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25


四階層のボスが現れ、

前方は完全に戦場になっていた。


怒号。

剣戟。

魔法の閃光。


全員の意識が、そっちに向いている。


(……うん、やっぱり誰もこっちを見てない。)


僕の視線は、自然と足元へ落ちていた。

割れた地面の端。

瓦礫の陰。


そこに――

**屍核侯ネクロ=ヴァルムの“核”**が残っていた。


砕けたはずの核。

完全に消滅したはずの存在。


だが、黒く濁った塊は、

まだ脈打つように微かに動いている。


(生きてる)


はっきりと、そう分かった。


(あー……)


(これ、完全にトドメ刺されてないやつだ)


理由は考えない。

考えてる余裕もない。


放っておいたらどうなるか――

それだけは、直感で理解できた。


僕は、剣を握り直した。


派手な構えはしない。


ただ、近づく。


一歩。

また一歩。


死霊の核は、逃げない。

抵抗もしない。


まるで――

最後を待っているみたいだった。


(じゃあ、終わらせよう)


僕は、剣を振り上げ。


真上から、叩き落とした。


刃が、核の中心を正確に貫く。


ぐしゃり、と嫌な感触。


次の瞬間。


――――――――――


爆発するように、魔力が噴き出した。


「っ……!?」


屍核侯ネクロ=ヴァルムの残滓。

圧縮されていた死霊の魔力が、

行き場を失い――


全部、僕に流れ込んできた。


(えっ、なにこれ、なにこれ)


胸の奥が、焼けるように熱い。

いや、違う。


冷たい。

重い。

生き物じゃない感覚。


(ぬおーー……っ)


身体の内側から、無理やり押し広げられる感覚。


この世界の人間は、

魔力を外へ逃がすためのゲートを持っている。


でも僕のゲートは小さい。

魔力量が少ない人間の、それだ。


そこに――

ボス級死霊の魔力が、丸ごと流れ込んできた。


耐えられるわけがない。


視界が揺れる。

膝が、わずかに折れそうになる。


それでも。


核は、完全に砕け散った。


今度こそ、何も残らない。

屍核侯ネクロ=ヴァルムは――

確実に、死んだ。


前方で、叫び声が上がる。


四階層のボスが、動き出したのだ。


誰も、振り返らない。

誰も、僕を見ていない。


だから誰も知らない。


三階層のボスに

本当の意味でトドメを刺したのが、僕だということを。


そして――

その代償が、今まさに身体を蝕み始めていることも。


ダンジョンは続く。


でも、

僕の中の何かは、もう戻らなかった。


(なんで、こうなるんだ…)

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