兄を卒業させてくれ
リーゼが目を覚ましてから10日過ぎた。
今では魔力も戻り、元気いっぱいだ!
学園も冬休みも無く働かせた事に、王太子から厳重注意を受けた学園から遅い冬休みを貰った。
王太子いわく、
「魔力量が多いと言ってもまだ学生の身。そんな子に休みも与えず働かせるのは職務怠慢である!」
と。
俺もいつもリーゼに合わせて仕事を休んでいた為、今は冬休み中だ。
そしてリーゼに頑張ったご褒美に何が欲しいか聞くと、
「兄さんとデートがしたい!」
と言われ二人で港近くの水族館に来ていた。
リーゼは飲み物を買って来る!と言って走って行った。
俺は今日リーゼに気持ちを伝えるためポケットにある物を忍ばせている。
リーゼが行方不明になっていた時、リーゼの両親から話したい事があるから家へ来て欲しいと言われた。
そして聞かされたのはリーゼとリーゼの両親しか知らない事だった。
「リーゼの魔力は強すぎて、直ぐに枯渇してしまっていたんだ。研究所は器が小さいと思っていたけど、強すぎる魔力のせいで溜める事が出来なかったんだ。」
少し魔力を使うだけでも暴発してしまい、寝たきりに近かった。
「でも君と出会って、君に触れた瞬間に魔力が体に溜まるようになったと、それは嬉しそうに話してくれたんだよ。」
自分には魔力は無い。
検査して貰ったから間違いはない!
ではどうして?
「ケビンくんがリーゼにとって特別な人だったのかもね!親としてはとっても妬けるけど 笑」
リーゼは事あるごとに俺に抱きついて来た。
それは魔力切れになる前に補充しに来ていたのか!
四歳のあの時からリーゼにとって俺は、特別な存在だったのかも知れない。
そう思うと嬉しくて堪らなかった。
「兄さん、お待たせ!」
両手に飲み物を持って走って来るとその飲み物を二つ受け取り、ベンチに座らせる。
俺はリーゼの前に膝を付き彼女の両手を握る。
「リーゼにお願いがあるんだ。」
「なぁに?」
リーゼは微笑む
「今日で君の兄を卒業したいんだ。」
そう言ってポケットから箱を取り出し、目の前に出す。
「どうか俺のことをケビンと呼んで欲しい。そしてもし許されるならこれを身に着けて欲しいんだ。」
それは、お揃いの耳飾り。
この国では婚約の印として、お揃いの耳飾りを着ける事になっている。
リーゼは震える手で受け取ると、俺の耳に着けてくれた。
「ケビン・・の気持ちを受け取ります。」
涙声で答えてくれると、今度は俺がリーゼの耳に着けた。
「可愛いリーゼ。これからもよろしくな。
それから、抱きつくのは俺だけにして欲しい。」
そう言って初めて俺の方からリーゼに抱きついた。
リーゼば驚きながらも、
「初めて会った時から、私にとってケビンは特別な人なんだよ!」
その笑顔がとても可愛くて、俺はそっとリーゼに口づけをした。
これにてロイド編は完結です。
読んでくださり嬉しく思います。
近いうちにリーゼ編を書きたいと思います。