7-1 プロポーズ
エルフの村から王都に戻り、
また回復屋を再開しようと冒険者ギルドを訪れると、
予定より2日帰るのが遅くなっただけなのに、
無事で良かったと、皆に言われてしまった。
本当に心配かけていたのだなと思う。
リュカ様には、リカルドから鳥魔法の手紙が届ていたようで、
いろいろびっくりされたが、帰りを喜んでくれた。
盗賊のアジトで、金銀財宝を手にしたが、
その中にはもちろんお金もある。
収納ブレスレットには、今まで見た事もない桁が並び、
もう一生を5回程、遊んで暮らせそうなお金がある。
ただ、今まで本当にお金のないぎりぎりの生活をしていたので、
貧乏性が染みついている。
いきなり大金を使うのは怖くて、
今後本当に必要な時のみに使おうと思っている。
なので、今まで通りアパートに住んでいる。
唯一。思い切って大金をはたいたのが・・・
「あの本下さい!」
ここは以前訪れたドワーフの店。
そう500万リラもする『調合の書』を手に入れに来たのだ。
「ああ、また来たのか」
ドワーフの店員は相変わらず素っ気ない。
また商品をどけて出してくれるのかなと思っていると、
店の奥へと引っ込んでしまった。
もしかして、もう売れてしまったのかしら?
心臓がどくどく言う。
「ほれ、これだろう」
心配はよそに、ドワーフの店員が、
『調合の書』を手に店に出てきてくれた。
心底ほっとする。
「それです!」
「多分、また来ると思ってな、取っておいたんだよ」
「ありがとうございます!」
ドワーフの店員が保管してくれていて、
無事購入できてほっとする。
「ありがとうございました」
「礼を言うのはこちらだな、
買ってくれてありがとう」
ニッと笑うドワーフの店員を見る。
恐らく笑顔を見せてくれたのだろうけど、
全然可愛くない・・・
でも、その気持ちが嬉しくて、笑顔で店を後にした。
いつもの公園に行って、ベンチに座る、
座り次第、リュカ様が切り出した。
「王太子だと言う事を黙っていてごめん、
まさかこんな形で伝わるとは思ってもいなかったんだ」
リカルドからの手紙に報告があったのだろう、
いきなりリュカ様から謝られた。
「旅行前に気づいていたので、気にしないでください」
「そうか・・・」
「次は、レアルドの泉ですね!」
「また出かけるのか?」
「はい!」
「レアルドの泉が・・・俺も行っていいか?」
少し気弱わげに聞くリュカ様に応える。
「はい、では一緒に行きましょう!」
「いつ行くんだい?」
「本当はすぐにでも行きたいのですが、
回復を待っている人がいたり、
回復薬の予約も入っているので、3週間程後ですね」
「また、日が決まったら教えて欲しい」
「こちらの都合で大丈夫なのですか?」
「式典や来賓などなければ大丈夫、
多分今月なら調整がきくよ、
すぐ出れるよう、仕事を早めに片づけておく」
「ありがとうございます」
そう言って、後は細かい日程や時間の調整を取り、
レアルドの泉に行く日が決まった。
レアルドの泉に到着、
綺麗に澄んだ水に、木々が風に揺れ、
心が洗われる気がしてくる。
私は質素に、ひっそりと訪れるつもりだったが、
リュカ様も一緒という事で、
王宮の馬車に乗り、食事などが用意された馬車も付くという、
リッチな旅行となってしまった。
泉につくなり、王宮の侍女たちが、昼食の用意をし、
王宮の料理人の料理が、ずらりと並べられていく。
もちろん、下にはカーペットのような物が敷かれ、
こんな上等なカーペットが汚れて、本当に大丈夫が、
少し心配になってしまう程だ。
「さあ、食べよう」
この状況を当たり前に受け入れているリュカ様とは
対照的に、恐る恐ると言った風にカーペットに座り、
食事に手を伸ばす。
一口口に含んで。
「美味しい!」
さすが、王宮の料理人。
街の屋台の料理とは味が少し違う。
屋台はガツンとした味付けで、
いろんな物を誤魔化している感じだが、
王宮の料理は、素材の味を最大限に引き出し、
シンプルで繊細ながらも、
深い味わいがあるという所か。
レアルドの泉は有名な観光名所なので、
もっと人で賑わっているかとおもったのだが、
私達以外には誰もいないので不思議だった。
食事の提供をしてくれている侍女に、
「今日は人が少ないんですね」
と何気なく言うと。
「王宮からの命令で貸し切りにしております」
と言われて、いいのかしら?と驚いた。
「護衛の負担も減りますので」
と言われ、一緒にいるのが王太子様だと改めて思い、
命を守るのが当然なのだが、それを改めて実感した。




