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第75話『レオ様のタクティクス!?』

 



 シロはふわりと白いワンピースを身に纏い、ラフィアハットを軽く傾け、柔らかな笑みを浮かべた。その華奢な姿はまるで絵画のようで、鋭い瞳が一瞬アオイを捉えると、すぐに西園寺へと移った。


「ごめんごめん! 表見くんは脚フェチの変態さんって話をしててさ!」


 西園寺が慌ててフォローするように笑うと、アオイの喉が思わず詰まった。


「ふぁっ!? なっ、何言――」


 抗議の言葉を口にしかけた瞬間、シロがすっとスカートをめくり上げた。白く艶やかな太ももが露わになり、アオイの視線は思わずそこに釘付けになる。滑らかな肌が光を反射し、まるで時間を止めるような美しさに、頭が真っ白になった。


「って……るんです……か」


 シロは悪戯っぽく微笑み、じっとアオイを見つめた。その視線に、胸の奥がざわつく。


「シロー! 女の子がそんなはしたないことしないの!」


 西園寺が叫ぶと、シロはクスクスと笑い声を上げた。彼女の笑顔は無邪気で、どこか計算されたような魅力があった。


「ふふふっ。サービスですよ、サービス」


 その瞬間、アオイの鼻腔を温かいものが流れ落ちた。鼻血だ。驚きと羞恥で顔が熱くなり、慌ててデスクのティッシュをつかむ。


「表見くん鼻血!」


 西園寺の驚いた声に、アオイはティッシュを鼻に詰め込みながら必死で弁解した。


「あっ、すいません!」


 シロは小さく口を押さえ、驚いたように目を丸くする。


「あらま……ほんとに脚フェチなんですね」


「違います! いや違わないけど……じゃなくて、コラボ配信の件いいんですか!?」


 アオイは声を荒げて話題を逸らした。心臓がバクバクと鳴り、頭の中はまだあの白い太ももの残像が付きまとう。


「そっ、そうだったね。実はシロの復帰第一弾を、紅音ウララとのコラボで飾ろうと思ってね。表見くんにとって学びになるはずだよ」


 西園寺が穏やかに言うと、シロは柔らかく微笑んだ。


「そんな期待されても困っちゃいますね」


 その言葉とは裏腹に、彼女の目は自信に満ちていた。初めて会ったときも感じたが、華奢な外見に反して、シロの内側には確固たる芯がある。まるで舞台に立つ前の役者のように、静かな闘志が漂っていた。


「なっ、内容はどうしましょう……」


 アオイが気を取り直して尋ねると、シロが一歩近づいてきた。


「アオイさんは“カラモンカード”って知ってますか?」


「えっと、確かカラフルモンスターズっていうアニメのカードゲームですよね?」


 シロの目がわずかに輝いた。


「ご存知でしたか。そのカラモンカードのアプリ版が出たんです。最近ハマってるんですが、そちらをやってみませんか?」


 西園寺がニヤリと笑う。


「それはいいね! 世界中で話題になってるカードゲームのアプリ版だし、もしかしたらこれがきっかけで案件もらえたりもするかもしれないからね」


 その悪そうな顔に、アオイは少し不安を覚えた。


「俺、カードゲームとかやったことないんですけど、大丈夫ですかね?」


 シロが妖艶な微笑みを浮かべ、じっとアオイを見つめる。


「大丈夫ですよ。凄く単純なルールですので、わたしが手取り足取り教えますよ」


 その声の響きに、アオイの頬が熱くなる。彼女の視線にはどこか誘うような色が混じっていて、胸がドキドキと高鳴った。


「そっ、それなら……」


 西園寺がからかうように口を挟む。


「表見くん……鼻の下伸びてるよ……」

「えっ……」


 アオイは慌てて窓に映る自分の顔を確認した。そこにはニヤけた自分がいて、恥ずかしさで顔をブンブンと振る。


「じゃ、じゃあよろしくお願いします!」


 彼がそう言うと、シロは穏やかに微笑んだ。


「こちらこそ」


 その笑顔に、アオイの心は少し落ち着いた。だが、どこかでシロの底知れぬ魅力に恐怖を感じていた。



 ***



 その夜、アオイは自宅のソファに沈み込み、スマホを手にしていた。カラモンカードのアプリをインストールし、チュートリアルを進めながらルールを頭に叩き込む。画面には色鮮やかなモンスターたちが躍動し、シンプルながら奥深いゲーム性に少しずつ引き込まれていく。


「パワーチャージして、ゲージが溜まったら攻撃か……。マジックアイテムにサイエンスアイテムを上手く使って展開していく……」


 呟きながら操作を繰り返す。初心者ながら、なんとか基本は把握できた気がした。シロとの配信を想像すると、胸が高鳴る一方で、彼女の圧倒的な存在感に気圧される自分もいた。


