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夜が明け始めたころ、村の空気はしんと静まり返っていた。
Eランク冒険者のひとりが、瓦礫の影に転がる“あの死体”を見つけて叫んだ。
「もしかして、あのBランクの……!? なんでこんな姿に……!」
「うそだろ……あの人が……?」
みんなが青ざめる中、僕はいつも通りの顔で近づく。
(もう、バレたのかー。)
僕は死体をチラッと見て、軽く眉をひそめた。
「ゴブリンって、意外と強いんですね〜。油断したのかな?」
他のEランクたちは黙り込む。
「強い」という言葉に、少し救われたように見えた。
その後は淡々とした後処理だ。
ゴブリンの死骸を数え、討伐数を確認していく。
「……この数なら、ほぼ全滅だな。よかった……」
村長がふらつきながら出てきて、深く頭を下げた。
「助けていただいて……本当に……ありがとうございます……!」
(死体の近くに“松明持ったゴブリン”置いといてよかったわーー
あれがなかったら、僕が疑われてたな、うん)
そんなことを思いながら、僕は静かに頷いた。
――そして、帰還の馬車へ乗り込む。
⸻
馬車はガタガタと揺れながら街へ向かっていた。
「なんで……一番強い人が……」
「俺たちのせい、なのかな……」
Eランク冒険者たちが、ほぼ泣きそうな顔で俯いていた。
僕は窓の外を見ながら、ぼーっとする。
(今回は、“ゴブリン”がやったことにできたけど、結構危ない橋だな。
罪悪感? ないわけじゃない。
でも、あいつは僕を殺そうとした。
あれは仕方がなかったんだ。)
⸻
ギルドに入った瞬間、受付嬢たちがざわついた。
「Bランクだけが死亡!?」
「信じられない……!」
すぐに事情聴取が始まった。
Eランクたちは震える声で言う。
「ゴブリンの数が多くて……助けられませんでした……」
(うん、その通り。いいねーーー)
「遺品は……何かありましたか?」
「いえ……特に……」
(財布の外側だけ残して全部燃やしたからねーー
そりゃ“ない”よねーー)
僕の内心は落ち着きすぎていた。
⸻
受付嬢が言った。
「念のため、もう一度魔力測定を行いましょう。
今回の戦闘で、魔力が減っている可能性もありますので」
僕は水晶に手を当てた。
水晶の濁りが……
昨日より、ほんの少し薄くなっていた。
受付嬢は目を見開き、小さくつぶやく。
「……ん? こんな短期間で濁りが薄くなるなんて……珍しい……」
僕は肩をすくめる。
「よく分かりませんが、まぁ……よかったです」
(この調子だと、魔力暴走で死ぬことは、なさそうだな)
誰にも聞こえない心の声が、静かに笑った。
⸻
討伐報酬をもらったあと、僕は掲示板に目をやる。
(もっと強くなりたい……
ていうか、確実に“魔力暴走で死なない”ようになりたい。
けど、まともな討伐依頼ってEランクじゃ受けられないんだよな……)
強敵系は、全部Cランク以上。
(くそ。成長スピードが遅い)
まぁ、とりあえず帰るか。疲れたし…




