、壁面のモニターやチャートを見ていたクラシックなスーツ姿の男が、こちらを見て声をかけてきた。
あの人は……内閣超人管理局の安藤さん?
でも、なんであんなに若いんだ?
後に七十代で局長になるはずのあの爺さんはどこに行った?
「八木沢君の潜在能力は、ひとまずA級と判定された。上位一〇パーセント程度かな。十分に優秀だ。おめでとう。」
「……はい?」
「ははは。覚醒したばかりで、まだ実感が湧かないだろう?
とりあえず、超人学校に入学するまでの間は、我々管理局がしっかりサポートする。心配はいらないよ。」
この状況での俺のリアクションは、極めて常識的なものだった。
頬を思いきりつねってみたが――ちゃんと痛みがあった。
信じられないことだが、どうやら俺は……十五歳に戻ったらしい。




