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僕は、ついに“エルフの村らしき場所”の前までたどり着いた。
高い木を組み合わせて作られた柵が、村をぐるりと囲んでいる。
人が勝手に入れないように造られているのが見てわかる。
門の前に立つと、僕は深呼吸して――。
「僕は人間のレイン! この村の危機を伝えに来た!!」
と思い切り叫んだ。
(そう……!僕がこの村を救って、恩賞を貰うのだ!
“正義の味方”と“お金”は両立する!!)
そんな素晴らしい未来を妄想していたら――
門の向こうから、10人ほどのエルフが一気に現れた。
そのうち一人は、僕と同い年くらいの少女。
それ以外は、屈強な男達で、しっかり武器を構えている。
そして少女が、一歩前に出て口を開いた。
「私は、この村の族長の娘――** ティア**だ」
その声は澄んでいるのに、冷たかった。
「私たちは、人間を信用しない。
下劣で汚い人間どもに……
以前、村の外で花を摘んでいた娘が一人、拉致された」
え、それ初っ端からヘビー過ぎでは?
「お前も私たちを騙して売り飛ばすつもりなんだろう?」
……あ、完全に疑われてる。
僕は少し驚いた。
(エルフって、もっと“お花畑で優しい種族”だと思ってたけど……
普通にガチ警戒してるじゃん!!)
でもここで引いたら“恩賞ゲット計画”が崩壊する。
僕は慌てて言った。
「ち、違います!
本当に、この村を助けに来たんです!!」
胸に手を当て、必死に弁明する。
……さて、この必死の訴えが届くのかどうか。
族長の娘―― ティアが、冷え切った声で言い放った。
「人間のことなど信用できん。……そいつを取り押さえろ」
「えっ、うそぉん」
その瞬間だった。
エルフの戦士たちが、一斉に僕へ飛びかかってきた。
――速い。
さすが森で鍛えられた戦士。
人間の兵士とは比べ物にならない機敏さだ。
(やばっ――!!)
反射的に、僕の手が動いた。
少女――族長の娘の足元に、油魔法を撃ち込む。
べちゃッ、と油が広がる。
火はつけていない。ただの油。
だけど、十分な“脅し”になる位置だ。
僕は大声を張り上げた。
「動くな!!
族長の娘さんが“火だるま”になってもいいのか!?
火はまだつけてないけど……つけようと思えば、一瞬だぞ!!」
エルフ戦士たちが一斉に止まる。
彼らの視線が、僕と少女の足元に注がれた。
油に足を取られないように、少女は僅かに身を固くした。
僕は続けて叫ぶ。
「武器を捨てろ!!
両手を上げろ!!
でないと――本当にまずいことになるぞ!!」
空気が張りつめる。
エルフ戦士たちは互いに視線を交わし……
ゆっくりと、武器を地面に置き始めた。
(よし……!話を聞いてもらうための“交渉の土台”は作ったぞ!
このまま冷静に話せば――恩賞ルート、まだワンチャンある!)
けれど目の前の族長の娘は、冷たい瞳を僕に向けたまま言った。
「……話だけは聞いてやる。
だが、人間。少しでも妙な動きをしたら――その油ごと倒す」
(こいつ……馬鹿なのか?
ほんとに自分が殺されないと思ってる。
さっき“族長の娘”って言ってたし――絶対、温室育ちだろ。)
でも、とりあえず“話ができる地点”には持って来れた。
ここからが勝負だ。




