第39話『商店街のカラオケ大会!?』
アオイは事務所の一角で、ミカン、シオンと共に西園寺の言葉に耳を傾けていた。彼は上機嫌に目を輝かせている。
「『Sound Weaponオンライン』のPR動画300万再生、テーマソング『Music Is My Weapon』 500万再生突破おめでとう! まさか1週間でここまで伸びるとは、夢にも思わなかったよ!」
西園寺がそう言う、アオイは驚きと喜びが胸に広がり、思わずミカンとシオンを見た。ミカンが満面の笑みを浮かべ、シオンが静かに頷いている。アオイがふと口を開いた。
「ゲームに音楽が絡んでたのも、伸びた理由じゃないですかね」
「確かにその要素もあるかもね! でも、何より三人の個性が炸裂したのが大きいと思う。今回のスマホゲームに関しては、この三人の組み合わがベストチョイスだと自負してるよ!」
西園寺が胸を張り、自信たっぷりに言う。アオイは少し照れくさくなり頬をかいた。そして西園寺がさらに言葉を重ねる。
「アプリが配信されたら、再生数はもっと跳ね上がるだろうね」
「そうですね! 宗像の会社でも話題になってるって言ってましたから、すごいことになりそうです!」
アオイが勢いよく返すと、ミカンが目を輝かせて頷いた。
「これでまたお仕事増えたら嬉しいですね!」
「紫波ユリスもアバターとして登場してほしいわね」
シオンが微笑みながら言うと、西園寺がにこりと笑った。
「いいね、今後もご贔屓にしてもらえるよう頑張らないと! それじゃ、今日は早いけどもう帰っていいよ!」
「ありがとうございます!」
アオイが礼を言うと、ミカンがぽんと手を叩き、明るく提案してきた。
「まだ日も高いですし、商店街で食べ歩きでもしませんか?」
「そういえば少しお腹が空いたわね。付き合ってあげてもいいわよ」
シオンが賛同すると、アオイも笑顔で頷いた。
「じゃあ、行きますか!」
アオイがそう言うと、西園寺は急に肩を落とし、しょんぼりした声で呟いた。
「僕も仕事がなければ一緒に行きたかったなあ……」
その落ち込む姿に、アオイとミカンが顔を見合わせて苦笑いした。
「行ってらっしゃい……あぁ、僕も行きたかったなあ……」
西園寺が寂しげに手を振る姿を背に、アオイ達はスタジオを後にした。
***
三人が商店街に着くと、屋台から漂う香ばしい匂いが鼻をくすぐった。アオイはたこ焼きを手にし、熱々のまま一口頬張った。ソースの甘辛さと鰹節の風味が口に広がり、思わず「うまい!」と呟く。ミカンが串カツを手に持つと、ザクッと音を立ててかじりついた。そして彼女が明るく声を上げた。
「商店街ってほんと楽しいですよね! この雰囲気、大好きです!」
「たまにはこういう賑わいも悪くないわね」
シオンが箸で焼きそばを優雅に摘まみ、静かに味わう。アオイは隣で焼き鳥の煙に目を細めながら頷いた。屋台の合間を縫うように歩いていると、商店街の中央にある広場から、音楽と拍手が響いてきた。
近づくと、そこでカラオケ大会が開かれており、優勝商品として「商店街の商品券1万円分」の看板が掲げられていた。ミカンがそれを見て目を輝かせた。
「わたし、出たいです!」
「ミカンちゃんなら優勝狙えそうだね。商品も豪華だし、楽しそう」
アオイが笑いながら言うと、シオンが静かに口を開いた。
「わたしも挑戦してみようかしら」
二人が飛び入り参加を決め、まずはミカンがステージに飛び乗った。
「三浦ミカンです! よろしくお願いします!」
そしてミカンが歌い始めると、太く伸びやかな歌声が広場を包んだ。力強いビートに合わせ、観客が手拍子を鳴らし、歌い終わりには歓声が沸き起こった。
「姉ちゃん、すげえ上手いぞー!」
「プロみたいだ!」
観客の声に、ミカンが笑顔で手を振った。
「ありがとー!」
得点が表示され、96点。観客の拍手が一段と大きくなり、司会の男性がマイクを握って盛り上げた。
「素晴らしい歌声! エネルギッシュなパフォーマンスで96点、現在の最高得点です!」
ミカンが満足げに降りてくると、シオンがアオイをちらりと見て呟いた。
「商品券、取ってきてあげるね、お兄ちゃん」
「えっ!?」
アオイが驚きの声を上げると、シオンは静かにステージへ上がった。
「九能シオン。よろしく」
彼女の歌声はいつものように艶やかで澄んでいて、加えて音程を丁寧に刻む様子が際立っていた。観客が息を呑んで聴き入り、歌い終わりには大きな拍手が響いた。
「声がめっちゃ綺麗だ!」
「あの子もプロなんじゃないか?」
そして得点は97点。司会が感嘆の声を上げた。
「見事なコントロール! 完璧な音程で97点、トップに躍り出ました!」
ミカンが悔しそうに唇を尖らせ、アオイに涙ながらに訴えかけた。
「表見さん、仇を取ってくださいよー!」
「おっ、俺は遠慮しとくよ」
アオイが苦笑いで手を振ると、ミカンが「えー!」と不満げに唸った。
カラオケ大会の終了時間が近づき、司会がマイクを握って高らかに叫んだ。
「最後にどなたかチャレンジしませんかー!」
「ワタシ挑戦します!」
聞き覚えのある声に、アオイとミカンが同時に顔を上げた。そこにはモモハが立っていた。アオイが驚きに目を丸くすると、モモハがこちらに近づき、軽やかな笑顔で言った。
「表見さん、お久しぶりです」
そしてシオンの方を向き、自信満々な表情で力強く言い放った。
「勝たせていただきます!」
シオンは無言のまま、落ち着いた視線で見つめ返す。
そしてモモハがステージに上がり、マイクを握って自己紹介した。
「一条モモハです! みなさんの心に響くよう、全力で歌います!」
そしてモモハが歌い始めると、明るくハキハキした歌声が広場を満たした。アップテンポな曲に合わせ、その声は聴く者を元気づけるような活力を帯びていた。アオイはその自信に満ちた歌いっぷりに目を奪われ、会場が一気に熱を帯びるのを感じた。
曲が終わり得点が表示されると、97.5点。僅かにシオンを上回り、観客が拍手と歓声で沸き立った。司会が興奮気味に叫ぶ。
「驚くべきパワー! 元気溢れる歌声で97.5点、優勝は一条モモハさんです!」
モモハがステージから降りると、アオイに向かってまっすぐ歩み寄ってきた。
「表見さん、改めて紅音ウララさんに伝えてください。Wensの次世代エースはこのワタシです!」
その瞳には、以前と変わらぬ明確な闘争心が宿っていた。アオイは彼女の揺るぎない意志に、再び圧倒された。
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