3-7
さっそく宿屋ギルドに戻り、アパートを借りる手続きをし、
鍵を借りる。
ちなみに最初に見たアパートはベッドのみだったが、
契約したアパートにはベッドとテーブルがついている、
11万するだけあって、壁が厚く、防音がしっかりしてるのはありがたい。
ちなみにお風呂やトイレはない。
お風呂は大聖堂のお風呂に行くので問題ないけどトイレは・・・と思っていると、
共同トイレはあるらしい。
最初は11万リラもするのにと思っていたが、
日本程下水が発達してなくて、流行病を防ぐ対策も兼ねての事らしいので。
そうゆう事情なら仕方ないかなと思った。
ひと段落して、机に向かう。
「そろそろエリーゼに連絡取らないと」
収納ブレスレットから、レターセットを取り出す、
電球などないし、ロウソクは高級品なので、
明るいうちに書いてしまいたい。
「えっと、無事着きました、大聖堂のお風呂最高です・・・と」
数行書いて、よしと蜜蠟で封をする。
この世界に郵便局はない、
帝国では従者がその家々まで配達していた。
平民の事はよく知らないが、手紙を書く文化はないように思う。
「さてと」
私は封をした手紙に語りかける。
「飛翔」
すると、手紙はぱちぱちと紙の音がして、
鳥の形になった。
これは、王族や、一部の高級貴族だけが使っている、
風魔法が使われたレターセット、
指定された場所に名前を書いて、
特別な印で封をすると、鳥の形になり、相手に届けてくれる。
「本当、魔法って便利ね」
窓をあけて、鳥を放す。
すると手紙の鳥は羽をはためかせ飛んでいった。
「ひとまず報告終わりっと」
さて、今日も大聖堂のお風呂に行こうかしら~
ハマりまくっているお風呂に、るんるんと向かったのだった。
そうして、冒険者ギルドで回復魔法をかけたり、
近くの草原へ行って、食料を確保したりして過ごしていた。
すると、3日後、窓をつつく音がして、
不思議に思って窓を開けると、
鳥が8羽ほど、一気に入ってきた。
「えっっ?え?何なに~?」
その鳥達が一列に床に並んでいるのを見て更に驚く、
鳥が・・・鳥が並んでる???
しばらくすると、その鳥達が、
レターセットの姿になったので、そこでやっと落ち着いた。
「なんだ・・・手紙の鳥・・・か」
へたへたと床に座り込む。
それにしても8羽・・・もとい8枚とは。
手紙の鳥には制限があって、
レターセット1枚につき、1羽である。
鳥が8羽来たと言う事は、8枚・・・多い!
そう思いながら、一番奥の物から読んでいく、
なかなか連絡がないので、凄く心配した事が書かれており、
申し訳なかったなと思う。
他には、覚えている限りのルナルール国の事が、
細かく記載されていて、その記憶力に驚かされる。
モンスター名ウルフしか覚えてなかった私とは凄い違い。
今のエリーゼの状況についても書かれている。
「グロキシニアの花がお似合いですわ」
と貴族の女性に言われ「ありがとうございます」
と答えたら笑われたと書かれてあった。
なぜ笑われたか分からなくて、侍女も平民出身で、
意味が分からないとの事だった。
あああ~苦労してるなぁと苦い気持ちになる。
グロキシニアの花は、”媚態”を意味している、
こうゆう嫌味については、ゲームには登場しないものね。
また、返し方も、知的に返す必要がある、
無礼者!と怒鳴り返すのでは、品性が問われる。
私は手紙を取り出し、返事を書いていく、
そこで花言葉の意味を書こうとして、
ハタと思い当たる。
貴族女性ならではの、こうゆうやり取りは沢山ある、
一つ一つ手紙でフォローするのは不可能。
皇太子が気軽に過ごせるようにと、
配慮した侍女だけでは対応できない、
貴族女性の味方が必要。
私はうーんと考える。
と言っても、私は元々人脈ゼロの人間、
しかも家とは縁を切られている・・・
しばらく悩み、1人だけ思い当たる人物がいた。
それは皇太子教育を担当してくれた、リリーナ伯爵夫人。
貴婦人中の貴婦人と言われた人物。
この方は、公爵令嬢だった私でも、遠慮なく指導した、
公平で公正な方・・・
私は手紙に、リリーナ伯爵夫人に指導を頼むよう、
エリーゼに伝え、
もう一枚、リリーナ伯爵夫人に、エリーゼを頼む手紙を書いた。