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第58話『イベント前編!?』

イベント参加VTuber一覧


⚪︎紫波しわユリス(九能くのうシオン)

⚫︎翠月すいげつアリア(二茅にがやミドリ)

⚪︎山吹やまぶきセツナ(五宝ごほうコガネ)

⚫︎浅葱あさぎコスモ(六合ろくごうミャータ)

⚪︎銀城ぎんじょうユイラ(四宮しのみやナマリ)

⚫︎撫子なでしこミア(一条いちじょうモモハ)

⚪︎榛摺はりずりキノミ(八橋やつはしカレハ)


 



 イベント当日、さいたまウルトラドームのコミュニティホールは朝から熱気に包まれていた。アオイはバックステージに集まったメンバーたちを見渡し、胸に込み上げる緊張と興奮を抑えきれなかった。4000人の観客を迎える準備が整い、みんなの顔には期待と少しの不安が混じっている。開演前の意気込みを語る声が、次々と響き始めた。


「気合い入れていくわよ」


 シオンが静かながらも力強い声で言うと、ミドリが目を輝かせた。


「すごく楽しみです!」


「ぼくもや。かましたるで〜!」


 ミャータが明るく返す中、コガネが跳ねるように手を振った。


「盛り上げるのはウチとナマリーに任せてー!」


「がっ、ががが頑張ります!」


 ナマリが緊張した様子で答える。だが、その声はいつもより力強く感じた。


 アオイは一人ひとりの言葉に頷きつつ、視線を動かした時、カレハの足首に白いテーピングが巻かれていることに気づいた。眉を寄せ、そっと近づいて尋ねた。


「カレハさん、足首どうしたんですか?」


「昨日のリハーサルでちょっと捻っちゃって〜」


 カレハが軽く笑って答えたが、その表情に微かに痛みが滲んでいるように見え、アオイの胸が締め付けられた。


「大丈夫ですか? 無理しないでくださいね」


「大丈夫ですよ〜。表見さん、心配しすぎ〜」


 彼女が笑顔で返すも、どこか辛そうな影が残り、アオイは不安を拭いきれなかった。


 その時、バックステージに東ヶ崎と北大路が現れた。東ヶ崎は、うちわやハチマキなどの推し活グッズを身につけ、完全にオタクモード全開だ。一方、北大路は落ち着いた様子でこちらに軽く手を振ってきた。


「関係者席から見守ってるわね」


 彼女がそう言って立ち去ったと思えば、東ヶ崎がアオイに目を留め、ニヤリと笑った。


「アオイ、今日はわたしの可愛い推したちを、ちゃんとフォローしてよね」


「は、はい、頑張ります!」


 アオイが少し気圧されつつ返すと、東ヶ崎も満足げに去っていった。


 開演前、アオイはグッズ販売の整理券配布に駆り出された。物販コーナーはすでに長蛇の列で、ファンたちは限定グッズが目当てなのか、目を輝かせている。アオイはスタッフと協力し、「こちらで整理券配ってます!」と声を張り上げながら整理券を配った。汗が額を伝い、喧騒の中で時間が過ぎていく。ようやく一段落し、彼はバックステージに戻り、リハーサルの記憶を頼りに心を整えた。


 やがてイベントが幕を開けた。司会は、明るい声が特徴の女性だ。彼女がマイクを手にステージに立つと、会場が一気に沸いた。



 ◆◆◆



「皆さん、こんにちはー! 司会の藤田アヤカです! 今日はここ『さいたまウルトラドーム コミュニティホール』で、WensのVTuberたちと一緒に盛り上がりましょうね!」


 拍手と歓声が響き、アオイは舞台袖でその熱気を肌で感じた。まずはトークショーだ。司会が軽快に進行を進め、VTuberたちがステージに上がる。


「最初はゆるっと日常トークから行きましょう! 最近、皆さん何してました?」


「最近は今日のイベントのミニライブに向けて、ずっとダンスと歌の練習してたんです。でも……なぜか体重、1キロ増えてました……」


 スクリーンに映る榛摺キノミが照れ笑いを浮かべると、会場から笑いが漏れた。

 彼女はカレハ本人とは対照的に、小柄な女性キャラクターだった。焦茶色のふわふわとした髪にメガネをかけ、恥ずかしそうな仕草をしている。だが、その顔には確かにカレハの面影があった。


 ――なんか本人よりだいぶ女の子っぽいな……


「ぼくはゲーム配信やな。最近、格ゲーの新作にハマってて、ユイラちゃんにボコられたわ。イベント後半で、そのユイラちゃんと格ゲーで対戦できる企画があるから、みんなお楽しみにな〜」


