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聖具の5つめは剣。
北の山奥にある廃鉱山だ。
盗賊のアジトとは対照的に、
1人で攻略するのではなく、大人数で攻略してもよい事になっている。
なので、一緒に行く人をリュカ様に任せると、
5・6人のパーティかなと思っていたのに、
30人からなる一軍が組まれてかなり驚いた。
本当はそれなりに大変な攻略のはずなのに、
あっさりと廃鉱山まで辿りついてしまった。
むしろ「夕飯のおかずがやってきた!」
「嫁の誕生日プレゼントを買うのに、
モンスターを譲ってくれ」などむしろ余裕すらある。
さらに、料理も軍の人が用意してくれて、
宿も各地の領主の家がメイン、
野営になっても、豪華なテントなど全て準備される。
「本当にいいのかしら?」
「どうされたのですか?」
軍の1人が声をかけてくれる。
「何かお困りごとがあれば、なんでもおっしゃって下さい」
「そうねえ、むしろ困りごとがない事が困りごとかしら?」
「どうゆう事ですか?」
「快適すぎるのよね~」
軍の人はあははと笑う。
「そうおっしゃって頂けたなら、我々がいた価値があるというもの」
「でも、リュカ様ならまだしも私までだと申し訳ないわ」
「何をおっしゃるのですか、セレーネ様は大切な方です」
「大切って、ただの冒険ギルドの回復屋よ?」
「しかし、リュカ様とご結婚されるんですよね?」
この言葉は私は心底驚く。
「ええええ?まさか!あ、ガルガンティア山脈のふもとの村では
私とリュカ様が婚約者とか誤解されてたけど、
それがまだ解消されてないとか?」
「え?だってレアルドの泉でデートされたり・・・」
「あれは聖具を取るお手伝いをしてもらっただけよ!」
今度は軍の人が心底驚いているようだった。
でも・・・まさか・・・などぶつぶつ言っている。
「リュカ様に好きって言われた事もないし、
そもそも、この国の王妃教育も受けてないし、ないない」
「分かりました、私からはこれ以上何もいいません、
しかし、少なくとも、私はセレーネ様は命をかけて、
お守りするに値する方だと思っております」
「まあ、ありがとう」
そう笑顔で言いながら、話を終えた。
冒険者ギルドから派遣された冒険者がモンスターを狩り、
軍の人もモンスターを討伐してくれる。
ポイズンバッド(蝙蝠型)とキラーピオン(蠍型)が
うようよ出て来る中、本来なら数に苦戦する所、
あっさりとばっさばっさと退治されていく。
私の鞭、出番ないわね・・・
うっかりの毒を浴びた人など、治療に専念し、
どんどん廃鉱山の奥に進む。
廃鉱山には大きな道ができており、
3人が並んで進んでも余裕がある。
所々に松明を置く場所もあり、
真っ暗な廃鉱山は、その明かりにより思ったより明るかった。
「こちらはどちらに?」
廃鉱山の中は迷路のようになっている、
いくつもの分岐点があるが、エリーゼからもらった攻略を元に、
最短ルートを突き進んでいく。
どこまで奥にいかないと分からないと不安になるが、
この攻略情報のおかげで、心理的にも負担は少ない。
「次は右へ行ってください」
私の指示で、軍は進んでいく。
そして、いくつかの分岐点を過ぎた時、
ぽっかりと広い空間に出た。
そして、その奥に白くて大きな狼がいる。
「この狼が言っていた、聖剣の使者だね」
リュカ様の言葉に頷く。
「はい、ここからはリュカ様、1人の攻略になります」
エリーゼからの攻略情報は、
その国の王太子が勇気を示せば聖剣が手に入ると書いてあった。
恐らく、この狼とリュカ様が一対一で戦う事になるのだろう。
私と軍の人は入口付近で待機し、
リュカ様だけが狼の元に向かう。
「貴方が聖剣の使者だね」
リュカ様が白い狼に向かって言う。
「聖剣を手にしたければ、勇気を示せ」
白い狼の言葉に、やはりと思う。
モンスターは人の言葉をしゃべらない、
冒険者ギルドのモンスター図鑑にも白い狼は載ってないし、
エリーゼからの情報とも一致する。
聖剣の使者で間違いないだろう。
リュカ様が剣をかざし、白い狼と向き合った。




