エピローグ
「本当に綺麗!」
今日はエリーゼの結婚式の為に5か月ぶりに帝国に
来ている。
「一番にセレーネに見せたくて」
「ふふふ、皇太子様に嫉妬されちゃうわね」
「あら、とっくにライバル認定されているわよ」
「ライバル?」
豪華絢爛な王宮の一室で、
女二人の笑い声が響く。
「やっぱりマーメイドラインで正解ね」
エリーゼから、ドレスのデザインの手紙の鳥がやってきて、
いくつかの候補の中から、最終的でデザインを選んだのは、
私だった。
エリーゼ曰く、『もう私の好みの物だけに絞ってあるし、
後は長く帝国の貴族社会にいて、流行とかも詳しかった
セレーネに決めてもらうのが間違いないかと思って』
との事だった。
重大な事を任されて、本当に私でいいのかと思ったが、
予想以上に着こなしてくれている姿に、
本当に良かったと思う。
「セレーネの言った通りだったわ」
「何が?」
「貴族の女性を集めてお茶会をしたの、
その時、私の作ったブレンドティーを、
私自ら淹れたの。
あの時の驚いた貴族女性の顔、忘れられないわ。
それをきっかけで”紅茶が好きな皇太子妃”として、
今までよりずっと親しみを持ってもらえるようになったの」
一番の懸念だった、貴族女性とも、
これで上手くやっていけそうとほっとする。
「本当に良かった」
「セレーネ、貴女のおかげよ、ここまでこれたのは」
「私は何もしてないわよ」
「あら、私を無人の部屋に夜閉じ込めたじゃない、
まあ、そのおかげで助けに来てくれた皇太子様と、
運命の出会いができた訳だし」
もう消してしまいたい、悪役令嬢としての黒歴史を、
笑顔でいわれ、戸惑ってしまう。
「あ・・・あれは・・・・」
「ふふふ、分かってる、ゲームのシナリオ通りだもの」
楽しそうにしているエリーゼに困惑する。
「最初はゲーム通りだったけど、今はそうじゃない、
ゲームでは追放されて、こうして会う事もなかった
はずだけど、今では親友よ」
親友と言う言葉にじんとくる。
「それと・・・気づいていた?
私達がプレイしたゲーム、
皇太子と恋人同士になりました、で終了してて、
結婚式や皇太子妃になるシーンがないの」
「私、皇太子ルートは攻略できなかったら・・・」
「私、ずっと怖かった、リオの一時の気の迷いで、
私消されてしまうんじゃないかって」
「エリーゼ」
そんな事はないと言いたかったが、
あのゲームならありえそうと思ってしまったので、
黙るしかなかった。
「もう攻略方法も分からない、貴族は敵ばかりだし、
国王夫妻にも平民と見下げられている事は分かっている」
何も言えないでエリーゼの言葉を待つ。
「でも、セレーネがいてくれた、
弱みを見せられ、甘えて、頼ってもいい人が」
そう言ってくれてじんとくる。
「ありがとうセレーネ、
今ここにいられるのは、セレーネのおかげよ」
涙目になったエリーゼを見て言う。
「もう、泣いちゃ駄目よ、せっかく綺麗なメイクなんだから」
「セレーネの方が泣きそうよ」
「私はいいのよ、式で号泣の予定だから」
「本当にありがとう」
「幸せになって、お腹の赤ちゃんと一緒に」
「ええ」
侍女の1人が部屋へ入ってくる
「皇太子妃様、式の準備が整いました」
「わかったわ」
今まで抱えていた不安を全部言ってしまえて、
心からほっとしたエリーゼを見て嬉しくなる。
これからもいろいろあるかもしれない、
でも、親友として、エリーゼをずっと支えていこうと思う。
「結婚おめでとう!」
ブーケを高く挙げて、
花嫁は部屋を後にした。




