03
王都の魔剣士学園は、想像していたよりもずっと大きかった。
石造りの校舎がいくつも並び、訓練場からは金属のぶつかる音が響いている。
――ここが、英雄を育てる場所。
そう思った瞬間、胸の奥が少しだけ冷えた。
入学式が終わり、すぐにクラス分けが発表された。
掲示板の前には人だかりができていて、名前を探すだけで一苦労だ。
僕は、人混みの後ろから、ぼんやりと紙を眺めた。
「……8組」
一般戦闘基礎課程。
通称――雑兵コース。
なるほど、って思った。
正直、驚きはなかった。
少し視線をずらすと、すぐ近くで歓声が上がる。
「セシリア、1組だって!」
「英雄コースじゃん!」
幼馴染――セシリアの名前は、1組にあった。
英雄コース。学園の中でも、最初から“選ばれた”連中の集まり。
「レイン!」
振り返ると、セシリアが駆け寄ってきた。
嬉しそうで、まぶしいくらいの笑顔だった。
「同じ学園でよかったね! クラスは別だけど、一緒に頑張ろう!」
「……うん。そうだね」
口ではそう答えたけど、声は自分でも驚くほど軽かった。
中身が空っぽみたいな声。
別に、怒ってるわけじゃない。
ただ、分かっただけだ。
僕とセシリアは、もう同じ場所に立っていない。
英雄コースと、雑兵コース。
名前からして、期待されているものが違う。
教室に向かう途中、8組の連中を眺めた。
体格のいい脳筋そうなやつ、やたら暗い目をしたやつ、根拠のない自信に満ちたやつ。
……半分以上が、英雄コースに追いつけると思っていそうだった。
どこから、その自信が湧くんだろう。
否定する気はないけど、僕にはちょっと理解できなかった。
教室の隅の席に座り、深く息を吐く。
「まあ、いいか」
英雄じゃなくても、生きてはいける。
少なくとも、死ななければ負けじゃない。
僕は、前に出るタイプじゃない。
正面からぶつかるのも、きっと向いてない。
――だったら。
自分に合ったやり方を、探すだけだ。
そう思った時、胸の奥に、ほんの少しだけ火が灯った気がした。




