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僕はその夜、寮の自分の部屋で、ただ座り込んでいた。
壁に映る自分の影を見つめながら、冷めた感情が胸を支配する。
「……もう、正面から戦っても勝てない」
剣はそこそこ振れる。水魔法も少し扱える。
でも、あの英雄コースの生徒たちの前では、僕なんてただの雑兵だ。
一瞬で圧倒され、鼻で笑われるような気さえした。
――いや、笑われなくても、結果は同じだった。
心の奥で、何かが切れた。
負けた悔しさ? いや、それだけじゃない。
幼馴染――セシリアはあんなにも輝いているのに、自分は……
僕は目を閉じた。
「……くそ、どうすりゃいいんだ」
頭に一つの考えが浮かぶ。
――勝つ方法を選べばいい。
正々堂々? そんなもの、僕には不要だ。
相手より巧みに立ち回る。
弱点を突く。
油断させて、隙を突く。
勝つための手段なら、どんな汚い手も構わない。
胸の奥で、ひっそりと狂気が芽吹くのを感じながら、僕は小さく笑った。
「……次は、絶対に負けない」




