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ティアと一緒に、村の外周を歩くことになった。
「監視だからな。変な動きをしたらすぐに拘束する」
ティアはずっと不機嫌だ。
(この子、外見だけは良いんだから、笑ってくれてたら良いのに…)
森は静かだったが、空気に妙な重さがあった。
しばらく歩いていると、ティアが立ち止まった。
「……今、何か音がしたか?」
「いや、僕べつに屁こいて無いけど。」
ティアが明らかに呆れた目を向けてきた。
「そういう意味じゃない!!真面目にやれ!」
(いや、真面目に答えただけなんだが…)
その直後だった。
木々の奥で “ガサッ” と大きな音がした——。
ティアが弓を構える。
「誰だ!!」
叫ぶと同時に、影がひとつ森から飛び出した。
――エルフ。
服は破れ、肩から血を流している。
息も絶え絶えだ。
「た、助けて……
森の奥で……人間の一団が……武装して……!」
ティアの顔色が変わる。
「人間!? なぜこの場所に!」
僕はすかさず言った。
「大変だ!!」
(よかったー……もう少しで恩賞が貰えないとこだった)
倒れたエルフは続けた。
「エルフを捕まえる……って……“網”や“鎖”を持って……」
ティアは息を飲み、震える声で僕を見た。
「……まさか……お前の言ってたこと……全部……」
「嘘じゃないですよ」
ティアの手が弱々しく下り、弓がぶらりと揺れた。
「……父上に報告する。急いで村へ戻るぞ!」
ティアは息を切らしながら村へ駆け戻り、
大きな声で族長に報告した。
「父上!
本当に……このクズ人間の言っていた通りでした!
森の外に、明らかに武装した人間達の痕跡が!」
族長の顔が険しくなる。
「……そうか。
本当に襲撃を企んでいる者たちがいるのか……」
ティアが悔しそうに唇を噛む。
「……この人間は、信じられません。でも、見間違いではありません」
その横で、僕はゆっくりと口角を上げた。
「やっと! 危険性が! わかって! くれますたか?!」
両手を広げ、まるで「勝ち誇ったピエロ」みたいにニコニコしながら。
ティアが眉間に深い皺を刻む。
「……何その顔。イラつくんだけど」
(えぇ……だって僕、最初から正しかったし……恩賞近づいた瞬間なんだから笑わせてよ)
僕はわざとらしく咳払いした。
「えー……ともかく!
僕の言ったことが本当だったわけですし、
そろそろ僕の信用度を“ゼロからちょっとだけプラス”くらいには
上げてもいいんじゃないですかね?」
族長はまだ渋い顔のまま僕を見た。
「……それは状況を見て判断する。
だが、人間。お前が示した情報は確かに村を救う手がかりになる」
(つまり、“恩賞の道”がまだ閉じてないということ!!)
僕の頬がさらに緩んだ。
ティアが深くため息をつく。
「ほんと……こいつ、助ける気あるのか恩賞のことしか考えてないのか……」
(金に決まってるだろー!!!)




