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愛するもののために②

 一方、迫る鳥たちに向け銃弾を放って応戦するレフテリス麾下の兵たちだが、銃撃の中、怪鳥の群れは少しずつ迫っていた。


 そして、耳を潰すその声を上げようとしたとき、はっとしたアレコスが声を上げた。

「風の魔法だ! 音は空気の振動だ! 風の魔法で奴らの声を減衰できないか!?」

 キモンはじめ、バトルメイジや魔法を使える聖戦士達が互いに顔を見合わせた後、風の呪文を唱え始めた。


 たちまち風が吹きすさんだ。砂塵が乱れ飛び、目を開けるのも難しいほどになるが、直後に放たれた怪鳥たちの奇声は遠く聞こえる。

(だがアレコス、この風では兵たちの銃弾も狂うぞ!)

 レフテリスの念話がアレコスに届く。

(俺のエーテルガンなら問題ない!)

 アレコスは背負っていたエーテルガンを取り出し、二つに折っていたそれを伸ばす。

 


 テオが遠くから、赤い光の線が走るのを見た。それは消えては走り、消えては走り、風で体勢を崩した怪鳥たちを次々に撃ち抜く。


 それを見ていたギデオンは、傍らに置いた大銃を手に取り、凶悪な笑みを浮かべた。

「俺も暴れたくなったぜ。久々に火が着いちまった」

 その大きな銃を腰だめに構えて空に向け、今まさに口を開けて迫りくる怪鳥に向けて撃ち放った。


 小さな銃口から連射される弾は、耳を潰そうと奇声を上げる鳥たちを次々に打ち落とす。


「さえずってみろ鳥ども! この距離じゃ意味はねえだろうがよ! 俺の耳もてめえらの爆弾のおかげでつんぼ寸前だぜ!」

 狂戦士の風で、ギデオンは吠えた。


「曹長ギデオン、あの鳥よりもうるさいです」

 テティスも身をかがめ、耳を押さえながらやってきた。

「へレイン卿、毒の煙はあらかた吹き飛ばしましたが……」

 ギデオンに向けて露骨に眉をひそめていたテティスだが、リディアを目にするとはっと目を見開き、へレインを助けてリディアを仰向けに横たえる。


 テティスがリディアの装備を外し、へレインは右手の指輪を光らせ、戦士服の上からリディアの体に触れていく。

 へレインはわずかに息を抜き、

「死ぬほどじゃないわ、安心なさい。伏せてたおかげか、毒も大した影響はない」

 そう言って立ち上がり、へレインは、テオの頬にも指輪の光る手で触れる。

「あなたも、毒の影響は大丈夫そうね」

 それから、テオに厳しい目を向ける。

「あなたは逃げなさい。ここからは私たちの仕事よ」

 テオはリディアに目をやる。彼女は薄く笑った。


 テオは巨人を見上げた。砲撃や魔法を受け、うめき声のようなものを上げながら、その歩みを止めていた。

『おやおや、加勢が必要かね』

 またしても魔女の声が響く。

『鳥たちや、最後の爆弾、くれてやりな』

 上空の黒雲から、怪鳥たちが舞い降りる。


 巨人に向けられた火の玉の一部が、直上に現れたそれに向けられた。それは火の尾を引いて何匹かの怪鳥に直撃するが、打ち落とされる怪鳥たちも、火の玉を受ける前に爆弾をばら撒いた。その爆弾の全てに、赤い布が巻かれていた。


 火の弾幕を抜けた怪鳥たちが、ルデリアに張られた不可視の障壁にぶつかり、爆発した。

 立て続けに起きた爆撃を受け、障壁は虹色の光を放ちながら大きく波打って乱れ、送れてやってきた燃え落ちる怪鳥の死体と、それがばらまいた爆弾を神殿地区へと素通りさせてしまった。

 その爆音と地響きは、テオ達の元にまで響いた。


 巨人を遮る弾幕は止まった。巨人は歩を進めてゆく。

 テオはその巨人を見る。黒煙の中、その首ががゆっくりと回り、そして止まる。


(見つけた)

 ぞっとするような声が、テオの心に響いた。


 その視線の向かう先が、テオの脳裏にイメージとして走る。

(殿下、セレネ……!)


 テオはフォルスに向けて駆けだした。

「テオ!?」

 声をかけるへレインに、

「リディアを頼みます!」

 駆けたままそう返した。


「フォルス……」

 倒れるフォルスの眼を覗き込む。その目の光は弱くなりつつも、確かにテオを見ている。

 それからテオは、フォルスの体の下から、自分の弓と矢、そして剣を取り外した。


(テオ)

 女性の声が聞こえた気がした。はっと頭を巡らすと、その目に、特異なものが映った。

 霧とともに現れ、霧とともに消える、謎多き城、「島船」。青灰の湖の上に佇んでいた。


 その手前、湖畔を望む崖の側に、ルーン神殿にあったものと同じグライダーがあった。テオは知らないが、この神殿の神官長が脱出のために用意したものだ。それは、奇跡のように綺麗に残った芝生の上に置かれていた。


 テオはそのグライダーに向けて駆けた。

「テオ、何をするつもり!?」

 リディアが起き上がろうとするが、痛みにうめき、テティスに抑えられた。

 テオは駆けながら答える。

「エウメロスが殿下を見つけた! 足止めをしなきゃ!」

「それはあんたがやることじゃないでしょ!」

「タロッソスでもエウメロスは俺に反応した!」

 言い終えた時には、テオは祖父の弓と両親の剣を背負い、グライダーの下に潜り込んだ。骨組みに、自身の身体をくくりつける。

「待って! お願い、やめてテオ!!」

 リディアが再び叫んだその時には、テオはグライダーとともに崖から飛び立った。


 ギデオンは最期の怪鳥を打ち落としたところで銃を止め、舌打ちする。

「アレコス!」

 その言葉に応えてアレコスとキモンが瓦礫を超えて姿を見せたとき、テオは彼らの頭上を飛んで、巨人に向かっていった。


「テオ!」

 アレコスの呼びかけにもテオは答えず、その目は真っすぐに巨人に向けられていた。

「俺たちは行く、お前らはお嬢を頼む!」

 ギデオンは煙吹く銃を腰だめにしたまま、森へと駆けていった。



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