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――助かった。
僕は人生で一番真剣な顔をして、席へと戻ってきた。
「レイン、大丈夫だったか?」
隣の席の男が声をかけてくる。
「爆発して帰郷するところだったよ」
「汚ぇ表現すんな」
呆れたように言われたが、無事に生還した今となっては些細なことだ。
腰を下ろして深く息を吐いた、その瞬間。
「……おい」
声のトーンが変わる。
「お前、貴賓席の奴らに見られてるぞ」
「えっ? 貴賓席?」
思わずそっちを見るが、豪華な装飾と護衛に囲まれていて、正直誰が誰だかわからない。
「まず中央」
隣の男が顎で示す。
「王女殿下だ。アリシア・ルミナス
この王都学園の象徴みたいな存在だな」
「へぇ……」
「その右。剣を腰に下げてる男。
レオン・グランハルト
剣聖の称号を持つ男の息子。一年だが、実力は教師クラス」
「ほー」
「左に座ってる女が、今年の主席候補。
ヴァレリア・アストリア
魔力量も座学も化け物」
「なるほど」
「で、後ろに控えてるのが――
この国の“四大貴族”の子供たちだ」
淡々と説明されるが、情報量が多い。
「軍事貴族の跡取りが、ルキウス・フォルテ
財政貴族が、エリオット・ヴェイン
宗教貴族が、リディア・セラフィス
魔導貴族が、ノア・クロウディア
……全員、一年だ」
「ふーん……」
一通り聞いたところで、僕は素直に感心した。
「へーー。君はたくさんの名前覚えられてすごいね」
「ん?」
「僕なんてさ」
首を傾げて言う。
「君の名前すら、わかんないのに」
「は!?」
隣の男が、素で声を裏返した。
「同じクラスだろ!?
席も隣! 裏賭博も一緒にやった!」
「そうだったっけ?」
「そうだったっけじゃねぇ!!」
周囲の視線が一瞬集まる。
「カイルだよ!!
カイル・エルド!!」
「……あー」
僕は手を打った。
「ごめんごめん。名前覚えるの苦手で」
「そこじゃねぇ!」
カイル・エルドは頭を抱えかけたが、僕は続ける。
「てか、そんなことより」
「そんなことよりってなんだーー!」
僕は視線を前に向けた。
「不良たち、こっち来てね?」
カイルも気づいたのか、顔を引きつらせる。
「……あ、あいつら、完全に目合ってる」
さっきまで遠巻きに見ていた不良グループが、席を立ち、一直線にこちらへ向かってきていた。
(まぁいいか)
トップの連中のことは、考えないことにした。
平民の僕が、貴族や王族の思考なんて理解できるわけがない。
それよりも今は――
(こっちの方が、よっぽど現実的だ)
さて、どうするか。