 そして翌日、コラボ配信の時間が近づくと、アオイはパソコンに向かい、通話ルームにログインした。ほぼ同時に、シロのアイコンがポップアップする。


「今日はよろしくお願いします!」


 アオイの声に、シロが柔らかく答えた。


「そんなかしこまらないでください」


 その優しい声に、少し緊張がほぐれる。


「アプリはインストールして、ある程度ルールも把握しときました!」


「ふふふっ。ありがとうございます。それならスムーズにできそうですね」


 アオイは深呼吸し、配信ボタンを押した。画面が切り替わり、紅音ウララの元気な声が響く。



 ◆◆◆



「みんなー、紅音ウララだよー! 今日もみんなでロックンロール! そしてー!」


 シロの声が、まるで雷鳴のように割り込んだ。


「お前たちを喰らいに完全復活したぜ。白き野獣、卯ノ花レオだ!」


 その瞬間、卯ノ花レオの配信画面にスパチャが雪崩のように流れ込む。


 ▽「レオ様ーおかえりー!」

 ▽「あぁ、ずっと待ってました……」

 ▽「やばい泣きそう! しかもウララちゃんとコラボとか最高!」


 アオイの目はスパチャの嵐に釘付けになった。金額も数も、普段の配信とは桁違いだ。シロ――いや、レオの圧倒的な人気に、言葉を失う。


「おらああ! 足らねえぞてめーら!!」


 レオの豪快な声に、視聴者がさらに煽られ、スパチャが加速する。


 ▽「みんなもっと投げろー!」

 ▽「王がスパチャを欲してる……投げるべし」

 ▽「レオ様に全て捧げます」


 レオのキャラクターは、普段のシロの落ち着いた雰囲気とはまるで別人だった。まるで獣のような荒々しさと、カリスマ性を兼ね備えた声に、アオイはただ圧倒されるばかりだ。


「ウララ、何黙ってんだよ。企画の説明頼むぜ!」


 レオの声に、アオイはハッと我に返った。


「あっ、ごめん! えっと、今日は今話題のカラモンカードのアプリ版をやるよー!」


 視聴者のコメントが弾幕のように流れる。


 ▼「俺も最近はじめた〜」

 ▼「レオ様のタクティクスがまた見れるのか」


 アオイは企画の概要を説明し終えると、レオが視聴者とウララに向けてルールを補足した。


「1ターンに一度、カラモンにパワーチャージをして、チャージゲージが溜まったら攻撃ができるんだ。マジックアイテムやサイエンスアイテムも上手く使えば、一気に展開ができたり、ピンチからの逆転だって可能だぜ」


「なるほど」


 アオイは画面を見つめ、真剣に耳を傾ける。レオの説明は明快で、ゲームの流れが頭の中で整理されていく。


「それで、相手のカラモンを3体倒したら勝ちだぜ」


「おっけー。負けないよー!」


 コメント欄が一気に盛り上がる。


 ▼「プロゲーマーのレオ様にカードゲームで勝つのは難しそう」

 ▼「IQ180は伊達じゃない」



 ――プロゲーマー!? IQ180!? 声帯模写もだけど、この人一体……


 シロの底知れぬ一面に、背筋がゾクッとする。


「まぁ、最初は軽く練習だ。俺はホワイトデッキでいくぜ」


「ウララはレッドデッキでいくよー!」


 対戦が始まった瞬間、画面に映るカラモンたちが動き出す。アオイのレッドデッキはスピードと攻撃力に特化し、序盤から積極的に仕掛ける。炎を纏ったドラゴン型のカラモン「フレアウィング」を召喚し、素早くパワーチャージを重ねた。


「よーし、フレアウィングで攻撃だー!」


 勢いよくカードを展開するが、レオのホワイトデッキはまるで鉄壁だった。レオが召喚した「シルバーナイト」は防御力が高く、アオイの攻撃を軽々と受け止める。さらに、レオはターンごとに的確にチャージを分配し、複数のカラモンを同時に強化していく。


「ふっ、甘えな! シルバーナイト、カウンターだ!」


 レオの声が響き、シルバーナイトが光を放つ。アオイのフレアウィングが一撃で倒され、画面にダメージエフェクトが炸裂した。


「うそ、一撃!?」


 アオイは慌てて次のカラモン「クリムゾンビースト」を召喚する。だが、レオの動きは一瞬の隙も与えない。冷静にフィールドを支配し、2体目のカラモン「ホワイトファルコン」を展開。ファルコンの特殊能力で、防御力を上げながらも攻撃を畳み掛けてきた。


「くっ、こうなったら一気にいくよー!」


 アオイはクリムゾンビーストの全チャージを解放し、大技「バーストフレア」を放つ。画面が真っ赤に染まり、爆発音が響く。だが、レオは動じず、ホワイトファルコンのチャージを全て消費し、重ねてマジックアイテム「ホワイトバリア」を駆使して攻撃を無効化。すかさずカウンターでクリムゾンビーストを撃破した。


「なっ、なにそれ!?」


 アオイの声が裏返る。レオの戦術はまるでチェスの名人のように緻密で、一手一手が計算し尽くされている。視聴者のコメントも熱を帯びていた。


 ▼「レオ様の読みすげえ!」

 ▼「ウララちゃんピンチ!」


 アオイは最後のカラモン「インフェルノタイガー」を召喚し、さらにサイエンスアイテム「レッドマシンガン」を使い起死回生を狙う。だが、レオのシルバーナイトが再び立ちはだかり、追加召喚した「ルミナスドラゴン」の一撃でアオイのフィールドが壊滅した。画面に「DEFEAT」の文字が浮かび、対戦は終了。


「ああー負けたー!」


 レオが豪快に笑う。


「初めてにしては上出来じゃねえか!」


 スパチャが再び流れ込み、コメント欄が賑わう。


 ▽「レオ様のタクティクスは健在」

 ▽「ウララちゃんも頑張った」


 アオイは悔しさを滲ませながらも、笑顔で応じた。


「くっ、悔しい……もう一回!」


「いいぜ。返り討ちにしてやらー!」


 そして2回戦が始まる。




お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら「ブクマ」や「いいね」だけでもいただけると励みになります!

また、誤字脱字や気になる点がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。


また『30歳無職だった俺、女声を使ってVTuberになる!?』キャラクターガイドブックの投稿も始めました。

最新話までのネタバレを含む可能性があるので、閲覧の際はご注意ください。


短編集『成長』シリーズも、不定期に投稿しています。

どれも短い物語ですが、成長の大切さや本当の強さとは何かを考えながら、心を込めて書きました。

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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