表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/29

21話 手の鳴る方へ

「ひえっ……」

「どうした? 俺を探してたんじゃないのか?」


 ぱっと蓮から手を離したよっちん。竜治がさらに近づくと木村くんと二人で後ずさりする。


「おいおいおい……」

「竜さん! なんで居るの!?」


 蓮がアスファルトの地面から立ち上がりながら、竜治に問いかけた。


「そっちこそ。……で? こいつらの用事はなんなんだ?」

「わかんない。ただ竜さんに会わせろって行ってきて」

「ほお……」


 竜治はチンピラどもを睨めつけた。二人はそれに縮み上がったが、やがて木村くんが観念したように口を開いた。


「あんた……ちょっとついてきてくれないか」

「どこに?」

「俺の上……の人間があんたを呼んでる」

「ふーん」


 木村の上の人間……こいつらは窃盗をしている。見る限りよっちんは体格が良いだけで勢いだけだし、木村くんはどうやら頭が宜しくない。こいつらを使っている人間がいるって事か……。


「ついていく訳ねーだろ。行くぞ、蓮」

「そ、そんなぁ……」

「うるせぇ、ぼこんぞ」


 竜治が拳を振り上げると、二人はブンブンと首を振った。竜治はそんな彼らを鼻で笑って、蓮の腕を掴んで引き摺るようにその場を離れた。


「ちょっと……竜さん離して!」

「なんだよ、お前。バイトあるから帰ったんじゃないのか」

「いいから離してって」

「うるさい」


 竜治はあまりに抵抗してくる蓮にイラついた。


「なんだ? あいつらの所に戻るつもりか?」

「そうじゃなくて!!」


 蓮はでっかい声を出した。驚いた竜治が力を緩めた瞬間にぱっと腕を引き抜く。


「竜さん、服! どこやっちゃったの?」

「あ……」


 竜治は半裸のままコンビニから移動していた。蓮はふう、と息をついてパーカーを脱いで渡してくれた。これまた派手な蛍光ピンクだったが……このままマンションに戻る訳にもいかない。ありがたく受け取ることにした。


「やっべ……服……コンビニの横に置いてきた」

「なにやってんすか……」


 蓮はスマホでコンビニの番号を調べて電話してくれた。


「明日取りにいきますって言っときました。今戻ったらまだよっちん達居そうだし」

「そっか……すまん……」


 竜治は頭にきて冷静さを失っていた事を反省した。


「あの……ありがとうございます」

「ん?」

「怒ってくれたっしょ……」

「なんだよそんな事。当然だろ、お前は……」


 竜治はそう言いかけて次の言葉がつかえた。蓮は……蓮の自分の中でどういう立ち位置なのか。竜治がぐるぐる考えてると、蓮はにっと笑って竜治の背を叩いた。


「俺は弟分ですもんね!」

「え……あ、ああ……」


 竜治は蓮の言葉になんとか頷いた。


「あ……そうだ、お前明日バイト何時だ」

「十時からっす」

「そっか、じゃあ……もううちに泊まってけ。また外うろつくのはまずいと思う」

「いいんすか……?」

「ああ」


 自宅マンションに着くと、竜治は早速着替えて蓮にパーカーを返した。そして蓮に風呂に入ってくるように言って着替えのTシャツを貸した。


「さて……泊めると言ったが……」


 竜治はそこで動きを止めた。寝室のベッドは一つで客用布団はない。竜治は考えた末に冬用の厚い掛け布団を出して床に敷いた。


「ふー、おふろあざっす」


 そこに湯気をまとった蓮が現れた。


「あ、蓮。ベッド使ってくれ」

「え、竜さんは?」

「俺は床で寝る」

「泊めて貰って悪いですよ」

「でもお前明日バイトなんだろ。俺は休みだから。なっ、なっ」


 竜治は蓮をベッドに放り込んで、自分は冬用布団を寝袋のようにしてくるまった。


「……」

「……」


 竜治はコップの他に蓮用の布団も必要だったかな、と考えながら眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