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35

 翌朝、僕は村の隣にある、少し大きな街へ向かった。

 目的地は、冒険者ギルド。


 移動手段は――走り。


 金を使いたくなかった。

 その判断をした数分後には、もう後悔していた。


(……遠い。普通に遠い)


 息が上がり、脚も重い。

 途中で何度か「馬車にすればよかった」と思ったが、今さらだ。


 村にも小さなギルドはある。

 ただ、冒険者登録だけは、この街の大きなギルドでしかできない。


 ここで登録してしまえば、

 村のギルドでも依頼を受けられるようになる。


 ようやく街に入り、

 人通りの多い通りを抜けて、ギルドの建物に辿り着いた。


 扉を開ける。


 中は、思っていたよりも騒がしい。

 酒の匂いと、煙草の匂いが混ざって鼻をつく。


(……くさ)


 一瞬で帰りたくなった。


 とはいえ、目的は一つだ。

 僕はカウンターに向かう。


 そこには、綺麗な受付嬢が座っていた。

 きちんとした服装で、笑顔も完璧だ。


(はえー、これがギルドかー)


 場違い感がすごい。


「いらっしゃいませ。ご用件は?」


 受付嬢の声に、少しだけ背筋が伸びる。


「あ、えっと……ギルド登録を」


「新人さんですか?」


「あ、はい」


「新規登録ですね。それではまず、こちらの用紙に

 お名前と住所などをご記入ください」


 差し出された紙を受け取る。


「記入が終わりましたら、魔力測定を行います」


 淡々とした説明。

 慣れている感じがした。


 僕はカウンターの端で用紙に記入を始める。


 名前。

 住所。

 職業――空欄。


(……冒険者志望、でいいのか?)


 悩みつつ、最低限だけ書いていく。


 記入を終えて、用紙を返すと、

 受付嬢は軽く目を通して頷いた。


「では、登録料をお願いします」


 金額を聞いて、ほんの一瞬だけ手が止まる。


(……まあ、払える)


 懐から、小さな袋を取り出す。


 剣術大会の賭けで勝った金。

 その一部を、カウンターに置いた。


 受付嬢は手早く確認し、問題ないことを示す。


「ありがとうございます。それでは次に、魔力測定へどうぞ」


 そう言って、奥を指し示した。


(……ここからか)


 ようやく、一歩目だ。


 僕は、案内された方向へ歩き出した。

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