あの人を超えるよ
普通に遅刻です...
あの時僕は何が出来たのだろう...
緋梁兄さんが芸能界に入った時,僕はまだ幼くて特に気にもしていなかったけど,たまに辛そうな顔をしてたのを知っていた。僕はどうすればいいかわからなくて見て見ぬふりをしていた。
舞宵ちゃんが引きこもってしまった時,僕はもう幼くはなかった筈だ。だけど何も出来なかった。でもそれは僕と話す舞宵ちゃんが思ったよりずっといつも通りだったかもしれない。そうやって言い訳してきた。
紬黄が早めの思春期の様なものを患った時,僕はもう何も出来ないくらいに落ちぶれていた。2つ下というだけでこうも気難しいのかと四苦八苦したのを覚えている。結局いつの間にか終わっていたのをみて心底安堵したものだ。
シエラ義姉さんが死んだって知った時,僕はそこで初めて妹が魔法少女だったと知ったし,兄の想い人が義姉さんだと知った。妹は義姉さんというストッパーを失った現アザミの対応に追われて家に居ない事が常になったし,抜け殻の様な兄さんのそばに居て,一人で家事を回している時は僕も抜け殻だったんじゃないかって思う。
そんな時,紬黄が失明したって知った。抜け殻から更に絶望に飲まれ,無力な自分が嫌になったのを今でも夢に見る。幸い失明の治療は出来るようだが紬黄はそれを拒んだのだ。それについて紬黄と大喧嘩して兄妹仲は最悪になった。抜け殻だった兄が仲介して最悪の事態にはならなかったが,僕たち兄妹はあの時確かにバラバラだった。
自分が覚えている大きな事件を思い出すとやっぱり自分は無力だと思い知らされる。悪魔や天使が居なければ自殺していたかもしれない。二人が支えてくれて,慰めてくれて,そりゃ喧嘩もしたけど同じ体だから仲直りするしかなくて...だから...あの時二人が居なくなったって感覚で分かった。分かっていたけど認めたくなくて必死に呼んだ。
そんな時に帰ってきた言葉...『貴様は何を欲す』...心の底では最初から答えは分かってた。
ただ力が欲しかった。
皆を守れて安心して生きていけるよう守れる力が。
僕はそれが傲慢だって知っているし,そして皆を最大限に貶しているということも知ってる。でも願わないわけにはいかない訳があったのだ。
僕が願い欲したものは既にある人が持っていたから。その人に皆が取られてしまうと幼稚な僕は心の何処かで思っていたのだ。
でも,それは杞憂だった。
あの人はそんな僕にも手を差し伸べてくれるし,家族だと言ってくれた。
だからまずはあの人を超えるよ。
なんでって思うかもしれないけど僕って割と負けず嫌いなんだ。やっぱり超えるべき目標が近くに居る事でどこまでも成長出来ると思うんだ。
だから超える...三人がかりで。
ちょっと壁としては高すぎるんだよね...まぁ,気長に待っててよシエラ義姉さん?
兄さんも舞宵ちゃんも紬黄も皆義姉さんに救って貰った。勿論僕も。でも救われっぱなしはなんか違うじゃん?多分悪魔も天使もそう思ってるから...多分。三人でも足りないかな?その時はいっぱい仲間を呼ぶか。




