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族長からの命令は一つだった。
「敵の数を確認しろ――そして、戻って報告しろ」
こうして僕は、エルフ戦士三人とともに偵察隊として森へ向かった。
ティアは「私も行く」と言って聞かなかったが、族長が珍しく怒鳴るほどの語気で止めたため、悔しそうに村へ残っている。
(まぁ、あいつが来たらうるさいし、面倒くさいから助かったけど)
森は薄暗く、鳥の鳴き声すら少ない。確実に、人間たちがこの近くにいる気配があった。
僕たちは草むらに身を伏せ、遠くの焚き火の光を覗いた。
「……あれが、村人たちの仮拠点か」
エルフ戦士Aが呟く。
僕たちが息を潜めて覗く先では、十数人ほどの村人が武器を手に集まり、なにやら話し合っている。
「思ってたより数が多くないか?」
「……あぁ。これはまずいな」
エルフ戦士たちがひそひそと声を交わす。
僕はと言うと――わりと平常運転だった。
「まぁ、ただの村人だから、簡単に殺せそうだけどね」
「……」
エルフ戦士全員が僕を見る。
「お前、あいつらと同じ村の出身なんだろ?」
「殺してもいいのか?」
僕は肩をすくめて、指を一本、草の隙間から突き出した。
「別に仲いいわけじゃないからねー。ほら、まずあいつ」
「ん?」
「あいつは、僕の親が死んだ時に、笑ってバカにした奴」
エルフ戦士たちの顔が固まる。
僕は別の方向を指差す。
「で、その隣のやつは、僕の親が死んで防犯がガバガバになったのをいいことに、僕の家に強盗に入った」
「……なに?」
「他のやつらも同じようなもん。僕のことを道具みたいに扱うか、利用するか、見下すか。ま、つまり――」
僕は軽く笑った。
「君たちエルフみたいに、助け合ったりする関係じゃないってこと」
沈黙。
エルフ戦士たちは、村人を見ていたはずなのに、いつの間にか僕の横顔をじっと見つめていた。
まるで
“人間の敵は人間なのか……?”
とでも言いたげな目で。
(いや、僕をそんな目で見るなよ。悪いのはあいつらで、僕じゃないから)
火の粉が舞い、村人たちの笑い声が遠くまで響く。
僕たちの偵察は――まだ始まったばかりだ。




