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第59話『イベント中編!?』

イベント参加VTuber一覧


⚪︎紫波しわユリス(九能くのうシオン)

⚫︎翠月すいげつアリア(二茅にがやミドリ)

⚪︎山吹やまぶきセツナ(五宝ごほうコガネ)

⚫︎浅葱あさぎコスモ(六合ろくごうミャータ)

⚪︎銀城ぎんじょうユイラ(四宮しのみやナマリ)

⚫︎撫子なでしこミア(一条いちじょうモモハ)

⚪︎榛摺はりずりキノミ(八橋やつはしカレハ)


 



 巨大スクリーンに映像が映し出された瞬間、さいたまウルトラドームのコミュニティホールはさらなる熱狂に包まれた。アオイは舞台袖で息を整え、観客席からの歓声が壁を震わせるのを感じた。司会のアヤカがマイクを握り、明るい声で後半の開始を告げた。



 ◆◆◆



「皆さん、これからイベント後半です! ここからはさらに盛り上がっていきましょうね!」


 アオイは舞台袖で、次の準備に目を配った。イベントの成功を願いながら、心の中で静かに意気込みを新たにした。


「さあ、皆さん! 後半は観客の皆様とVTuberによる格ゲー『鋼拳7』の対決からスタートです! 対戦したい方、手を挙げてください!」


 4000人の観客席から、無数の手が一斉に上がった。アオイは袖からその光景を眺め、その数の多さに圧倒された。司会が笑顔で観客を見回し、ランダムに三人を選んだ。


 最初にステージに上がったのは、高校生くらいの男の子。司会がマイクを向け、軽快に問いかけた。


「自己紹介お願いしまーす!」


「えっと、シュンスケ……高校生です! よろしくお願いします!」


 少し緊張した声に、観客が温かい拍手を送った。司会が続けた。


「対戦したいVTuberを、銀城ユイラさん以外で二人選んでください!」


「"浅葱コスモ"さんと"山吹セツナ"さんでお願いします!」


 最初の対戦相手として、浅葱コスモがスクリーンに登場した。男の子は暗殺者の女性キャラを選び、コスモは宇宙人のグレイのような奇抜なキャラを選択。試合が始まると、会場が静寂に包まれる。


 アオイはスクリーンを凝視し、二人の動きに目を奪われた。男の子は素早いコンボで攻め立て、コスモが防御に回る。宇宙人のビーム攻撃が放たれるたび、観客席が沸いた。


 終盤、コスモが必殺技を繰り出すが、男の子は華麗にかわし、暗殺者の鋭い一撃を叩き込んだ。ゲージがゼロになり、KOの文字が浮かぶ。


「うわ、やられたわぁ! キミやるなぁ!」


 コスモが悔しそうに叫ぶと、会場が笑いに包まれた。


 だが、二戦目の山吹セツナ戦は一転した。セツナがいつも通り選んだムキムキのスキンヘッドキャラが、圧倒的なパワーで押し潰す。暗殺者の素早い動きも通用せず、豪快な投げ技で瞬時に決着がついた。


「ウチの勝利だよー! 完璧ー!」


 セツナが胸を張って言うと、観客席から歓声が上がった。


 二人目は、OLだという女性がステージに上がった。司会がにこやかに尋ねた。


「対戦相手、誰にしますか?」


「"翠月アリア"さんと"榛摺キノミ"さんでお願いします!」


 一戦目はアリアとの対決だ。女性は機械仕掛けのバレエダンサーキャラを選び、アリアは妖精のような華奢なキャラを選択。試合開始の合図と同時に、女性の正確無比な操作が光った。バレエダンサーの回転キックが連続でヒットし、アリアの妖精が翻弄される。アオイは息を呑み、その鮮やかな動きに驚いた。


「全然防御が間に合わないよー!」


 アリアが慌ててる中、女性が華麗なコンボを決め、勝利を収めた。


「負けちゃいましたね……。凄く強かったです!」


 アリアが苦笑いを浮かべると、会場が優しい拍手を送った。


 二戦目のキノミ戦では、キノミが大きなクマのキャラを選んだ。動きは遅いが、一撃の威力は抜群だ。


「そんな攻撃、キノミのクマちゃんには効かないもーん!」


 女性のバレエダンサーが素早く攻めるも、クマの巨体が立ちはだかり、追い詰められた瞬間、強力なコンボが炸裂。逆転勝利を掴んだ。


「やった〜! キノミの勝ち〜!」


 キノミが無邪気に喜ぶと、観客が歓声を上げた。


「ワタシの出番、まだっすか〜?」


 ユイラがステージ脇で不満そうに呟き、アオイは苦笑した。


 三人目は、20代後半の会社員だという男性。いかにもゲーム慣れした雰囲気を漂わせ、司会に呼ばれて堂々とステージへ。


「対戦したいのは紫波ユリスさんと撫子ミアさんです!」


 一戦目はユリスとの対決だ。男性は道着を着た男キャラを選び、ユリスは妖艶な魔法使いキャラを選択。序盤は互角の攻防が続き、魔法の弾幕と拳の応酬がスクリーンに映し出される。アオイは二人の技術に目を奪われた。


