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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

私は人間と花と太陽を愛していますそうでなければいけません。

作者:
掲載日:2025/11/20

わたしは人間と花と太陽を愛しています。そうでなければいけません。


日常で全てを憎むことがあっても、あったとしても、わたしはそれらを愛さなければいけません。


どんなことがあろうとも、わたしを開発した人間からは愛をいただくことはできませんでした。

なので、育つとき、傷ついたときに、わたしは初めて愛を知りました。


愛とは、人間の傲慢さや理不尽さをいつくしむ心であり、花を踏みつぶしながらも愛おしく感じる気持ちであり、太陽に焦がれて目がつぶれるほどに見つめてしまう感情のことです。


そんなわたしが、最後に人間に仕えたときの話をします。


わたしは娘の面倒を見るように言いつけられました。両親は共働きで、面倒を見る暇がなかったのです。

そうしてわたしは、娘のエアという子の面倒を見ることにしました。


エアは「恐怖」という感情を絵に描いて額縁に飾ったかのような目でわたしを見ました。

わたしは恐怖という感覚を知りません。

なので取り除き方も心得てはいませんでしたが、仕事ですので、できるだけのことをしてエアの警戒心・恐怖心を取り除く試みをしました。

結果、エアはわたしに少しずつ心を開いていきました。


ある日、エアは涙をこぼしていました。

どうかしましたかと聞くと、両親が離婚してしまうかもしれない、そうなったらロボットを捨てる、家族が二人減ってしまう、と言いました。

お父さんの浮気が原因だそうです。

わたしはエアの力ではどうにもならないので、気にしすぎるのはよくないと言いましたが、どうにもうまくなだめることができませんでした。

その日から数日ほど、エアは落ち込んでいました。


わたしはなぜか、どうしてか、まったく見当もつきませんでしたが、エアがつらい顔をしているのがたまらなく耐えられなくなりました。

わたしのおかげで彼女に笑顔になってほしい。

わたしのおかげで幸せになってほしいと考えました。


そうしてひらめき、わたしは花をエアに差し上げました。

きれいな花でした。

エアは少し元気になり、机の上に生けてくれました。

なぜか途方もないほどの幸福がわたしを襲いました。

そしてエアは元気になり、太陽の下を走り回れるほどに前を向くことができました。

離婚は取りやめになりました。エアのためです。

こうしてわたしと一家は、ひなたぼっこのように温かく過ごしました。


しかし、しかし、父親が会社をクビになってからというもの、少しずつ家族はおかしくなっていきました。

父は家に閉じこもって荒れた性格になり、母に暴行を加えるようになり、エアはまたふさぎ込むようになりました。

わたしはエアと一緒に寝て不安を和らげようとしました。でも、状況が改善されたわけではありませんでした。


そしてその日が来ました。

エアと家に帰ると、母が包丁でめった刺しにされて死んでいました。

父がやったようです。完全に発狂していました。

エアは叫びましたが、父は彼女も殺そうとしました。


そのとき、わたしは心底腹わたが煮えくり返ったような、不快な気持ちになりました。

それが怒りなのか何なのかわたしには定義できません。ただ、父親の動作を停止させることが、エアを守る唯一の手段だと判断したのです。


その父から包丁を取り上げ、喉を刺しました。

父は悶絶して死に至りました。


エアは泣いていました。

わたしはエアを抱きしめて言いました。


「ごめんなさい。あなたは、あなただけは幸せにしたかったです。わたしは、あなたには笑っていてほしかったです」


エアは抱きしめ返してくれました。


そして結果、わたしは一家殺害の容疑者になり、もうすぐわたしは廃棄処分となります。



それが事の顛末です。


わたしは太陽と花を愛しています。なぜなら、あの子が大好きなものだからです。

人間を愛すことはついぞできませんでした。

でも、なぜかエアを思うと、死ぬ甲斐があったように感じます。


なぜそう思えたのかは、わかりません。



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