02
魔剣士学園の正門は、思っていたよりもずっと大きかった。
石造りの門と、高く掲げられた王国の紋章。――英雄を量産する場所、らしい。
セシリアは、入学初日から目立っていた。
試験で首席だった、という噂はすでに広がっていて、周囲には自然と人が集まっている。
「すごいね」「さすがだね」
そんな声を、少し離れたところから聞きながら、僕は列に並んでいた。
別に、羨ましくない。
……いや、正確に言うと、羨ましいとかそういう感情を抱くのも、もう面倒だった。
同じ門をくぐって、同じ制服を着て、同じ学園に通う。
それなのに、立っている場所が違う。
まあ、当然だよな。
最初の授業は基礎剣術だった。
木剣を握り、型をなぞる。小さい頃から何度もやってきた動きだ。
悪くはない。
教師の評価も「平均以上」。
でも、それだけだ。
隣では、セシリアが軽く振っただけで、空気が変わっていた。
同じ努力をしてきたはずなのに、結果は違う。
……知ってたけどさ。
(あーあ。現実ってやつだ)
焦りはある。
このままだと、置いていかれる。
でも、不思議と顔には出なかった。ただ、口を少し開けて、ぼんやり前を見ていただけだ。
剣を振り終えたあと、今度は魔法の基礎理論。
属性適性の話になったとき、教師が言った。
「水属性は、最も扱いやすいが、最も伸びにくい」
その言葉が、なぜか耳に残った。
まだ何も始まっていない。
でも――何かが、噛み合っていない気がした。
同じ場所に立っているはずなのに。
同じ道を進んでいるはずなのに。
僕だけ、別の現実を見ている気がした。