 ――さすがシオンさん……なんでもできるんだな……


 だが、中盤で男性が「そろそろ本気出しますよ」と呟くと、動きが一変。的確なコンボでユリスを圧倒し、あっという間に勝利を決めた。


「参りました。素晴らしい腕前でしたね」


 ユリスが静かに認めると、観客が拍手を送った。


 二戦目のミア戦では、彼女がアイドルのような可愛い女の子キャラを選択。対戦が始まると、激しい攻防が続いた。その時、ミアのラッシュによって男性のキャラがよろめく。彼女の目が鋭く光った。


「この日のために練習したスーパーコンボをくらえ〜!」


 ミアが叫ぶと、男性がニヤリと笑った。


「そんなコンボでは、ぼくには勝てませんぞ!」


 男性はそう言うと、超高難易度の"アルティメットコンボ"を発動。難しい操作を完璧に決め、ミアのキャラクターが宙に舞う。そして――KO。


「悔しい悔しい悔しいー!」


 ミアの負けず嫌いな性格が爆発すると、会場は笑いの渦に包まれた。


 そして、いよいよユイラとの三戦目だ。ユイラはコラボ配信の時に使ったイカついモンスターキャラを選び、男性は再び道着の男キャラで挑む。


 試合が始まると、互角の展開が続き、ユイラの重い一撃と男性の素早い反撃が交錯する。アオイはスクリーンを凝視し、手に汗握った。

 ユイラの優勢に傾き始めた瞬間、男性がアルティメットコンボを発動。だが、ユイラは完璧なタイミングで全て防御し、観客がどよめく。


「なっ、なんですとおぉおぉおおお!?」


 男性が驚きの声を上げると、ユイラが叫んだ。


「くらえ〜! アルティメットコンボ『極悪滅殺煉獄舞ごくあくめっさつれんごくぶ』!」


 モンスターの禍々しいコンボが炸裂し、男性が「ぎゃああああ!」と叫ぶと同時に、画面に"KO"の文字が浮かぶ。


「これまた禍々しい技名だなぁ……」


 アオイが苦笑いすると、ユイラが勝利のポーズを取った。


「ワタシの勝ち〜! さすがユイラ様だよね〜!」


 会場が大歓声に包まれ、格ゲー対決は大盛り上がりで終了した。司会が観客席に呼びかけた。


「熱い対戦をありがとうございましたー! この後はミニライブです! 少しお待ちくださいね!」



 ◆◆◆



 アオイは控え室に急いで向かった。途中で音響スタッフと話してる西園寺とすれ違うと、彼が笑顔で手を振ってきた。アオイは軽く頭を下げて応える。


 ――よしっ、ここまで順調だ! 最後までこのままいくぞ!


 だか、控え室に着くと、そこには座り込んで足首を押さえるカレハの姿があった。他のメンバーが心配そうに取り囲んでいる。アオイは慌てて駆け寄り、膝をついて尋ねた。


「カレハさん、どうしたんですか!?」

「さっき、そこで足首捻っちゃって……」


 カレハがしょんぼりした声で答え、その表情に痛みが滲んでいる。アオイは急いで無線を取り、西園寺を呼んだ。


「西園寺さん、緊急です! すぐ来てください!」


 すぐに西園寺が駆けつけた。


「カレハちゃん、リハで痛めた足首をまたやっちゃったみたいで……」


 アオイが事情を説明すると、西園寺が眉を寄せて考え込んだ。


「ごめんなさい……」


 カレハがしょげた顔で謝ると、西園寺が首を振って優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ。謝ることじゃないから」


 西園寺は、少し考えた後に指示を出した。


「とりあえず曲順を変えよう。『Heart of Resolve』からスタートでいいかな?」


 みんなが頷き、アオイはスタッフに伝える準備をした。


 そしてライブが始まり、『Heart of Resolve』の優雅なメロディーが会場を満たす。スクリーンでは、アリア、コスモ、ミアが息を揃えたダンスを披露し、観客が拍手で迎えた。その隙に、西園寺がアオイに近づき、小声で囁いた。


「表見くん、『Music Is My Weapon』の踊りって練習したんだよね?」


「はい、一応……ってまさか!?」


「カレハちゃん、歌は歌えるよね?」


「歌えます……」


 カレハが弱々しく答えると、西園寺がニヤリと笑った。


「表見くんが『Music Is My Weapon』のダンスを踊ればいいよ。てかそれしかない!」


「いい案ね」


 シオンが静かに頷くと、アオイは冷や汗をかいた。


「でっ、でも……」


「表見くん、キミならできる!」


 西園寺の真剣な眼差しに、アオイの心臓が跳ねた。


 ――確かに踊りは覚えてる。でも、こんな大舞台でいきなり……


 頭の中がぐるぐると回り、決断を迫られた。4000人の観客、輝く仲間たち、そして自分の役割――全てが一瞬で交錯し、彼の胸を締め付けた。



お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら「ブクマ」や「いいね」だけでもいただけると励みになります!

また、誤字脱字や気になる点がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。


また『30歳無職だった俺、いきなり女性VTuberになる。』キャラクターガイドブックの投稿も始めました。

最新話までのネタバレを含む可能性があるので、閲覧の際はご注意ください。


短編集『成長』シリーズも、不定期に投稿しています。

どれも短い物語ですが、成長の大切さや本当の強さとは何かを考えながら、心を込めて書きました。

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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