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ダンジョンの外に出た瞬間、空気が一変した。
ずらりと並ぶ騎士たち。
無駄のない陣形、研ぎ澄まされた視線。
――騎士団だ。
しかも、ただの派遣じゃない。
中央に立つ女騎士を見て、誰かが息を呑んだ。
騎士団長。
国家最強と謳われる存在で、この学園の卒業生。
アウレリア・フォン・アイゼンリート
たまたま近くにいたから、緊急招集を受けて駆けつけたらしい。
馬を飛ばしてきた、という話も聞こえた。
彼女の視線が、英雄コースの面々へ向く。
「四階層のボスを、学生が倒した……?」
驚き。
そして、はっきりとした誇り。
英雄コースの連中は、騎士団からも一目置かれていた。
その目は、さっきまでダンジョンで見たものと同じだった。
――何かを成し遂げた者を見る目。
その後は、流れるように事が進んだ。
騎士団の誘導、教師たちの指示。
生徒たちは全員、いったん寮へ戻されることになった。
僕も、その中に混じって歩く。
体の奥では、魔力が相変わらず増え続けている。
操作で逃がしてはいるが、根本的な解決じゃない。
早く、なんとかしないと。
翌日。
全校集会が開かれた。
壇上に立つ教師の口から語られたのは、
英雄コースの活躍。
四階層のボスを討ち果たした、輝かしい戦果。
拍手が起きる。
歓声も混じる。
死者についての言及は、報告書を読むだけだった。
名前も、数も、詳しい経緯も。
まるで、死んだ者に用は、ないように。
そこには、アレンの名も、あった。
プライドのために助けを呼ばず、死んだ――
そんな結末だったなんて、誰も知らない。
ここは、強い戦士と魔術師を育てる学園だ。
その過程で死者が出るのは、珍しい話じゃない。
ただ――
今回は、多かった。
例年なら一人、せいぜい二人。
それが十五人。
四階層のボス出現による異常。
通常モンスターの力が底上げされた結果だと、説明された。
それを聞きながら、僕はただ座っていた。
(……ひどい話だな)
全てが終わったあとも、
僕の中では、まだ何も終わっていなかった。
体の奥で、魔力が静かに脈打っている。
それだけが、やけに現実だった。




