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24話 お弁当!

 入場してくる児童の列。そして開会式がはじまった。六年生の選手宣誓がはじまる。令央もあと二年もしたらあんな風にしっかりするのか、と竜治は感慨深くなった。


「それでは今年入った一年生のダンスでーす」


 アナウンスと共にこの間まで幼稚園生だった一年生のダンスが始まる。川瀬の子供はどこだろう。と見渡すと川瀬にそっくりな女の子を見つけて竜治は吹き出しそうになった。絶対あの子だ。


 その後も粛々と競技は進み、令央の大玉ころがしがはじまった。


「いっけー!」

「令央―!」


 親馬鹿とでもなんとでもいえばいい。竜治と蓮は令央しか見てない。二人は大声で声援を送った。そしてダンス。蓮がカメラで、竜治もスマホでその様子を撮影しまくる。

 そうしている間に昼食の時間がやってきた。ここでようやく令央が竜治と蓮の所にやってくる。


「パパ、見てた?」

「見てたよ、大玉ころがし途中惜しかったな」


 ペアの子が転んでしまったのだ。しかし、令央はさほど悔しそうな顔をしていない。


「うん、でも愛菜ちゃんに怪我がなくってよかった」


 う~ん、このタラシ加減は天然なのか……。いや、素直に優しい子だと喜ぶべきなのか。竜治は自問自答した。


「そうだな……。さ、お弁当にしよう」

「うん!」


 竜治は大きなタッパーを拡げた。一つ目はピンクのたらこチーズおにぎりに青のりの梅おにぎり。二つ目は唐揚げと卵焼きとウインナー。それにプチトマト、キュウリ、だいこんの簡単ピクルスをピックで刺したもの。もうひとつにはりんごとみかんとバナナなどのフルーツ達。


「おお~。映えてるじゃないっすか」

「おいしそー」

「ふっふっふ」


 竜治が六時起きで作った渾身の弁当メニューである。彩りと栄養バランスを考えて、令央の好きなものを詰め込んだ。


「いっただきまーす」


 まずは三人で大きな口を開けておにぎりに齧りついた。


「うん! たらことチーズ、合うっすね!」

「簡単だぞ。たらことご飯を混ぜて丸いチーズいれて握るだけだ」

「そっかー」


 蓮はふっと視線を落とした。そして困ったような顔をして微笑んでいる。


「どうした?」

「いや……。俺運動会も遠足もコンビニ弁当だったから……弁当の時間本当に嫌だったんですけど、楽しいもんなんすね」

「……この唐揚げも食え」


 竜治は蓮の口に唐揚げを押し込んだ。竜治の子供の頃はどうだったか。看護師で忙しい母もこういう時は一緒にいてくれた。手作りのいなり寿司が美味しかった記憶がある。


「卵焼きも」

「ちょっ、竜治さん。そんなにいっぺんに食えないって」

「パパ、僕も卵焼きっ!」


 令央も蓮に対抗心を燃やしたのか、卵焼きをもぐもぐと頬張っている。


「卵焼き甘いんですね」

「すっごく甘いだろ。焦がさないようにするのが大変なんだ。俺はちょっと甘すぎると思うんだけど」

「それって……」

「うちの死んだ奥さんの味付け。令央の好みなんだ」

「そうですか……」


 蓮は囓りかけの卵焼きを見ながらそう答えた。砂糖をたっぷり入れた卵焼きは田中家の思い出の味であった。


「じゃあ、俺も卵焼きはうんと甘くしなきゃな」

「……ん? なんか言ったか」

「なんでもないす」


 竜治の渾身の作の運動会弁当はあっという間に空になった。

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