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16

剣術大会は、終わった。


優勝者は――

剣聖のレイン・グランハルト。


決勝戦は、正直言ってレベルが違った。

剣の振り一つで空気が裂け、踏み込み一つで間合いが消える。


そして何より――


「きゃー!」「レイン様ー!!」


女子の歓声が、うるさい。


(……うっざ)


教室の自分の席に座りながら、僕はそんなことを考えていた。

同じ「レイン」でも、片や剣聖、片や平民。

名前が被ってるのも、なんだか腹立たしい。

ちなみに僕は、2回戦目にミレイユ・アストリアとかいうバケモノに当たってあっさり負けました。


そんな時だ。


「なあ聞いた?

あいつ、裏でコソコソやってただけらしいぜ」


「正面からなら何もできねぇ。

逃げと運だけの雑魚だろ」


わざとだ。

はっきり分かるくらい、わざと聞こえる声量。


声の主は、ガルドの取り巻き連中。

あの不良グループの、いつもの顔ぶれだった。


(……ああ、そうだ)


僕は、闘技場での光景を思い出す。

油と水、火魔法を封じた瞬間。

相手の顔が、恐怖で歪んだあの表情。


そこへ――


「平民のくせに、いい気になるなよ」


ぴしっ、と。

頭の中で何かが切れた。


気づいたら、僕はそっちを睨み返していた。


無言で。

感情を隠す気もなく。


するとどうだろう。


「……っ」


「や、やめとこうぜ」


さっきまで余裕ぶっていた取り巻きたちは、

僕の視線に気圧されたのか、露骨に目を逸らし、そそくさと離れていった。


(……逃げるんだ)


どうやら、

僕が敵意を向けるなんて、想定外だったらしい。


少しだけ、胸の奥がスッとした。


――そして放課後。


学園から帰るため、校舎を出ようとした、その時。


「おい」


背後から、低い声がかかる。


振り向かなくても分かった。

この声は――


「校舎裏、来い」


ガルドと、その取り巻きたちが立っていた。


逃げ道を塞ぐように。

数は、四人。


(……なるほど。ここで来たか)


僕は小さく息を吐く。


考えるまでもない。

これは、話し合いじゃない。


校舎の影が、やけに長く伸びていた。

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