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剣術大会は、終わった。
優勝者は――
剣聖のレイン・グランハルト。
決勝戦は、正直言ってレベルが違った。
剣の振り一つで空気が裂け、踏み込み一つで間合いが消える。
そして何より――
「きゃー!」「レイン様ー!!」
女子の歓声が、うるさい。
(……うっざ)
教室の自分の席に座りながら、僕はそんなことを考えていた。
同じ「レイン」でも、片や剣聖、片や平民。
名前が被ってるのも、なんだか腹立たしい。
ちなみに僕は、2回戦目にミレイユ・アストリアとかいうバケモノに当たってあっさり負けました。
そんな時だ。
「なあ聞いた?
あいつ、裏でコソコソやってただけらしいぜ」
「正面からなら何もできねぇ。
逃げと運だけの雑魚だろ」
わざとだ。
はっきり分かるくらい、わざと聞こえる声量。
声の主は、ガルドの取り巻き連中。
あの不良グループの、いつもの顔ぶれだった。
(……ああ、そうだ)
僕は、闘技場での光景を思い出す。
油と水、火魔法を封じた瞬間。
相手の顔が、恐怖で歪んだあの表情。
そこへ――
「平民のくせに、いい気になるなよ」
ぴしっ、と。
頭の中で何かが切れた。
気づいたら、僕はそっちを睨み返していた。
無言で。
感情を隠す気もなく。
するとどうだろう。
「……っ」
「や、やめとこうぜ」
さっきまで余裕ぶっていた取り巻きたちは、
僕の視線に気圧されたのか、露骨に目を逸らし、そそくさと離れていった。
(……逃げるんだ)
どうやら、
僕が敵意を向けるなんて、想定外だったらしい。
少しだけ、胸の奥がスッとした。
――そして放課後。
学園から帰るため、校舎を出ようとした、その時。
「おい」
背後から、低い声がかかる。
振り向かなくても分かった。
この声は――
「校舎裏、来い」
ガルドと、その取り巻きたちが立っていた。
逃げ道を塞ぐように。
数は、四人。
(……なるほど。ここで来たか)
僕は小さく息を吐く。
考えるまでもない。
これは、話し合いじゃない。
校舎の影が、やけに長く伸びていた。




