6-3
エルフの村に入ると、巨木の幹に馬車は停車した。
「貴女の望みは『聖女の杖』なのでしょう?」
「はいそうです」
「ではこのまま奥にお進み下さい」
「あの、長老に挨拶をしなくていいのですか?」
「エルフはあまり人と関わらないものなので」
困った顔で言われ、案内してくれたエルフが、
むしろ特殊だった事が分かる。
「今、夜の11時です、このダンジョンにいらるのは、
夜中の3時まで、それからは強制的に王都に帰ってもらいます」
この事は、手紙の返事でもあったので、頷く。
つまり、チャンスは一度だけ。
「分かりました、ありがとうございます」
そう言って、木の幹の奥に進む。
木の中はジャングルのようで、蔦が絡まり、
歩きにくいうえ、上り坂で体力が奪われる。
時々モンスターも現れるが、
周りの木々にさいぎられ、思うように鞭も使えない。
「このモンスターにはこの笛と」
そう言って、思いっきり笛を吹く。
すると猿のようなモンスターは慌てて去っていった。
ここで試されるのは、攻撃の腕ではなく、
各モンスターに対応できる知恵。
聖水だけでは対応しきれないモンスターが、
このダンジョンでは現れるのだ。
とにかく頭をフル回転させて、
いろんな種類のモンスターに対応していく。
ここで役立つのがエリーゼからの対策メモ。
「あ、この蜘蛛にはリーナの木で糸を取ると・・・」
私が全て対策を暗記できるはずもなく、
エリーゼからの対策メモを片手に進んでいく。
それにしても、これだけのモンスターの対策を、
全て暗記しているエリーゼ、恐るべし。
エリーゼの凄さに慄きながらも、最深部に到達する。
丸い広場のような所に、スライドさせて、
絵を完成させるパズルがある。
「これな~」
少しだけ、ぱちぱちといじって、すぐに諦めた。
エリーゼですら、制限時間ギリギリで、
やっと解いたというパズル、私の頭で解けるはずがない。
ちなみに、このパズルはランダムな配置の為、
対策メモもない。
ここはもう裏技を使うしかない!
私はごほんと咳をはらうと、
「まいごの~(著作権規制)」
と犬のおまわりさんを熱唱する。
すると私の歌声に合わせて、自動的にパズルが
ぱちぱちと動き、歌い終わった時にはパズルが解けていた。
そして。パズルの台がぱらぱらと音を立てて崩れ、
中から杖が現れる。
やった!『聖女の杖!』
魔力の消費は半分になって、
攻撃力は倍になるという、ヤバアイテム!
もちろん5つの聖具のうちの1つである。
「おめでとうございます」
杖を手にした喜びに浸っていると、
エルフの村まで案内してくれたエルフが、
どこから現れたのか立っていた、
「出口まで案内します」
そう言われて、笑顔で手をさしだされたので、
その手を取る。
すると、瞬きもする間もなく、巨木の幹の入り口にいた。
「ありがとうございます、不思議なエルフさん」
ここまできて、案内してくれたエルフが、
特殊以上のまったく別次元の存在である事に気づく。
しかし、それ以上聞く必要もないと思い、
笑顔を返すだけにした。
「王都までお送りします」
そうして、また蔦が絡まった馬車に乗り、
普通ではないエルフの話を延々と聞いたのだった。




