貴様は何を欲す?
遅刻しました,すみません
「ここは?」
僕が目覚めたのは真っ白な世界だった。周りを見渡しても特に何も無く,嘘もない。
「影が無い...?」
なんとなく歩いているとふと影が無いことに気付いた。
「悪魔?天使?ここ何処か分かる?」
分からない事があったら聞く。会話をする事である程度冷静になれるし,自分に無い視点を知れる。...だが待てども返事は無かった。
「今は誰も居ないから話そうって...」
『貴様は何を欲す?』
「え?」
突如頭に響く声。だが周りには何も見えないし気配も無い。二人の声でも無かった。
『貴様は何を欲す?』
「ぐっ!」
今度は激しい頭痛を伴って声が響いた。
「欲すってなんだ!二人を何処へやった!」
『貴様は何を欲す?』
「ごほっ,ごっぐ,ぅあ...」
体を地面に叩きつけられる様に打ち付けられた。何かに触れられた感触も無いのにだ。
『貴様は何を欲す?』
「ぐっ,ぅ...」
今度は腹を思いっきり蹴られた。声が聞こえた瞬間に防御を取ったが意味を成さず,無防備な腹を蹴られた様な感覚だ。
そんなのを何度繰り返しただろう。
僕は声を出す気力も無く,声の主に好き勝手されていた。唯一の救いは天使の作ってくれた身体に傷が付いていない事。恐らくここは精神世界の様なモノで僕は精神攻撃を文字通り物理で受けていた。
『貴様は何を欲す?』
「僕は...」
逃げたい...痛いのは嫌だ。こんな思いをするなら僕は...逃げたい。逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい!
『貴様は何を...ぐっ!』
「すまぬ,遅れた。」
「...セブンティーン」
純白の世界に異質な女性が現れる。太陽とも月とも取れる様な光る髪を靡かせ,昼夜をなぞる様な和服...いや少し中華も入っているのかな?
名をセブンティーン。
言わずと知れたシエラ義姉さんの最終形態である。
「...貴方も存外私の事好きですよね。...まぁ緋梁君ほどじゃありませんけど。それにしてもまさかこの様な面妖な輩が潜んでいたとは,まちの力を過信し過ぎましたね。」
『貴様は何を...』
「黙りなさい。」
義姉さんが見えない何かをボコボコにしている。やっとの事落ち着いて目を凝らすとそれは僕だった。いや,僕の姿をした何かなんだろうけどね?でもなんか複雑だけど...
「セブンティーン。」
「なんでしょう?」
「僕も一発殴りたい。」
義姉さんは目を見開いて驚いているが,スっと退いてくれた。
改めて僕(?)を見る。
さっき見えてから思ってたんだ。多分これは僕のトラウマの様なもので,乗り越えなきゃ行けないものなんだ...でも。
「散々君には痛めつけられたね...」
僕(?)がこちらに目を向ける。その顔に傷はなく,心置きなく殴れそうな感じがする。
「僕の欲するもの...それは...」
僕は拳に思いっきり力を込める。
「全部だバァーカ!」
悩んでいた自分を殴り飛ばしてやった。




