御前試合6
とりあえず戻ってきたはいいものの...対処法は未だ思いついてはいない。
一番簡単なのは寵愛を切ること。しかし理由もなく切ってしまえば裏切られたと嫌われてしまうかもしれない...
「な?!」
せきちゃんがこっちを見てる...!忘れてた!あの子やり直しを知覚出来るようになってきてたんだ!
申し訳ないけど寵愛を一旦切ろう。やり直しの時の記憶があるなら分かってくれるはず...
「嘘でしょ?!」
せきちゃん...私から魔力を吸ってる?!...でもこれなら周りに被害も出ないし...
「...ぅぐ...」
私の...本来の魔力量を超えた量を何度も吸われて思わず立ちくらみがする。やり直す前はほぼ互角だったからこのままいくと...死ぬかも。
でもこんなに魔力を得ているならそろそろ発動するはずだし,今回は一人も倒してないから経験値のオーバーフローで超進化せずにすむはず...
その時,転換の神術が解けた。
「え?!ほんとに言ってる?!」
神術は下界に降臨出来る高位神が行使できる術で...それが無意識に解けたならば...
「神力を吸収してるの?!」
しかしこちらに対抗する術はない。大人しく吸われているのを待つしかないのだ。
「あはは...全部持ってかれちゃった。」
私自身の(・・・・)神力は全部持ってかれた。
「神敵が神になるか...見よう,新たなる魔神の初陣を。」
*
『警告!成長限界を大幅に超過した経験値を獲得中。身体が耐えられません。システム,強制退場を推奨...否決されました。...経験値オーバーフロー。超進化,開始します。』
やばい...なんかずっと変な警告文出てる。超進化って何?!魔力吸収が止まらないんだけど?!
ぉえ...意識が朦朧としてきた...眠い...いつの間にか周りに誰も居ないし...ちょっとだけ寝てもいいよね...
『超進化進行中...経験値未だ獲得中...規定量の魂を確認...超進化先を神族へ移行...システムエラー!システムエラー!超進化制御不能!このままでは神敵が誕生する懸念があります!...強制終了を視野に...否決されました。システムサポート終了...撤退します。』
「...。」
気持ち悪い...
何かがずっと流れ込んでくる...魔力かな,これ...
じゃあ,使わないと。
体外に魔力を放出すると,後ろの方で何かに阻まれるような感覚がした。気になって振り返るとヴァンとラドニアが居て...急に景色が変わった。
「ほう...その程度の器にこれ程の魔力を!だが!こちらも負ける訳にはいかんのだ!」
え?僕何してたんだっけ...この感覚はヴァンのやり直しか?!
急いでヴァンに顔を向ける。ヴァンは苦い顔でこちらを見つめていた。
あんまり覚えてないけどやり直したって事は何か不都合があったんだよね?!やばい魔力吸収始まってるよ!とっ,とりあえずヴァンから貰おう。魔神だから魔力はいっぱい持ってるでしょ?!
「神に祈るか...だが無駄だ!」
神って,こっちはそれどころじゃないんだよ!ちょっとでいいから神様の力添えは欲しいけど!
『システム,神力の流入を確認...規定量達成。おめでとうございます。神族への昇華が認められました。』
「今更命乞いをしてももう遅い!我が神へ見せ...」
「ダマレ。」
「─?!」
僕はヴァンから流れてきた神力で無理やり言霊を発する。めちゃくちゃ喉が痛い...なるべく使わない様にしよう。
改めて目の前の魔王を見る...が,そこに以前のような威圧感はなかった。...はっきり言って今の僕の足元にも及ばないだろう。こんな雑魚に2人が...!
そう考えると怒りが湧いてきたが,ヴァンが2人が死ぬ前に戻さなかったのはこれが御前試合で,死んでも復活出来るからだろう。だがせめて,この恨みだけはぶつけていいんじゃないか。
こいつのありえない防御を突破する為にはどうしたら...マジか。急に頭に浮かんできた方法はとてもシンプルで残酷だった。
僕は魔王に手を向け,魔法陣を展開する。魔法陣自体は何の変哲もない適当な魔法だが,魔王を魔法陣に組み込む。
そしてその魔法陣にキャンセルを放つ。
この時に魔力供給を取りやめ,消滅させるのではなく,無理やり割る。
敵討ちは硝子を割るぐらい簡単に終わった。
次で御前試合終わりです...多分




