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家に帰ると、我が家のボロさに少しだけため息が出た。
でも、やっと一息つける――そう思うだけで、心が軽くなる。
僕は荷物を置くと、そのまま街を少し歩いて回ることにした。
小さい街だが、市場は思ったより賑わっている。
ふと、人々の話し声が耳に入った。
「おーー!あの金持ちグリムの今回の奴隷は、あの希少なエルフらしいぞ!!」
「え!エルフって森の奥地に住んでて、人間が接触すらできないんだろ?それにエルフ奴隷の取り締まりは、厳しいはずだぞ」
「ああー、そうだ!でも盗賊団が秘密裏に捕まえたらしいぞ」
「まじかよ!?」
「まぁ、普通の奴隷の10倍以上の値段になるしな」
市場のざわつきが広がる中、僕は人混れを抜けながら耳だけそっちに向けていた。
(……また奴隷の話か。ほんと、この街はロクな噂しかないな)
まぁこの国――アーヘルド国では奴隷制は一応あるけど、建前上は 「犯罪者のみが奴隷」 と決まっている。
だから、エルフだからといって奴隷にするのは完全に違法だ。
でも、あの成金野郎は金で役人を黙らせてる。
だからこういう“違法の見せびらかし”が普通にまかり通ってしまう。
村人「え!10億ゼニ!?それって一生遊んで暮らせるぞ!!」
他の村人「すっげぇぇ!!」
僕「……え、まじか」
10億ゼニ。
僕が今まで見てきた金額の桁とは完全に違う。
そんなやりとりを聞いたせいで、村人達のテンションは急上昇し、
その流れはすぐに“最悪の方向”へ転がり始めた。
「よく考えたら、エルフの村ってこの街の北の森の奥だよな?」
「盗賊団にできるなら、オレたちにもできるかもな……」
「成功したら10億ゼニだぞ!?一攫千金だ!!」
マジで言ってるのか。
頭のネジが数本まとめてぶっ飛んでる。
少しだけ心がそっちに引っ張られたのは正直に認める。
10億は、でかい。
……けど。
(罪のないエルフを売るのは、普通に犯罪だ)
僕は、そこまで鬼じゃない。
僕は“優しい人間”なので。
(まぁ、エルフの村に“先に”行って危機を教えてやるか……)
もちろん、それは「善意」だけじゃない。
(恩を売れば、何かしらの恩賞くらい貰えるだろ……エルフって金持ってそうだし)
僕はそう思いながら、ゆっくり村の出口へと歩いていった。
「この夏休み中に稼ぐぞぉーー!!」




