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セシリアは、その場で固まっていた。


視線の先にいるのは――

レイン。


けれど、その隣にいるのは自分ではなかった。

見知らぬ生徒たちと、冗談を交わし、笑っている。


(……レイン?)


胸の奥が、ひっかかる。


笑顔は、知っている。

けれど、あんなふうに自然に、誰かと笑っている姿は――。


「セシリア? どうしたの?」


背後から声がかかる。

振り返ると、ヴァレリアが不思議そうにこちらを見ていた。


「そんなに固まって……」


そう言ってから、セシリアの視線の先を追う。

ヴァレリアの目にも、レインの姿が映った。


(……あの平民)


彼女は、彼を知っている。

剣術大会以降、妙に気になる存在として。


(セシリアとは、幼い頃から一緒だったと聞いている)


それなら――

もっと自然に、もっと近い距離で話していてもおかしくない。


なのに。


(……何か、変だな)


ヴァレリアは、そう思ったが、口には出さなかった。


その頃。


ボス部屋の後方、壁際。


僕は、しゃがみ込んだまま、必死に呼吸を整えていた。


(うっ、吐きそう)


体の内側を、魔力が流れ続けている。

押し込まれる感覚は消えない。


けれど――

冗談言えるぐらいには、マシになったな。


魔力を循環させる。

溜めない。流す。逃がす。


頭がぐらつきながらも、立ち上がれる程度にはなっていた。


(……つかれた)


そのとき。


「撤退準備!」


教師の声が、ボス部屋に響いた。


「負傷者を優先!

指示に従え!」


やがて、教師たちの指示のもと、撤退が進められた。


緊張が、少しずつ解けていく。

張りつめていた空気が、現実に引き戻されていく。


僕は、最後尾で歩きながら、何も考えないようにしていた。


考えたら、

きっと、今の状態じゃ耐えられない。


(……外に出られる)


その事実だけを、支えにして、ミレイとカイルとゆっくりと歩き出した。


ダンジョンの闇が、ゆっくりと背後へ遠ざかっていった。

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