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2-3 (リュミエール視点)

「セレーネ、良い名前だね、でもどうしてここに?」


「帝国から、ルナルール国へ行く所です」


やはりと思いながらも聞く。


「何をしに行くつもりだい?」


「えっと、ルナルール国へ観光へ」


そう聞いて、改めて彼女を見る、

服装は平民の物だが、上質な物だ、

毛布も温度調整機能が付いている高級品だろう。


裕福な平民なら、馬車ぐらい使えそうだが・・・


近衛兵も、どこか警戒しているようだ。


そこにメイジウルフが現れる。


しかも10頭以上の群れだ。


近衛兵達が剣を構える。


近衛兵は2人しかいないとは言え、王太子付きになる程の

エリート、メイジウルフでも倒してしまえるだろう。


しかし、最下位のDランクのウルフとは違い、

魔法も使ってくるメイジウルフはCランク、

本来ならこんな開けた場所に出て来るモンスターではなく、

冒険者1人なら苦戦するレベルだ。


しかし、セレーネと言う女性は平然として、

まったく焦っている風ではない、


眠たそうに髪をかき上げ、ウルフの群れを見て、

収納ブレスレットから鞭を出して構える。


どうやら鞭使いのようだった、

しかも、かなり高レベルの鞭に見える、

知らないだけで、名の知れた冒険者なのだろうか?


近衛兵達がメイジウルフと戦闘を開始する。

セレーネは動かず、どうした?と思っていると、

自分の前に立っていて、自分を庇っているのだと気づいた。


今まで、女性を盾にした事などないのだけど・・・


いざとなれば、セレーネを守るつもりで、

魔法がすぐ発動できるよう気を引き締める。


近衛兵達はメイジウルフ、ウルフをどんどん倒していく、

そんな時、急にワーボア(イノシシ型のモンスター)

が突撃してきた。


あまりの咄嗟の登場に、近衛兵の1人が飛ばされる。


それを見たセレーネは初めて鞭を振るい、

ワーボアを仕留め、残ったウルフを倒していく、


強い!


無駄のない動き、一撃で確実に仕留める腕、

それは鮮やかとしか言いようかなかった。


モンスターを全て倒し終わった事を確認して、

近衛兵2人と、自分、セレーネと顔を見合わせる。


「強いんだね」


笑顔でセレーネを褒めると、赤くなってもじもじしていた、

褒められ慣れてないのだろうか?

そんな姿にもキュンとくる。


近衛兵も礼を言ってほのぼのとした空気が流れた、

ちなみに倒したモンスターはセレーネが収納ブレスレット

に収納した、メイジウルフなら、そこそこの値になるだろう。


「怪我してますね」


ワーボアに激突され、脇腹を抑えている近衛騎士に

セレーネが話かける。


『ヒール』


その呪文で光が広がり、近衛騎士が驚いた顔をする。


「聖女様?ありがとうございます!」


「まだ、聖女ではありませんけど」


回復魔法の使い手だったのか!確かに聖女に認められるには、

大教会に行って、司祭の認定を受ける必要がある、


しかし、今使った回復魔法でも、相当な腕だと分かり、

聖女に認定されるのは間違いないだろう。


つまり・・・聖女になる・・・・王妃に?


目の前の美しい女性が、自分の妻になるかもしれない・・・


そう考えがつながると、胸がどきどきしてきた。

話しかける言葉もどこかギクシャクする。


ああ、こんな時こそかっこよく決めたいのに情けない。


そんな自分など、近衛騎士はお見通しだったのだろう、

一緒に馬車で国に戻るよう提案してくる。


密室に二人っきり?


心臓が持つか心配だったが、このチャンスを逃す訳にはいかない。


「どうぞ・・・」


声が上ずっているのを感じる。


「しかし、私は平民ですので、貴族様とご一緒する訳には

 まいりません」


そうか、本名リュミエールではなく、愛称のリュカと

名乗った事で、王太子だと気づいてないのか、

貴族と言うだけで、恐縮しているんだ、

王太子だと今名乗るのは得策ではない・・・

あくまで、人の好い貴族の振りをして・・・


ルナルール国では、聖女は貴族の妻になる事がほとんどで、

大切な存在だと説得して、何とか馬車に同乗する事になった。


目の前に、セレーネがいると思うだけで、

幸せな気持ちになる。


ああ、ひょっとしなくても、一目惚れかな?

しかも、結婚条件を満たしているなんて、運命じゃないか?


馬車の中で、雨だと聖水の効力がどの程度か分からないから、

不安だったろうと話すと、きょとんとしていた。

聖水は弱いモンスターを近寄らせないアイテムで、

眠る時には必需品である。

そんな子供でも知っている事を、きょとんとして聞いている。

なんだか不思議な女性だ・・・


途中眠そうにしていたので眠る事を勧める。


最初は恐縮していたが、眠気には勝てなかったのだろう、

うつらうつらしてきたので、椅子に横にさせた。


ああ、可愛い。


可愛いだけでなく、強くて、しかも回復魔法の使い手・・・


眠る彼女を見つめ、幸せな気持ちに浸っていた。

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