表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

第14話 脱出計画

レオンハルトはさらにプロトタイプのサーキュス・ギアの機能を拡張するため、小型の三つのスイッチを開発した。それぞれのスイッチには特定の凡級魔法が割り当てられ、スイッチを押すだけで瞬時に魔法が発動できるようになっていた。


最初のスイッチは「ファイアボール」。小さな炎の球が敵に向かって飛び出し、威力は凡級ながら、即座に放つことができる点が利点だ。二つ目のスイッチは「アクアボール」で、清らかな水の球が発射される。三つ目のスイッチは「ロックバレット」、大地の力を利用して小さな岩石を弾丸のように放つ。


このシステムの鍵は、スイッチを押すことで超高速で詠唱データをプロトタイプのサーキュス・ギアに流し込む仕組みにあった。レオンハルトは詠唱を録音した音声データをサーキュス・ギアに組み込み、スイッチを押すことで詠唱を瞬時に再生するシステムを作り上げた。結果、実質的に無詠唱で魔法を発動できるのだ。


スイッチを押した瞬間、詠唱の時間は限りなく短縮され、魔法が瞬時に発動する。この技術は、戦闘において敵に詠唱の隙を与えないという、圧倒的な優位性をもたらすものだった。


しかし、レオンハルトはこのシステムに潜むリスクにも気づいていた。スイッチに依存しているため、もしスイッチが壊れたり、断線が起こった場合、無詠唱での魔法発動は不可能になる。システムの信頼性を保つため、スイッチや回路の定期的なメンテナンスが欠かせないことを理解していた。


この技術がさらに発展すれば、もっと強力な魔法も無詠唱で扱えるかもしれない。レオンハルトは、さらなる改善の可能性に胸を膨らませながら、次のステップを慎重に見据えていた。


レオンハルトは、無詠唱魔法ver1の完成をアリシアに伝えた。二人の顔には自然と笑みが浮かんだ。これまで何度も実験を繰り返し、失敗を重ねてきたが、ついに無詠唱で魔法を発動することができるようになったのだ。これは大きな進展であり、二人にとって希望の光だった。


「これで、無詠唱での魔法が実用レベルに到達したわね!」アリシアは目を輝かせて言った。


「そうだ。この力をうまく使えば、僕たち…脱出できるかもしれない」レオンハルトも興奮を隠しきれない様子だった。


二人はすぐに、施設からの脱出計画を練り始めた。自由を取り戻すためには、この閉ざされた施設からどうにかして抜け出さなければならない。そのためには、外の世界に繋がるゲートを開けるか、施設の厚い壁を破壊する必要があった。だが、どちらにしても大きな力が必要だった。


そんな中、アリシアが機転を利かせ、監視員と会話していた際に、重要な情報を得ることに成功した。アリシアは巧みな話術を活かし、監視員との雑談の中で、施設の防御力についての話を自然に引き出していた。


「その壁、相当強固なんですよね?普通の魔法じゃ、外に出るのは無理なんじゃないですか?」アリシアがさりげなく質問を投げかけると、監視員は鼻で笑いながら答えた。「ああ、そうだな。施設の壁を壊すには、王級魔法クラスの力が必要だ。凡級や上級魔法じゃ、到底歯が立たないさ。」


その言葉に、アリシアは内心で喜びを噛み締めた。王級魔法クラスの力――それは脱出計画において非常に重要な手掛かりだった。すぐにレオンハルトにその情報を伝えた。


「壁を壊すには、王級魔法が必要みたい。普通の魔法じゃ、あの壁は無理みたいよ」とアリシアが話すと、レオンハルトも深く頷いた。


「つまり、無詠唱で王級魔法を使えれば、壁を壊して脱出できるということだな…」


二人はその目標に向けてさらに計画を練り始めた。しかし、すぐに問題に直面する。「overdrive」は上級魔法までしか発動できず、王級魔法には届かないことに気づいたのだ。施設の壁を壊すには、さらに強力な力が必要だ。


「overdriveを使えば、上級魔法は使える。でも、王級魔法には届かない…これでは壁を壊せない。」レオンハルトは頭を抱えた。


その時、アリシアが閃いたように目を輝かせた。「待って、レオンハルト!王級魔法じゃなくても、壁を越える方法があるかもしれないわ!」


「どういうことだ?」レオンハルトが尋ねると、アリシアは土魔法に関する知識を語り始めた。


「土魔法を応用してゴーレムを作り出せば、その力で壁を乗り越えられるかもしれない。壁を壊すのではなく、ゴーレムの力で乗り越えるか、あるいは地中に穴を掘って抜け道を作るのよ。」


