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 日が沈む前、僕は罠を仕掛けた。


 簡単なものだが、完璧だった。

 落とし穴の下に槍が立っているタイプ。

 普通のゴブリンなら、動きを止めるには十分だ。


 他の冒険者たちは、少し離れた場所で仮眠を取る。

 Eランクも、僕も、体力温存だ。


 そして、夜が訪れた。


 森の奥から、ゴブリンの群れが現れる。

 数は想像以上に多く、Eランクたちは慌てふためいた。


 それでも、なんとか戦っている。


 僕も戦い始めるが、数が多すぎてやばい。

 狙った通り、仕掛けていた罠にゴブリンを誘導する。


 落とし穴に落ちたゴブリンに、僕は油魔法を浴びせた。

 炎が一気に広がり、まとめて燃える。


「よし、いっぺんに行ったぜ〜」


 振り返る。

 新鮮な死体から放たれる魔力を浴びて、少しだけゲートの詰まりが解消される。

 気のせいかもしれないが、まぁいい。


(よし、他の奴もさっさと片付けるか)


 後ろを見た瞬間、目が合った。


 ――Bランクの冒険者だったと思う。

 こっちを後ろから押そうとしている。


 一瞬、そいつは固まる。

 焦ったのか、体重を乗せて思いっきり殴ってきた。


 スッ、と避けた。

 次の瞬間、そいつは僕が作った罠の中に落ちていった。


 落ちたときの悲鳴と地面に刺さった槍の音。

 勝手に起こったことだが、なぜか少しスッとした気分になった。


穴に落ちたBランク冒険者は、まだ息があった。

生きている……このままだったら、もしかすると助かってしまう。


(やばい。もしこいつが回復して、ギルドで “Eランクのレインとか言う奴が不意打ちでやった” とか言ったら、僕はおしまいだ。ギルドは高いランクを優遇している。そしたら当然Bランクの方を信じるだろうし)


落ちた本人は、焦った顔で僕を見上げていた。


「おい……助けてくれ!仲間だろ!」


仲間?

さっき僕を罠に落とそうとして、さらに拳で仕留めにきたやつが、よく言えるな。


(ここで迷ってる場合じゃない。僕は生き残る側に回らなきゃいけない)


僕は静かに落とし穴の縁へ歩み寄った。


「すまない。僕は、こんなところで終わっていい人間じゃないんだ。」

それを言って、剣を突き下ろす。

抵抗が一瞬だけあったが、その後すっと軽くなった。


その瞬間、僕の中の“ゲート”がぐっと開く感覚が走った。

まるで何かが体の奥で外れたみたいに、魔力の通りが一段滑らかになった。


(えっ……どういうことだ?

僕が倒したのは、人間だぞ。

人間を殺してゲートが開くなんて聞いた事がない。

しかも、ゲートの開き方はゴブリンを倒したときより遥かに大きい。

……やっぱり、僕だけの“とくべつな力”が出てきなのでは?!)


僕は、少し笑った。

「これは、いいですねーー」 

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