 浅葱コスモが企画について軽く話すと、観客の歓声が波のように押し寄せる。


 アオイは袖からその様子を見守り、微笑んだ。すると司会が話題を切り替えた。


「では、ここからはVTuberのお仕事の裏側なんかを伺いましょ〜。まずは『Music Is My Weapon』の収録秘話から、紫波ユリスさん、何かありますか?」


 ユリスがマイクを手に、落ち着いた声で話し始めた。


「この曲、実はわたしのパートで少し苦戦しちゃったんですが、Wens社にいる優秀なボイストレーナーのおかげで、リリカちゃんやウララちゃんにも負けないくらい力強い歌声が出せるようになって、いい曲に仕上がったんですよ」


 会場が「おお〜!」とどよめくと、山吹セツナが手を挙げた。


「ウチが生放送で話してたボイストレーナーもその人だよー! めっちゃ優しくて、高音の出し方とか教えてくれたの!」


 その言葉に、アオイは舞台袖で顔が熱くなるのを感じた。まさか自分が話題に上がるとは思わず、照れくささが胸を満たす。続けて、撫子ミアが頷いた。


「『Heart of Resolve』でも、その人に色々お世話になったんです。本当に助かりました!」


 銀城ユイラも、目を輝かせて加わった。


「ワタシも声量のコントロールの仕方を教えてもらった〜。すっごく優しくて、教えるのも上手くて、めっちゃお世話になった〜!」


 観客の拍手が鳴り響く。その中で、ミドリがふとこちらを見て、ニコッと笑った。

 アオイは思わず頭を掻き、苦笑いを浮かべる。


 司会は変わらぬ笑顔で、軽快に進行を続けた。


「すごいボイストレーナーさんですね! 皆さんを裏から支えるそんな人がいたんですね」


 そして司会が他にも色々とVTuberの仕事について聞くと、みんなが大変だったことや、楽しかったことなどを話し、トークは盛り上がりを見せた。


 すると、司会が話題を切り替えた。


「では、ここからは観客席からの質問コーナーに移ります! 質問したい人は、挙手でお願いしまーす!」


 ファンからの質問が飛び交い、トークショーは和やかに進んだ。アオイはその間に、スタッフと連携しつつ、次の準備を確認した。


 続いて、参加型クイズ大会が始まった。司会がルールを説明する。


「VTuberの皆さんが1人ずつクイズを出します! 答えたい人は手を挙げて、スタッフがマイクをお渡ししますね。それでは、トップバッターはコスモくん!」


「じゃ〜、ぼくの好きな食べ物はなんでしょう?」


 スクリーンのコスモがニヤリと笑うと、観客席から手がいくつも上がった。スタッフがマイクを渡し、若い男性が答えた。


「たこ焼き!」


「正解や! 一問目だから簡単やで〜」


 コスモが拍手すると、会場が沸いた。


「次はアリアリね! わたしの配信時の挨拶はなんでしょう?」


 翠月アリアが問いかけると、小学生くらいの女の子が元気に手を挙げた。


「みんなのマイナスイオン、アリアリこと翠月アリアです!」


「大正解! ありがとねー!」


 ミドリが手を振りながら優しく笑うと、会場が温かい拍手に包まれた。


 その後も次々に問題を出し、観客が楽しそうに答えた。アオイは舞台袖でその様子を見守り、観客の笑顔に胸が温かくなった。クイズ大会は盛況のうちに終わり、前半が終了。休憩タイムに入った。



 ◆◆◆



 アオイは控え室に行き、みんなに駆け寄った。


「お客さん、めっちゃ盛り上がってて、楽しんでますよ!」


「ほんと!? よかったー!」


 コガネが跳ねて喜び、ミドリがほっと息をついた。


「わたし、ちょっと緊張してたけど、安心しました……」


「参加型の企画にして大成功やな〜」


 ミャータがそう言い肩を叩いてくると、アオイは照れ笑いを浮かべた。だが、ふと視線をカレハに移すと、彼女の足首が気になり、再び声をかけた。


「カレハさん、足の具合、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ〜。表見さん、優しい〜」


 カレハが笑顔で返す。その表情は、イベント開始前より明らかに余裕があり、アオイは少し安心した。彼女のテーピングが目に入るたび心配がよぎったが、今は本番を楽しんでいるようだ。みんなの笑顔に囲まれ、アオイもまた力をもらった。


 やがて、司会の声が会場に響き、イベント後半が始まろうとしていた。




お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら「ブクマ」「いいね」「感想」いただけると励みになります!

また、誤字脱字や気になる点がありましたら、ご指摘いただけると幸いです。


また『30歳無職だった俺、いきなり女性VTuberになる。』キャラクターガイドブックの投稿も始めました。

最新話までのネタバレを含む可能性があるので、閲覧の際はご注意ください。


短編集『成長』シリーズも、不定期に投稿しています。

どれも短い物語ですが、成長の大切さや本当の強さとは何かを考えながら、心を込めて書きました。

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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