その提案にレオンハルトも目を輝かせた。「なるほど…ゴーレムなら確かに壁を超えられるかもしれない。それなら、無詠唱魔法とoverdriveで十分だ。」


二人は新たな脱出の手段を見つけ、すぐにゴーレムを作り出すための準備に取り掛かることにした。しかし、ゴーレムの発動は一発勝負だと理解していた。監視員に見つからずに発動するには、計画の練り直しが必要だった。


「一発勝負だな…」レオンハルトは緊張を隠せない様子で言った。


「そうね、失敗すれば終わりよ」とアリシアも頷いた。


二人は監視員たちの注意をそらすためにいくつかの案を考えた。そして、最終的にシンプルで効果的な作戦に絞られた。


「ゴミエリアにファイアボールを使ってボヤ騒ぎを起こすのはどう?」アリシアが提案した。「監視員たちは火事だと思ってすぐに駆けつけるはずよ。」


レオンハルトはその案に同意し、さらにもう一つのアイデアを加えた。「アクアボールで廊下を水浸しにして、混乱させよう。火事と水害が同時に起これば、監視員や所長はそっちに気を取られて、僕たちに気づかないだろう。」


「完璧ね」とアリシアは笑みを浮かべた。


計画の実行は新月の夜に決められた。月明かりのないその夜は、脱出に最も適したタイミングだった。


「新月の夜なら、闇に紛れて行動しやすいはずだ」とレオンハルトが言うと、アリシアも同意した。


新月までおおよそ1週間となり、レオンハルトは脱出計画に向けて着々と準備を進めていた。特に、ボヤ騒ぎを起こす予定のゴミエリアの偵察は重要な任務だ。どんな場所か、どう火を放つかを確認するため、夜の施設内を慎重に抜け出して、彼はゴミエリアへと足を運んだ。


ゴミの山が静かに積み重なるその場所にたどり着いたレオンハルトは、周囲に注意を払いながら素早く偵察を開始した。火を放つ場所や逃げ道を確認し、頭の中で計画を練り直していたが、ふと背後に近づいてくる足音を聞いた。


「なんでこんなところにいるんだ?」鋭い声が響き、振り返ると、そこにはリカルドが立っていた。彼は腕を組み、鋭い目つきでレオンハルトを見下ろしていた。


「お前ら、脱出しようとしてるんじゃないか?」リカルドの声には、明らかな疑いが込められていた。


レオンハルトの心臓は一瞬止まりかけたが、すぐに頭を働かせ、冷静さを保とうと努めた。「いや、そんなことはないよ!」ととっさに答えた。「このゴミエリア、臭くて仕方がないから、どうにかしようと思って見に来ただけなんだ。」


リカルドは鼻で笑い、「嘘をつけ。ここは全然臭くないぞ」と言い放った。「本当のことを言わないと、ぶん殴ってやるぞ!」


緊張が一気に高まる中、アリシアが必死にフォローを入れた。「本当なのよ!信じて、リカルド!」だが、リカルドはその言葉に耳を貸さず、アリシアを軽く押しのけた。アリシアはバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。


その瞬間、レオンハルトの中で怒りが一気に沸き上がった。拳を握りしめ、リカルドに反撃しようと一瞬身構えるが、冷静さを失えば、脱出計画が全て水の泡になる。レオンハルトは激しい怒りを必死に抑え込み、再び嘘を貫くことに決めた。


「本当に臭いんだ!」レオンハルトは演技を続け、リカルドに訴えた。


リカルドはレオンハルトをしばらく睨みつけていたが、やがて一発レオンハルトの腹を殴った。「もし1週間以内にこの匂いが消えなかったら、もっとひどい目に遭わせてやる」と吐き捨て、取り巻きたちを引き連れてその場を去っていった。


アリシアは倒れたままの状態からゆっくりと起き上がり、レオンハルトに近寄った。「よく冷静でいられたわね。偉いわ」と優しく微笑んだ。


レオンハルトは未だに拳を握りしめていたが、アリシアの無事を確認すると少しずつ手を緩めた。「大丈夫か?ケガしてない?」


アリシアは軽く笑い、「大丈夫よ」と答えた。「でも、あなたが冷静でいてくれて助かったわ。計画はまだ無事ね。」


レオンハルトはアリシアを見つめながら、彼女が巻き込まれたことに内心で強い後悔と怒りを感じていた。だが、計画を守るためには今は感情に流されるわけにはいかない。彼は深呼吸をし、もう一度冷静さを取り戻した。


「ありがとう、アリシア。君がいてくれて本当に助かった。これからももっと慎重に動こう。リカルドには、これ以上気づかれないようにしないと。」


二人は改めて気を引き締め、計画の実行に向けてさらなる準備を進めることにした。夜の静けさが二人を包む中、施設内の暗闇に潜む危険と希望が交錯していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