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目をぎゅっとつむって、手を握りしめた時、
魔獣の姿が脳裏に浮かんだ。
そういえば魔獣って、ティラノサウルスみたいな姿をしていた。
ティラノサウルスは確か尻尾でバランスを取っていたはず、
なら、この魔獣も尻尾を封じてしまったら、
バランスを崩すのでは?
思いつきだが、試す価値がある!
「リュミエール様を呼んで下さい!」
私の言葉に、控えていた騎士が、
リュミエール様を呼びに行ってくれる。
その間遠目に魔獣の姿を見、尻尾が動き、
バランスを取っている事を確信した。
「セレーネ、どうしたんだ」
リュカ様が心配そうに聞いてくれる。
「尻尾です」
「尻尾?」
「はい、魔獣は尻尾でバランスを取っています。
氷魔法で尻尾を凍らせ、足を攻撃し、転ばせれば、
少なくとも火魔法攻撃はできません。
起き上がるまで、チャンスが生まれるかも!」
リュカ様は
「分かった」
と言って、私の頭にポンと手を置いて、
騎士達の所へ向かって行った。
私は遠くで見ている事しかできない。
祈るつもりで見ていると、
リュカ様達が、魔獣の尻尾に集中的に氷魔法をかけている。
予想通り、尻尾を凍らせられて、
バランスを崩して、ズドンと大きな音を立てて魔獣が倒れ込む。
「今だ!」
騎士達が一斉に攻撃をしかけ動きを更に封じ、
リュカ様が心臓の部分に剣を突き刺す。
「これで終わりだ!!!」
あれほど剣を通さなかった魔獣だが、
聖剣だけはやすやすと魔獣の鱗を破り、
深く心臓まで剣が突き刺さる。
ぐおおおおおおお・・・・
魔獣の断末魔が大きく響いた。
「やったぞ!」
と言うリュカ様の声が響き、
同時に騎士達の雄たけびが上がった。




