呼び出し
あれから毎晩手鏡を覗いているが、リーゼからの応答がない。
話し掛けても繋がらない所を見ると、どうやら魔力持ちのリーゼからしか繋げられないみたいだ。
(魔物も出るような所と言ってたな・・
リーゼは大丈夫なんだろうか?)
いくら魔力が強いと言っても、体は普通の女の子だ。
最後の通信から半月。
手紙でのやり取りを思えばまだ日は浅いが、手紙とは違う。
(やっぱり何かあったに違いない!)
そう確信したものの、自分からは何も出来ない。
こんなにもどかしく思ったのは初めてだ!
リーゼは小さい時から色々と心配をかけて来たが、それでも魔力持ちだけあって深く悩んだり心配した事は無かった。
「リーゼ、頼む。声だけでも良いから聞かせてくれ。」
そう言った瞬間、鏡からブゥーンという音と共に光り始めた。
「リーゼ?」
いや違う。
リーゼと繋がる際は黄色とオレンジ色の中間の色合いに光るが、
今はどちらかと言えば真逆の色合いだ。
手鏡から少し距離を置く。
すると映ったのは黒いフードを被った男だった。
「・・お前、ケビンか?」
突然名前を呼ばれて驚く。
「リーゼの幼なじみのケビンか?」
「そっ、そうだ。お前は?」
見るからに魔術師風の男に怯む。
「俺とリーゼの魔力の質が違うからあまり長くは話せないが、リーゼが戻って来ない。
先週少し厄介な場所へ結界の張り直しへ出掛けたままだ。こちらも全力で探している。」
「なっ、そんな危険な場所へなぜリーゼが!?」
「お前は知らないと思うが、リーゼの力は並の力では無い。俺たちが10人集まってもリーゼには敵わない。だから今回もリーゼに振られたんだ。」
「!」
話しでは聞いていた。
小さい時も魔力と器の大きさが合わなかったため、特別に親元に居たと。
少しでも心に不安や恐れがあると、魔力が暴発するからと親元に留められたと・・
そんな力を持つリーゼが半月も連絡が取れない⁈
そんな事があって良いのか?
「お前が心配する気持ちは分かる。妹のような存在なのだろう?リーゼは」
何かあれば連絡する。それまで待て。
男はそう言うと通信を一方的に切った。
(いもうと・・)
その後も毎日手鏡を覗くも通信されず、俺は心配で仕事もミスばかりしていた。
「ケビンさん、少し休んだ方が良くないか?リーゼさんから連絡無いんだろう?」
話し掛けて来たのは本社から引き抜いたセージだ。
セージもリーゼの事を知っていて、俺ほどではないが心配してくれている。
今は秘書兼経理を任せられる男だ。
「ああ、そうさせて貰うよ。悪いが後は任せる。」
アパートに戻っても手鏡の前から離れる事が出来なかった。
そんな時、手鏡からブゥーンと言う音と共に
「おい、そこにいるのか?いたら返事してくれ!」
この間の男の声がした。
「いる!リーゼから何か連絡があったのか?」
「リーゼがお前を呼んでいる!今迎えをやったから直ぐにこっちへ来てくれ!」
通信が切れる前にアパートを飛び出した。
ロイド編は次回で終わりです。